2020年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:こども支援局/* --項目挿入-- */?>
2019年09月04日
- 子どもの権利を侵害する様々な問題が深刻ではあるが、2016年に改定された児童福祉法において、子どもの位置付けが「保護対象」から「権利の主体」へと変えられたことは大きな進展である。そして、本市が策定した「西宮市子ども・子育て支援プラン」においても、その新しい理念に注目している。この立場をさらに前進させ、確実に子どもを「権利の主体」として位置付けていくためにも、「子どもの権利に関する条例」の制定を検討すること。
- 全国各地で保育所待機児童解消は社会問題となっているが、本市でも2019年4月1日現在の利用保留児(潜在待機児童)数が761人にものぼり、引き続き重大な課題である。市は、緊急的に2016年度から3年間で1500人の定員枠を増やすことを公表し対策を進めてきたが、目標を達成することはできなかった。待機児童対策の基本は、認可保育所の大幅増設とすべきである。以下のことについて要望する。
- 今後の計画をただちに明確にし、待機児童を緊急に解決すること。特に甲陽園地域などの保育所整備が進んでいない地域や、夙川・深津・高木地域などの待機児童が多い地域には早急に施設整備を行うこと。
- 民間まかせにせず、公立保育所や分園も増設し、定員を増やすこと。
- 「送迎保育ステーション」およびパークアンドライド方式の保育所が2019年4月に開所され約半年が経ったが、2019年8月現在で定員120人に対し74人しか在籍しておらず、しかも送迎を利用しているのは11人、パークアンドライド方式を利用しているのは4人(最大60台まで駐車可能)のみとのことである。待機児童が800人近くいる中でこれだけ利用が少ないということは、この方式が利用者のニーズに沿っていないからだと考えられる。今後はこのような方式を採用することはやめ、必要とされている地域に保育所を増設していくこと。
- 保育所に申し込みをしたが入所できなかった子どもたちがどのような実情にあるのかを調査し、適切な対策をとること。
- 認可保育所を希望しても入所することができず、やむなくベビーホテルなど、認可外保育施設を利用せざるを得ない子どもがまだ多数残されている。認可外保育施設の利用にかかわって派生する問題を解決するために、少なくとも次のことを実施すること。
- 保育施設を指導監督する部署が新設された。適切な指導監督を強化し、保育施設のずさんな運営を一掃し、子どもたちの犠牲を出さないこと。
- 認可外保育施設が認可保育所へ移行できるよう、施設整備の負担軽減や保育士確保・保育士資格取得など一定の支援は行っているがさらに強化し、認可を進めること。
- 企業主導型保育所は、不正・事故などが相次いでおり問題が多い。これ以上増やさないよう国に求めること。
- 子ども・子育て支援新制度(以下、新制度)は、保育の質の低下、3歳の壁問題など多くの矛盾と問題を生じさせている。「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童の心身ともに健やかに育成する責任を負う」という児童福祉法の理念に照らして必要な以下の対策を講じること。
- 認可保育所において、運用で実施されている1・2歳児への保育士配置基準(国基準6:1を上回り5:1)を条例化し、認定こども園も同様に条例を改正すること。
- 保育ルーム・小規模保育所などでは、保育士資格を必須としていないが、一方で「すべて保育士資格取得者とするよう努めていく」と事業計画に明記されている。これを条例上も必須とすること。
- 2歳までが対象の小規模保育、並びに保育ルームに入所した子どもが引き続き保育を必要とする場合、認可保育所に入所できる保証がなく、実際に入所できない、いわゆる「3歳の壁」が問題になっている。継続して保育が受けられるよう、連携施設の整備等の対策をとること。
- そもそも保育に営利はなじまない。西宮市では株式会社の参入は認めないこと。
- 2019年10月から幼児教育・保育の無償化が実施されるにあたり懸念事項がある。以下のことに対応すること。
- 3歳〜5歳児の保育料は無償となるものの、給食費は年収360万円以下、全世帯の第3子以外は実費徴収となる。県内の加西市・明石市は市独自で助成をする方針である。市でも独自に助成し無償とすること。
- 認可外保育所も無償化の対象となる。無償化となる認可外保育所は内閣府令に定める基準を満たす施設のみとしているが、施行後5年間の猶予があり、基準を満たしていない施設でも無償化の対象とする経過措置を設けた。大阪府吹田市では経過措置期間中については、認可外保育施設の無償化対象の基準を条例で定めている。市でも条例を策定し無償化の基準を定めること。
- 保育士不足が各地で深刻になっている。解決のためには、賃金が全職種の平均を月10万円余り下回っているなどの低待遇の改善が不可欠である。本市では2018年度より「保育士奨学金返済支援事業」を開始しているが、保育士不足を改善するという目的に照らして不十分と言わざるを得ない。給与の上乗せや家賃補助、通勤手当の支給など、抜本的な処遇改善策を進めること。
- 市立保育所、保育事業について、以下のことを要望する。
- 芦原むつみ保育所は2018年4月に定員150人でまず開所された。しかし、最大で210人まで増やす、大規模化への懸念を顧みない定員増の方針はそのままとなっている。保護者や保育士の意見を十分汲み取り、一方的で安易な増員はしないこと。
