2020年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:健康福祉局/* --項目挿入-- */?>
2019年09月04日
- 家族の介護のために仕事をやめる「介護離職」が年間10万人近くに上り、「介護難民」と呼ばれる行き場のない要介護高齢者が数十万人規模にのぼるなど、介護をめぐる問題が、高齢者はもちろん現役世代にとって重大な不安要因となっている。
「独居老人」や「老々介護世帯」が急増し、高齢者の貧困・孤立が進行するなか、65歳以上の「孤立死・孤独死」は年間2万人にのぼると推計され、介護を苦にした殺人・殺人未遂が、年間に約50件、1週間に1件のペースで起こる状況も続いている。 安倍政権はにわかに「介護離職ゼロ」などといいだしたが、この7年間、同政権が実際に行ってきたのは、公的給付の削減や利用料の引き上げなど、“介護を受けにくくする制度改悪”の連打であった。これでは、介護をめぐる危機的事態は深刻化するばかりである。 安倍政権による介護切り捨ての改悪を許さず、現役世代も高齢者も安心できる公的介護制度に転換させるため、以下の項目にとりくむこと。
- 介護保険料に対する国庫負担は20%と調整交付金の5%に分けられているが、調整交付金は満額支給となっていない。これを満額支給することと合わせ、国庫負担金を30%に引き上げるよう国に求めること。
- 高齢者にとって大変重い負担となっている介護保険料を、他市では一般財源を投入して引き下げをしている事例がある。市も一般財源を投入して引き下げること。県に対しては県基金の活用も求めること。
- 市独自の保険料減免を行なっているが、対象はわずかである。一般会計からの繰り入れで、減免を拡充すること。
- 介護保険料は原則年金天引きで収納率は98%と高いが、年金が月1万5千円以下の年金天引きしていない保険料滞納者に対して、差し押さえ処分を行っている。こうした処分をやめること。また、厳しい保険給付制限をやめるよう国に求めること。
- 制度発足時には1割であった利用料負担に、所得によっては2割、3割負担となった。さらに、今後はすべて原則2割負担の導入が狙われている。市民のくらしへの影響や利用控えの状況などを具体的に把握し、撤回を国に求めること。
- 利用料減免制度の創設を国に求めること。
- 低所得者への利用料減免制度を市独自で創設すること。
- 介護認定に1か月以上かかっている実態がある。認定更新時期が原則1年から2年に一度となり、認定調査の一部を民間委託しているが、必要な介護保険サービスが早期に利用できるようさらに認定審査について改善すること。また、申請者には認定が下りていなくても暫定で介護保険が利用可能なことをくりかえし知らせること。
- 地域包括支援センターの役割は引き続き重要である。市独自で一般財源を投入し、センター増設や職員増等、充実させること。
- 現在、国民年金のみ受給者の平均受給額は月5.1万円、厚生年金も女性の平均受給額は基礎年金も含めても10.2万円である。こうした低年金の人が要介護状態になったときに最期まで入居できる施設は特養しかない。しかし、市内の特別養護老人ホーム待機者は依然多く、同施設の不足は引き続き深刻な事態である。市として特養をさらに増設すること。また、入所資格の制限は見かけ上の待機者数を減らし、「介護難民」を放置しただけであり、国に対し、入所資格の撤回を求めること。
- 市内には介護付き有料老人ホームやサービス付高齢者専用賃貸住宅など高齢者を対象にした施設が増えている。適正なサービスが提供されているかの指導・監督を強化すること。市民に対し施設等の的確な情報を提供すること。
- 小規模多機能型施設、グループホーム、ケアハウスなど特別養護老人ホーム以外の多様な施設についても基盤整備を進め、食費や部屋代への公的補助など、低所得者が利用できるよう国に改善を求めること。
- 介護労働者の平均賃金は全産業平均を10万円も下回っている。こうした異常な低賃金と長時間過密労働の蔓延で「福祉の初心」を活かせていない現場も少なくない。また、劣悪な労働条件・環境などにより、介護現場は深刻な人手不足に陥り、それが制度基盤を脅かす重大事態となっている。「福祉は人」と言われるように、介護と福祉の提供体制を強化するためには労働条件の抜本的改善、担い手の育成確保が不可欠である。国費の直接投入で賃金を引き上げるよう国に求めること。
