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2020年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:市民局
2019年09月04日

  1. マイナンバー制度について
    国が行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現のために導入したとしているマイナンバー制度は開始から4年目になっている。しかし、この仕組みと連動しているマイナンバーカードは、国民にとっては国の情報管理への警戒感、手続きのわずらわしさなどからほとんど活用されていないのが実態である。ところが政府はカードを国民健康保険証代わりに利用できるようにするなど、さらに様々な分野での拡大につなげようとしている。また、政府はカードの普及が広がらないため、公務員のカード取得を義務化することまで行おうとしている。日本弁護士連合会も個人のプライバシー権の侵害になることを指摘していることから、市として、次のことにとりくむこと。
    1. ランニングコストを含めて地方自治体の大きな負担が続いていくことになるため、マイナンバー制度は廃止するよう、国に求めること。
    2. 今後のマイナンバーの利用については、国で様々な用途が提案されているが個人情報流出とともに、犯罪被害につながることも懸念されている。利用範囲の拡大は行わないこと。
    3. 各種申請においてマイナンバーの記入が求められるが、マイナンバーの記入は強制ではないことを周知すること。
    4. マイナンバーカードの作成については任意であることを徹底し、カードの作成が義務であるかのような誘導をしないこと。
    5. 国の自治体職員へのカード取得義務化に反対すること。また、神戸市が政府の意向に沿って市職員のマイナンバーカード取得状況の調査を行ったが、西宮市ではそのような調査は行わないこと。

  2. 地域の集会施設について
    施設の総量縮減は公共施設マネジメントの取組みの一つだが、施設の区分ごとに必要な機能・サービスは確保したうえで、既存施設の有効活用を含めた適正配置を進めていくことが必要である。以下のことにとりくみ市民サービスを向上させること。
    1. 公民館、市民館、共同利用施設については、それぞれの施設の歴史的経過も踏まえ、引き続き存続すること。
    2. 各施設の使用料については、受益者負担という考えでの使用料引き上げが検討されている。こうした施設は市民のコミュニケーションをはかる、あるいは文化の向上にも寄与していることから、使用料の引き上げは行なわないこと。
    3. 共同利用施設は、もともと公共用飛行場周辺における航空機騒音対策で設置された施設で利用料が無料である。有料化はしないこと。
    4. 甲陽園地域では新たに市民集会施設が市営住宅跡地で整備されることになったが、地域の広さや傾斜地が多いことから施設増を検討すること。また、上ヶ原地域についても市民館や公民館が地域の中心部になく使いづらいとの声がある。中心部にも整備を行うこと。さらに、広田地域については市民集会施設の空白地であることを市は課題として認識していることから、早急に地域の希望を聞いて解決すること。
    5. 地区市民館や共同利用施設は、使いやすい施設にするため次のことにとりくむこと。
      1. 身体障がい者トイレの設置や男女共用トイレの分別とともに、洋式化(温水洗浄便座を含む)等、使いやすい施設に改善を進めること。
      2. 老朽化による大規模改修や建て替えも含め、全施設の改善計画を策定しているが早期にすすめること。
      3. 老朽化した空調設備については改善すること。
    6. 地域集会所の設置要望は強い。2017年4月に葬儀利用の削除という要件緩和とともに、市の補助金上限額を低くするなどの見直しを行った。今後は現在ある建物の改築が増えることが予想されるため、改築についての補助は増額すること。
    7. 市民館、共同利用施設の視聴覚設備については、WI‐FI環境の整備や最新のマルチメディアに対応できる機器を配備すること。

