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2020年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:都市局
2019年09月04日

  1. 「文教住宅都市 西宮」は民間調査の「住みたい街」ランキングで関西のトップに選ばれるなどしている。しかし、無秩序なマンション・住宅開発が、教育施設、福祉施設などの不足を生じさせるとともに、教育環境や住環境、自然環境を悪化させている。昨年、市は「まちづくり・まちなみ基本条例」を制定したが、その中身はすでにある都市計画法の地区計画や、景観法及び市都市景観条例に基づく景観重点地区という仕組みに加え、それを補完するものとして地区住民らによる「まちづくり協定」を結べるということを盛り込んだにすぎない。とくに、学校の教室不足、保育所不足等は一刻も放置できない深刻な問題である。この間、西宮市は児童、生徒の急増には「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」で対応しているが、半年に一度の見直しで指定基準が複雑になり、わかりにくくなっている。要綱ではあくまで「市からのお願い」であり罰則がないことから限界があり条例化が不可欠である。都市局・教育委員会・こども支援局とも調整し、要綱を早急に条例化すること。また、それまでの間は、市全域を「準受け入れ困難地区」以上にして規制を強化すること。

  2. 開発指導について、以下のことにとりくむこと。
    1. 現行の「開発事業等におけるまちづくりに関する条例」では、近隣住民との協議が義務づけられているが、住民の意見が反映されないまま開発が進んでいく実態が多い。都市景観においては、2019年9月議会で一定条件の建築物等について計画段階から協議できるよう、西宮都市景観条例を見直すこととした。開発においても同様に、周辺の住環境に与える影響が大きい大規模開発事業においては、土地売買の段階など、早い段階から地域住民が情報を得ることができる仕組みを構築し、環境を守りたいと願う住民の意思を反映できる仕組みを早急につくること。
    2. 開発区域への進入路が6m未満の場合の開発については、戸数制限を導入しているが不十分である。さらに規制を強化すること。
    3. 500u未満の開発は近隣協議の対象とはならないことから、同一事業者が開発時期をずらすなど、結果的に500u以上の開発を行うなどの「開発のがれ」の事例がまだある。全体空地(開発区域)を一体のものとして指導対象にするなど、対応策を早急にたてること。
    4. 一定規模以上の開発については、他市で実施しているように、開発によって市に整備が求められる教育施設など、公共施設整備のための協力金の拠出を求めること。

  3. 旧耐震基準の住宅について、耐震性の簡易診断、あるいは設計や工事に対する補助制度があるが、全く不十分である。国、県、市の補助金を増額すること。

  4. 鉄道駅のホームからの転落による死亡事故が相次いでいる。このようなことから国はホームドアやホームの柵設置推進を打ち出しており、東京都内の地下鉄やJR等では設置がすすめられている。県内でもすでにJRのいくつかの駅でホーム柵が設置され、私鉄でも設置の検討が進められている。特に利用客の多い駅や、安全面で懸念のある駅などを中心に、国や鉄道事業者等に設置を市としても求めること。

  5. 市内には消防など緊急車両の通行に支障がある4m未満の狭あい道路が多数残っており、拡幅整備が急がれる。市の助成制度(私道への助成)拡充を行うとともに、住宅建築の際に市との協議を条例で義務付けること。

  6. 都市農地について、国はその位置づけを「宅地化すべきもの」から「都市にあるべきもの」へと大きく方針転換した。また、生産緑地法改正で、生産緑地地区の指定面積要件を「500u以上」から、地域の実情に応じて「300u以上500u未満」の範囲内において市町村が条例で定めることを可能とした。そのことから市は、2018年6月議会で同内容を条例化した。
    しかし、生産緑地指定後30年間で指定解除ができることになっていることから、最初の指定から30年となる2022年には大幅な生産緑地の解除が行われる懸念がある。次のことにとりくむこと。
    1. 国はいわゆるこの「2022年問題」対策として、生産緑地の貸し付け条件などの緩和を行なったが、十分な対策とはいえない。生産緑地に対するさらなる固定資産税や相続税などの優遇措置を行うよう、国に求めること。
    2. 生産緑地解除申請が出された場合に近隣農家などへの購入打診があり、買い手がつかない場合は自治体として購入できる仕組みとなっているが、今までに買い取った事例はゼロである。買い手がつかない場合は市が買い取り、市民農園として活用するなどによって農地の減少を食い止めること。