- 要支援1、2の訪問・通所介護を「介護予防・日常生活支援総合事業」で保険給付から外したが保険給付に戻すこと、また、政府が検討する要介護1、2の保険給付外しをやめるよう国に要望すること。
- 高齢者福祉施策について
高齢者の多くは、戦前、戦中、戦後の苦難の時代に身を粉にして働き続け、家族と社会のために尽してきた人たちである。高齢者は「多年にわたり、社会の進展に寄与してきた者」「豊富な知識と経験を有する者」として「敬愛されるとともに、生きがいをもてる健全な安らかな生活を保障される」と、老人福祉法には明記されている。高齢者が、安心して暮らせる社会をつくることは政治の重要な責任である。以下のことにとりくむこと。
- 市では、認知症になっても住み慣れた地域で安心して暮らせる地域づくりをめざすとして、認知症サポーター養成講座や交流会・講演会開催など認知症地域ケア推進事業、認知症SOSメールの登録・配信、徘徊高齢者家族支援サービスなどを行っているが、引き続き認知症に対する正しい理解を広げ、対策を進めるため、これら事業を拡充すること。
- 家庭内だけでなく高齢者介護施設での虐待や死亡事故・事件が頻繁に報道されている。高齢者虐待相談窓口が設置され対応が進んできているが、今後も重要である。窓口の存在を周知し、いっそう充実を図ること。
- 高齢者の社会参加を促進する唯一の施策である高齢者交通助成制度は、高齢者に喜ばれ、心待ちにされている。同制度をいっそう改善し額の増額も検討すること。改善策の一つとして、芦屋市や尼崎市で実施しているバス運賃半額助成制度(敬老パス制度)を創設し、現制度との選択制とすることを検討すること。
- 福祉タクシー制度は障がいのある人や高齢者の外出支援策として有効な施策であり、ますます充実が図られるべきものである。重度在宅精神障害者も適用対象となったが、さらなる対象者の拡大や助成額の増額、予約制と初乗り制の選択制をやめて柔軟に対応できるよう、制度の改善をはかること。
- 老人クラブに対する市の補助金は削減しないこと。
- ことぶき号バスについては2013年から段階的に利用者負担が増やされてきたが、市も「利用者負担増は限度である」との認識を示している。補助金を増やすこと。
- UR(都市再生機構)や民間賃貸住宅に暮らす高齢者に対する家賃補助制度を創設すること。
- 障がい者(児)施策について
障がい者の差別をなくし、尊厳をまもることは、国際的にも大きな流れになっている。憲法と障害者権利条約の理念を地域の隅々に広げながら、だれもが安心できるインクルーシブ(排除しない)な社会の実現をめざすことが求められている。障害関連予算は毎年増えているといっても、国際的にみればGDP比でドイツの3分の1、スウェーデンの4分の1など、まだまだ水準は低い。国際水準に見合った障害者予算の引き上げを国に要望するとともに、市としても障害者施策の充実にとりくむこと。
- 障害者総合支援法で、国は応益負担の問題は解決済みとの立場であるが、1割 の定率負担は残され、低所得者は無料になったとはいえ、負担上限額は変わらない。「応益負担」制度を廃止し、速やかに無料化するよう国に求めること。またそれまでの間、配偶者の収入認定はやめて本人所得のみの収入認定とすることを国に求めること。
- 2019年7月に行われた参議院選挙で二人の重度障がいを持つ国会議員が誕生し、重度訪問介護が問題となっている。このサービスは、障害者総合支援法に基づき、重度の障がい者が、常時、食事、排せつの介護や洗濯、掃除などの家事の支援を公費で受けられる制度である。
しかし、同サービスは、就労、通勤等、経済活動にかかわる利用を制度の運用でできないこととしており、厚労省は「議員活動はサービスの対象外」と主張している。重度障がい者の社会参加を助ける制度となっていないことは問題である。市として国に対して制度改正を要望すること。 - 障害者総合支援法に基づく障がい福祉サービス等は、各自治体で基準を設け支給している。たとえば、社会参加の促進のために、視覚障がい者に対して支給している同行援護(ガイドヘルパー)は月60時間である。これは近隣市もほぼ同程度の利用時間数となっているが、月80時間支給している市もある。他市の状況も調査し、時間数の拡大をすること。
- 障がいのある人が65歳になると総合支援法から介護保険が優先される仕組みになっている。介護保険優先原則の廃止を市として国に要望すること。
- 国の基本指針では障がい者入所施設から地域生活への移行を進めるとしているが、地域における居住の場であるグループホームは圧倒的に少ない。また、障がいの状況などによっては入所施設の役割も重要である。どちらも計画的に増やすこと。