- 待機児童がなくなり、定員の弾力化が解消されれば公立保育所3か所を民間移管する計画になっているが、保育における公的責任を考え、公立保育所民営化はきっぱりと撤回すること。新たな保育所民営化は行わないこと。
- 保育所の耐震化は100%達成をめざすべき猶予できない課題であるが、現在(2019年8月現在)は78.26%にとどまっており、昨年度から今年度(2019年8月現在)にかけては1園しか耐震化が行われていない。全保育所の耐震化目標時期を前倒し、早急に実施すること。
- 虐待や貧困などの影響を受けている子どもや、親自身が特別の支援を必要とするケースが増えている。市保育所事業課の保健師や保育士等が、市要保護児童対策協議会と連携して対応しているとのことだが、引き続きとりくみを強めること。また、虐待など問題をキャッチできるのは現場の保育士である。研修を強め、適切に対応できるようにすること。
- 自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で、給食調理員の過重負担がある。調理員の増員をはかること。
- 誰もが利用できる一時預かり(一時保育)を公立保育所でも実施すること。対象を限定して実施されている現行の「スマイル保育(一時保育)」事業を他の保育所にも拡大すること。
- 母子支援施設の移転に伴って、また、耐震化対策の必要から、津門保育所と児童館の改築が課題となっているが、未だに動きが見られない。早急に計画を示すこと。
- 民間保育所や保育ルーム等に対し、保健指導等のための巡回指導など、保育の質を高めるための支援策が実施されているが、いっそう強化すること。
- 子育て広場の設置目標を小学校区に1か所へと拡充すること。
- 学童保育(留守家庭児童育成センター)は、保護者が昼間家庭にいない子どもに、授業終了後および学校休業日に、専用施設を利用して適切な遊びと生活の場を与え、その健全な育成を図る事業である。また、指導員には子どもの安全を守り、適切な指導で発達を保障する専門職としての重要な役割がある。市として次のことにとりくむこと。
- 市は、「留守家庭児童育成センターにおける施設整備のあり方について」という方針を定めた。確実な方針の実施、推進とともに、計画の前倒し実施を検討すること。また、国や県に対して、学童保育に関する予算の大幅な増額を要求すること。
- 幼児保育事業と同様に営利はなじまない。民設民営はやめること。
- 学童保育の継続性からも数年ごとに運営事業者が変わる指定管理者制度の導入には問題が多い。学童保育の運営は、単なる施設管理の運営ではないため、指定管理者制度、とりわけ公募はなじまない。2020年度には、最初に公募した育成センターが10年経過する。少なくとも非公募とするなど、あり方を検討すること。また、すでに株式会社が指定管理者として指定されているが、なじまないので今後は参入させないこと。
- 2016年度から、保護者の要望に応えて、長期休み時の開所時間を8時開所に変更するモデル事業が実施され、2019年度にはすべての施設で実施されている。 しかし、時間繰り上げ実施に伴う人員の確保をせず、シフト勤務とすることで対応しているため、十分な打合せが出来ないなど、運営に支障が出ているようである。市として実態を把握し、人員体制を拡充するなど、引き続き改善を図ること。
- 延長料金は通常の利用料と比較して高い。所得に応じた減免措置を講じること。
- 雨の日は育成センター利用の子どもたちに遊ぶ場所がない。学校と協議して体育館を使用できるように調整すること。
- 子育て総合センターは、各地域で行われている子育てに関する各種取組への支援や、子育て支援施設間や関係機関との連携・協力を促進するなどの役割が求められている。また、乳幼児教育・保育等の調査・研究においても役割を期待されている。センターで展開されている個別の子育て支援事業にとどまらず、文字通り、子育て支援の総合センター的役割が果たせるよう、引き続き改善していくこと。
- 児童虐待や育児放棄などは、年々増加の一途である。市では子供家庭支援課を虐待問題等の窓口として対応しており、家庭児童相談員の一定の増員も図られているが、さらに児童福祉司や臨床心理士などの専門職も増員し、体制を充実させること。また、学校・保育所・幼稚園などの子どもが通う施設や、県立こども家庭センター(児童相談所)などとで要保護児童対策地域協議会を設置し連携を図っているが、虐待等の早期発見・対策のいっそうの強化に努めること。
- 児童虐待が全国で増えているなか、中核市である明石市が2019年4月に児童相談所を設置した。同じく中核市である本市も、明石市の研究をしながら、児童相談所の設置へ向けて動き出すこと。
- 「子育て支援の拠点」として児童館・児童センターを位置づけるのなら、当然直営を守るべきである。あわせて、休日の開館や、地域偏在の解消・増館についても検討すること。
- 厚生労働省が実施した国民生活基礎調査によると、子どもの貧困率は13.9%(2015年)で、子どもの7人に1人が貧困状態にあり、深刻な状態にある。市では「西宮市子ども・子育て支援プラン」の中に「子どもの貧困対策計画」が盛り込まれ、学習支援などを実際に行っているが、まだまだ十分とは言えない。現行の計画を確実に実行するとともに、医療支援を追加するなど、さらなる拡充を図ること。
- 市内の少なくとも4か所ですでに運営されている「子ども食堂」が、子どもとともに親や地域の人たちの居場所づくりとしても期待され、発展している。運営している民間各団体の自主性を尊重しつつ、関係者の意見も聞いて必要な支援を行うこと。また、市は「子ども食堂」について、市内に広げるとの見解を示している。至急、方針を明確にし、早期に実施すること。