  7. 池田町の卸売市場については、公設市場は廃止し、新たに西宮市場株式会社による民設市場として再出発するため、西宮市卸売市場再生研究会やまちづくり協議会から発展して結成された「JR西宮駅南西地区市街地再開発準備組合」などとの協議で、「卸売市場再生整備事業を含むJR西宮駅南西地区市街地再開発事業」として整備することとなった。これまで卸売市場の再生整備計画はなかなか実現しなかったが、今回の整備は「容積適正配分型の地区計画」によって、35階マンションを建設するなど卸売市場を存続させるための苦肉の策ともいえるものである。今後は過大な開発とならないようにするとともに、景観などで調和のとれた整備とすること。また、緑化にも十分配慮して進めること。

  8. 名神湾岸連絡線についてルート案が明らかになった。影響を直接受けるルート直近の住民の意見を尊重し、反対の声があればその意見を県に伝えることは当然であるが、そもそも国が進める高規格幹線道路整備の一環の工事であり、不要不急の公共事業であることから、この整備計画に反対すること。

  9. 5次総では「阪神西宮駅について民間主導の駅前整備に向けた検討を行う」としているが、メインの公共施設整備の対象となる市道西262号線の拡幅は、事実上不可能である。市として歩行者などの安全対策に絞った整備を阪神電鉄に求めていくこと。

  10. 阪急神戸線武庫川の新駅については、整備されるとすればいわゆる「請願駅」となり、多大な市の負担が生じることが予測されることから、慎重に検討すること。

  11. JR甲子園口駅北側は、歩行者や自転車、バスなどが交錯し、「市内でも有数の危険な地区」と、市も認識している。用地の取得を含め、駅前広場の整備に早期にとりくむこと。

  12. JR西宮名塩駅外エレベーターが整備されたが、下りエスカレーターが設置されていない。引き続き関係機関にはたらきかけ整備すること。

  13. 市民生活を支援するための公共交通の充実を図ることが求められている。とくに、地域交通の柱となるバス交通については、高齢化社会の進展に伴う社会参加促進とともに、通学区がますます拡大する高校生の通学保障の面からも、拡充が急がれる。以下の項目にとりくむこと。
    1. この間、新規を含め路線の拡充が一定図られているが、引き続き住民要望に基づく路線開拓に努めること。
      1. 臨港線経由の西宮浜と阪神甲子園駅を結ぶ路線の平日運行の実施を行うこと。
      2. 西宮市立中央病院を経由し、阪急西宮北口駅までの段上地域における路線の新規・増便をはかること。
      3. ニテコ池周辺からJR西宮駅へ乗り換えなしで行ける路線も新たに設けること。
      4. 北夙川地域から阪急夙川駅、阪神西宮駅経由JR西宮駅への新規バス路線の整備を進めること。
      5. 苦楽園地域から阪急夙川駅への路線を整備すること。
      6. さくらやまなみバスについては、今後も、効率的な経営につとめ、市が責任をもって運行を継続させること。
    2. 市が明らかにしている「交通不便地域」について、それぞれの地域でのニーズや課題を整理し対策を立てる必要がある。交通不便地域対策の予算を増額して公共交通政策に生かすこと。
    3. 生瀬地区を巡るコミュニティ交通「ぐるっと生瀬」が本格運行され、名塩地域でも住民の運動でコミュニティ交通実現の可能性が強まっている。しかし、JR以北のいくつかの地域では要望がありながらまだ実現していない。コミュニティバス運行は地域住民まかせではなく市が主体性をもって進めること。その場合に、運賃収入で不足する経費については単なる赤字ということではなく、「地域を支えるための必要経費」という位置づけをしてとりくむこと。
    4. 西宮市内では、バスを乗り継がなければ目的地に到達できない場合の「乗り継ぎ」割引制度がないため、市民や高校生の負担が大きくなっている。ハニカ定期券が発行されており割引制度が一定拡充されたが、普通乗車券も同様に、同一バス会社の乗り継ぎとともに、阪神と阪急を相互に乗り継ぐ場合も運賃が割引となるよう、市は関係者と協議を行うこと。
    5. 阪神バスでは、高齢者が運転免許証を返納した場合、バス運賃が半額となるが、阪急バスはまだ実施されていない。阪急でも早急に実施するよう求めること。
    6. 芦屋市や尼崎市など多くの自治体が実施している70歳以上のバス運賃半額助成制度(敬老パス)の創設を、高齢者の社会参加や福祉的観点から早急に実施に向け検討すること。

  14. 北部山口地域の渋滞は地域住民の生活に影響を及ぼしている。西宮北有料道路の無料化と第二名神高速道路の開通と関連も含めた交通量の調査を行ない、渋滞解消のための方策を検討すること。