- 事業所に対する報酬の日額払いを月額払いに戻し、正規職員の配置を中心とした雇用とし、また報酬の底上げを行うよう、国に求めること。
- 障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳所持者、または難病患者が利用することができる補装具・日常生活用具給付等の各種事業は、自治体間で違いがある。最近は補装具、日常生活用具については、障がい者の自立生活や社会参加を広げるものとして、障がいの個別性に応じたものが開発されている。障がいに応じて必要な給付を行い、実質負担をなくす等、他市の動向などを常に把握し、事業の拡充に努めること。
市内視覚障がい者団体から、音声血圧計を日常生活用具に加えることや、点字ディスプレイを現在の「視覚聴覚障害2級以上」から他市のように「視覚障害単一」を対象とすること、障害者手帳を持たない軽・中度難聴児への補聴器購入補助を成人視覚障害者にも適用することなどの要望が出ている。市として対応すること。 - 障がい者施設や自宅で家族による暴言、暴力等の虐待がある。虐待については生活支援課が相談窓口となっていることを広く市民に知らせること。また、障がいのある人の人権を守るため職員の研修等スキルアップを図ること。
- すでにいくつかの自治体で制定している「障害者差別解消条例」を市でも制定することになった。理念ではなく実効あるものとすること。
- 内部障害の人がつけている「ヘルプマーク」がまだまだ市民には知られていない。ホームページや市政ニュースで周知し普及を図ること。また、電車やバス等の座席にマークを標示し、「ヘルプマーク」を駅でも配布するよう市として要望すること。
- 障がい年金の手続きは煩雑だと聞くが、生活支援課などが年金の手続き等についても相談や支援をすること。
- 障がい者の労働の保障
国の基本指針では、障がい者の福祉施設から一般就労への移行を進めるとともに、個人の特性や本人の意思に対応した福祉的就労も重視してとりくむとしている。以下についてとりくむこと。
- 障がい者雇用を増やすために、引き続き企業への啓発活動を強めること。そのステップとなる市における障がい者雇用を推進すること。
- 福祉的就労である就労継続支援(A型)、同(B型)が多様に展開されるよう市としての支援を強めること。
- 生活保護について
安倍政権は、この6年間に2度にわたる生活保護費の削減を強行し、生活保護の申請者や利用者の人権とくらしを破壊する制度改悪を連打している。さらに、国の指導で預貯金の残高を確認する等、利用者に対する人権を踏みにじる行為がある。 生活保護制度は憲法第25条に明記された国民の生存権をまもる最後の砦であり、保護費の水準は、国民生活の最低基準(ナショナル・ミニマム)を具体化したものでなければならない。生活保護の改悪は、憲法が保障した人権を国民から奪いとり、あらゆる福祉制度を後退させる攻撃にほかならない。市は、生活に困窮する市民が権利として制度を適切に活用できるよう、以下のことにとりくむこと。
- 2019年10月にはまた生活扶助費が削減される。「健康で文化的な生活保障」の観点に立った制度となるよう、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)を引き下げるのではなく、引き上げを国に求めること。
- 「生活保護受給」は「恥」だという偏見がある。生活保護を国民の権利として位置づけ利用しやすくするためにも、「生活保護法」を「生活保障法」に改正するよう国に要望すること。
- 生活上経済上の悩みを抱える市民に心を寄せ、問題解決をはかっていくのが面接相談員や、ケースワーカーの役割である。国基準(被保護世帯80世帯に1人)に比べて少ないケースワーカーの増員が一定はかられたが、引き続き増やすこと。また、質を高める研修をすすめること。
- 扶養義務について、「扶養は従来通り生活保護受給の要件ではない」「家族の問題に行政が踏み込んでいくことは相当慎重にしなければならない」との国会答弁がある。この点を踏まえ、申請を躊躇させるような、従来以上の扶養義務照会を行わないこと。
- 生活困窮者自立支援法の下、稼働能力を有する要保護者に就労支援や指導を行っているが、一人ひとりの実情や条件に応じた丁寧な支援を行うこと。また、保護の辞退を誘導するような指導はいっさい行わないこと。
- 生活保護の手引きは一定改善されたが、まだまだ改善の余地はある。他自治体の例も参考に、一層改善すること。