  3. 国民健康保険制度について
    2018年から財政運営における国保の広域化が行われ、保険料の統一化が今後進められようとしているが、現在は各自治体が県の示す標準保険料率を参考に決定している。1984年まで国が5割近くを財政負担していたものが年々減らされ、今では30%を切っている。このことが各自治体での保険料値上げにつながり、多くの自治体が一般会計から繰り入れせざるを得ない状況を生み出している。
    2014年には全国知事会が政府に対し、国民健康保険制度の見直しに関する提言を発表し、被保険者の保険料負担は限界に近づいていると指摘の上、1兆円の公費投入で協会けんぽ並みに保険料を引き下げるよう求めるとともに、均等割についても廃止を求めている。保険料の負担軽減は喫緊の課題となっていることから、次のことにとりくむこと。
    1. 1984年以降減らされてきた国民健康保険会計への国庫負担率を元に戻すよう国に強く働きかけること。
    2. 市の一般会計からの繰り入れを継続し、さらに1世帯あたり1万円引き下げに見合う金額への増額を行なうこと。
    3. 現在の保険料賦課計算では、滞納見込み分をあらかじめ納付見込み分に上乗せするため、保険料が割高になるしくみとなっている。滞納分は納付者の責任ではない。その分は一般会計からの繰り入れで補てんすること。
    4. 市独自の保険料の減免制度を以下のように拡充すること。
      1. 所得激減減免を前年所得金額の5割以下から7割以下とすること。
      2. 2008年度から低所得者の保険料について、所得の2割を超えた分の4分の1を減免することにしたが、所得の2割を超えた分については全額減免とすること。
      3. 家族の多い世帯の負担を減らすため、18歳未満の第3子の保険料均等割を全額免除すること。
    5. 保険料滞納者や分納誓約者に対し,突然差し押さえの通知が送られるケースが増えている。年に一度は行なうとされている分納相談をはじめ機会をとらえ、ていねいな説明を行うこと。
    6. 保険料滞納者は人間ドックの受診費用に対する助成対象から排除されているが、分納誓約履行者については助成対象とすること。
    7. 人間ドッグの受診機関を増やす努力は行われているがまだ足りないため、希望通り予約が取れないことが多い。さらに受診機関を増やすこと。
    8. 窓口一部負担金の減免制度は事前の市の承認や、3か月以内の治癒が見込める診療に限定されるなど、基準が厳しすぎるため、利用人数が少ない現状である。利用しやすいよう条件を緩和するとともに、医療機関を含めてそのような制度があることの周知をさらに行うこと。

  4. 相次ぐ医療制度の改悪によって窓口負担が支払限度を超え、全国で受診できず、あるいは治療の中断によって命を落とす人が増えている。国の制度として、少なくとも75歳以上の高齢者と、就学前までの子どもの医療費負担を無料化するよう強く求めること。また、県に対しても、同様のことを要求すること。

  5. 福祉医療費助成制度については、この間、県の「行革」により高齢者、重度障害者・乳幼児等・こども医療費助成制度が改悪されている。また、「所得合算」による制限強化により福祉医療費助成制度から外された市民が多数にのぼる。所得制限そのものをなくすよう県に強く求めること。

  6. 県が老人医療費助成制度を廃止し、高齢期移行医療費助成制度を創設した。その対象者は65歳以上70歳未満の低所得者で、さらに要介護2以上の認定を受けている者としているため、多くの人が対象外となった。県に対して再構築するよう強く求めること。

  7. 中学3年生までの子ども(乳幼児等)医療費助成制度は全国的に増え、高校生にまで対象を広げる自治体も増えている。また所得制限については、「子育て支援」として撤廃している自治体がほとんどである。中学3年生までの所得制限をただちに撤廃するとともに、対象を高校生にまで拡大していくこと。

  8. 子どもの医療費窓口負担軽減を行っている自治体に対し、国はペナルティを課して交付金を削減していたが、小学校入学までのペナルティはなくした。高校までペナルティをなくすように国に求めること。

  9. 後期高齢者医療制度について
    1. 2008年度から実施された後期高齢者医療制度は、当初から低所得高齢者の負担軽減策として保険料の特例軽減を導入していたが、国は2017年度から特例軽減を段階的に廃止している。廃止によって保険料が10倍になる人も生まれることから、全国後期高齢者医療広域連合会や兵庫県広域連合からも負担軽減の要望書が出されている。特例軽減については元に戻すよう県を通じ、引き続き要望すること。
    2. 現役並み所得者の窓口負担が3割になり、国はそれ以外の高齢者の窓口負担を1割から2割に上げる方向を示している。国に中止するよう求めること。

  10. 「西宮市参画と協働の推進に関する条例」が制定されたが、実効ある制度になっているとは言い難い。特に、意見提出手続き(パブリックコメント)に意見が少ない実態がある。石井市長は「オープン西宮」を掲げ、施政方針では市民権と訳される「シチズンシップ」にも触れている。市はパブリックコメントをする事案について基準を設けているがこれを見直し、より幅広い事案でパブリックコメントを行うことで市民意識を高め、市民参加をはかること。