- 近年の酷暑でエアコンの使用は不可欠だ。しかし、電気料金の負担から使用を躊躇している受給者も多い。電気料金への補助を検討すること。
- 市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および上下水道料金の基本料金免除を復活すること。
- 厚生課及び生活支援課の相談室は、間仕切りのみでプライバシーが全く保たれていない。抜本的に改善すること。
- 家賃の上限を超えると転居を進めているが、転居を強要することなく、本人の暮らしや要望をよく聞いて対応すること。
- NPO法人が運営する障害者施設で補助金の不正と介護給付の過誤請求等の事例があった。本来公共が責任を負うべき福祉サービスの多くが、民間事業者により提供されている状況の下で、福祉サービスの質を確保するために社会福祉法人・施設指導監査の役割は大きい。その監査対象は現在1300か所近くにも上り、2019年4月から児童デイサービスの指導監査も加わるなど、体制の強化は不可欠急務である。必要な人員を配置し、福祉サービスの適正な質を確保するために、よりいっそう厳しい姿勢で臨むこと。
- 阪神淡路大震災被災者に貸し付けた災害援護資金について、2015年4月に新免除要件の通知が国より出され、生活保護受給者や破産免責者、低所得者については、県を通じ国に確認・同意をもらいながら、県下での統一基準をもとに市でも958件・約14億600万円の免除を行った。しかし、その後、国は一旦同意した県下統一基準による免除を認めない旨を示したが、被災自治体の働きかけのなか、2018年11月、12月に一部免除を認める通知を出し、市は480件・約7億5,800万円の免除申請を行い、認定される見込みである。
残りの478件・約6億4,800万円について、議員立法により改正災害弔慰金法が公布され、改めて具体的な免除要件が示され、今後は合致するものについて県に免除申請を行っていくとしている。また、2019年3月末で償還残が528件・約7億4,700万円残っているが、その内保証人に対する債権を放棄すると約270件の償還免除を行えることになり、発災より24年を経て、ようやく解決のめどが出てきた。 今後は、接触が困難な行方不明者等も免除対象とすること、償還事務にかかる経費について国庫補助とすることなどを、引き続き国に要望すること。
- 妊婦健康診査助成は2015年度に回数14回、上限82,000円に増額されたものの、なお全国・県平均を下回っている。増額すること。
- 乳幼児健康診査や訪問指導事業など母子保健事業は、乳幼児の発達支援や虐待予防にとって重要な事業である。特に孤立しがちな母子や多胎児、若年妊婦については妊娠中から出産・育児と切れ目なく支援できるよう、保健師など専門家の人員増を図ること。
- 健康増進を図るため、がん検診や歯周病疾患健診等を実施しているが、受診率はまだまだ低い水準にとどまっている。受診者を増やすためにいっそうの努力を行うこと。
また、乳がんなど、り患年齢が低いがんについては対象年齢を引き下げ、対象者を拡大すること。
- 内科、小児科の第1次救急医療をになう応急診療所は、順次診療時間も拡大され、市民の命を守っているが、特に子どもの救急への対応は、多くの子育て世代の要望である。休日、夜間(午後11時から朝方)の診療時間を拡大すること。また、救急協力病院を引き続き増やすこと。
- 県の「受動喫煙防止条例」の一部が2019年7月1日に改正された。特に、20歳未満の方及び妊婦の方を受動喫煙から守る観点を強化するものとなっている。市でもこの条例を厳格に守り、受動喫煙防止対策を講じること。
- 「ひきこもり」が要因の一つと思われる事件が相次いで起こり、改めて「ひきこもり」が社会の関心事となっている。8050問題といわれるように青年期から中高年期にかけての「ひきこもり」当事者が全国で60万人とも100万人ともいわれる。この背景にあるのが「生きづらさ」「やり直しがきかない社会」にあると専門家からも指摘されている。
「ひきこもり」は自己責任とされ、当事者や家族はなかなか声をあげることができない。市では保健所や厚生課が相談にのり、家族会へつないだりしているがごくわずかである。相談窓口があることをもっと周知するとともに、先進自治体に学び有効な対策についても研究、検討すること。
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