  11. 平和の施策について
    安倍首相は、憲法9条に自衛隊を明記する改憲を行い、任期内での施行をめざしている。戦力不保持を定めた憲法9条2項の条文を残したとしても、あらたに自衛隊の存在が書かれれば、それが優先されることになり、9条2項は死文化されることになる。
    また、2017年7月7日、国連で「核兵器禁止条約」が122か国の賛成で採択されたが、日本政府は唯一の戦争被爆国でありながらこの条約に反対している。このことには被爆者や国民からも非難の声が出されており、2019年の広島、長崎での平和記念式典においても、松井広島市長と田上長崎市長が政府に核兵器禁止条約への調印を求めた。さらに戦争体験者が高齢になり、戦争を知らない世代が国民の8割を超え今後増えていく中で、戦争体験や被爆体験を語り継いでいくことはますます重要になっている。
    平和行政では次のことにとりくむこと。
    1. 憲法を遵守することは公務員の義務である。悲惨な先の大戦の反省のもとにつくられた憲法を時の政権が勝手に解釈を変えることは許されることではない。集団的自衛権行使について、反対の立場を表明している首長もいる。戦争につながることには国に反対の意思を表明すること。
    2. 国に対して核兵器禁止条約に署名するよう求めること。
    3. 西宮市は県下に先駆けて平和非核都市宣言をおこない、平和首長会議にも加盟して核兵器廃絶のとりくみを行っている。非核三原則の法制化を国に求めること。
      また、市として日本非核宣言自治体協議会に加入すること。
    4. 被爆者が初めて呼びかけた「核兵器禁止条約」の締結を求める国際署名は、核兵器廃絶のために実効性があるものである。様々な市のイベントなどで署名にとりくむこと。また、原水爆禁止西宮市協議会加入団体に対して、ともにとりくむように求め、集約についても市が責任を持って行うこと。
    5. 毎年開催されている市の原爆展は重要である。2018年以降アクタ東館2階に会場を変え開催され、多くの人が参加された。さらに2019年は来場者が増えていることから、今後も継続すること。さらに、被爆の実相を伝えるこうしたとりくみは拡大・強化すること。
    6. 高齢化が進む中で戦争体験者がどんどん少なくなっている。全市域で「語り部」として体験を語ってもらう人を発掘し、また体験者以外でも「語り部」を認定という形で育てている広島の例にならって、戦争や被爆の実相を語り継ぐ人を育てるとりくみを強めること。
    7. 平和資料館(川添町)は移転も含めて早期に拡張すること。展示内容については、戦争の悲惨な実相を後世に伝えるためにも映像等、視覚に訴えるものを市民や専門家の意見を聞き充実させること。また、戦争に至る経過、日本の加害の事実や戦時下での市民の不自由な暮らしなどが小・中学生にもわかるよう展示等を工夫すること。
    8. 市役所前六湛寺公園の名称あるいは愛称を“六湛寺平和公園”とすること。

  12. 防犯カメラについては、カメラが設置されていることをわかりやすく明示し、プライバシーの保護にも留意すること。

  13. 昨年「西宮市男女共同参画プラン」が策定されたが、様々な指標の数値目標を達成するための具体策が不十分である。市内の女性団体などの意見も聞き、さらに具体的な計画をつくること。

  14. 男女共同参画センター(ウェーブ)は男女共同参画社会の実現に向けての学習や交流の場として定着しつつある。その運営について次の点を改善すること。
    1. 毎年取り組まれている「ウェーブいきいきフェスタ」は登録グループ等で構成する「いきいきフェスタ実行委員会」に委託実施され、今年20回目を迎えた。参加する講座や講演会も増え盛況を示している。予算の増額を行うとともに、予算執行については実行委員会の主体性を損なわないこと。
    2. DVや児童虐待が増えており、相談内容も複雑多様化していることから市では相談員を増やしている。さらに体制を強化すること。

  15. ジェンダー平等は世界的な流れになっているが、日本では一部の政治家はじめ、企業や地域でも十分理解がすすんでいない現状がある。性的マイノリティーの人たちを含めた差別解消や支援の推進等、一人ひとりの人格と個性が尊重される西宮市をつくるために、以下の項目にとりくむこと。
    1. 外国では認められる同性婚が日本では認められていない。同性カップルを「結婚に相当する関係」と認定する自治体もあることから、本市でも条例や施策で実現すること。
    2. 公的書類の性別欄については、市は性別を把握しなければ事業そのものに支障をきたすような場合を除いては撤廃可能としている。早急に撤廃すること。
    3. 市の公共施設には誰でも利用できる「みんなのトイレ」を設置すること。

  16. 高齢化の進展に伴い、本庁まで来庁することが困難になっている市民が少なくない。そのため、市も支所機能の強化や支所の増加の方向も示している。出張所の増設なども含め、身近なところで市民サービスを受けられよう検討すること。