  15. 最近市内でも店舗が増えているたこ焼き・お好み焼きのチェーン店の看板の面積は条例違反である。出店に当たっては厳しく指導するとともに、現在の看板についても是正を求めること。

  16. UR(都市再生機構)による浜甲子園団地の建て替え事業において、戻り入居者は高齢者が多く、一定の配慮はされているものの高くなった家賃負担は深刻である。家賃の引き下げをURに求めること。

  17. UR(都市再生機構)の家賃については、その公共的使命から機構法25条4項に「既定の家賃の支払いが困難なものには減免することができる」と規定されている。しかし、減免の基準が示されておらず、窓口なども不明確である。一部の障がい者はこれまで減免されたといわれているが詳細が分かっていない。減免の基準を明確にすること、窓口の設置、さらに減免申請書の作成など、減免についての規則を設けることを市としてURに働きかけること。

  18. 市営住宅について
    1. 市は、「西宮市営住宅整備・管理計画」の中間見直しにおいて、市営住宅を2021年までに9,000戸にした上で、その後さらに第2次建替え計画完了時の2030年にはストックを全体として8,300戸にするとしている。また、その後の長期将来計画では7,000戸を目標とするという議会答弁もあった。貧困と格差が広がる中で住宅困窮者は今後さらに増えることが想定され、また、独居高齢者が民間住宅に申し込みをしても、断られるケースも増えている。福祉的観点からも市営住宅削減計画は撤回し、市営住宅を増設して市民の期待にこたえること。
    2. 森下町では空き店舗を障がい者、高齢者仕様のバリアフリー住宅に改修した。まだまだ活用されていない市営住宅の空き店舗が多くあることから、同様の改修整備をすすめること。
    3. 市営住宅の管理については北部、中部、南部管理センターの3地域をそれぞれ指定管理者が担当してきたが、2018年度から一指定管理者で行うことになった。市営住宅は高齢単身者が多数を占め、福祉的な対応が求められることから、指定管理者では入居者の様々な要求や相談に迅速かつ責任ある対応ができない。したがって、市営住宅の管理は市直営に戻すこと。
    4. 市営住宅の申し込みでは、何回申し込んでも当選しないという声がある。空き家募集の際、多回数落選者優先制度を復活させること。
    5. 県営住宅は毎月募集を行っているが、市営住宅の場合は通常募集は年4回だけであることから、毎月募集をおこなうこと。
    6. 階段型市営住宅へのエレベーター設置は、電気代等の共益費の新たな負担が生じることから、住民全員の合意を得ることが困難なため、すすんでいない。未設置住宅には市が責任をもって早急に設置すること。その際、個々のドアまでは公共空間という観点に立ち、電気代徴収をやめること。
    7. 市営住宅の共用部分等の管理について、2015年9月議会において条例改正を行い、団地ごとに住民が希望すれば、市が共益費の徴収とその収支管理、共用部分等の管理をおこなうこととなったが、実施している団地は少ない。この背景には、指定管理者が行う共益費の試算が高すぎることへの不安がある。スムーズに管理が市へ移行していくように、条件の整備を緩和するなど、引き続き市が責任を持って対応すること。また、市の管理にした住宅では、管理費の会計報告が行われていない住宅がある。指定管理者に住民に十分説明するよう指導すること。
    8. 家賃や共益費徴収については、福祉的な観点からも、公平性の観点からも、改良住宅と一般市営住宅で統一するよう検討すること。また、一般市営住宅と改良住宅での住宅改修の基準の違いも一部残されており、同一基準とすること。
    9. 2017年6月議会で市営住宅条例の改正があり、改良住宅の空き家については、昨年の4月以降は一般市営住宅並み家賃で募集することとした。しかし共益費については徴収せず、一般市営住宅との逆差別ともいえる状況を温存している。さらに今後の改良住宅の建替えにあたっては、補償入居者と一般入居者を「区別」するという名のもとに差別を続けることも明らかになっている。行政自ら差別を継続することは許されない。抜本的に改良住宅のあり方を整理すること。
    10. 名義の承継について、「配偶者に限るように」との国の通知(指針・ガイドライン)があるが、これは低所得者の追い出しにつながり新たな住宅困窮者を生み出すことになる。引き続き、市の従来方針で慎重かつ柔軟に対応すること。
    11. 名義人が入院中の場合、条例や規則、要綱等の根拠もなく同居申請を受け付けず拒否されたケースがあった。是正すること。
    12. 市営住宅内の空き駐車場については、議会からの要望もあり時間貸しなどでの活用が何ヶ所かで行われている。地域要望も調査し、空き駐車場についてはさらに時間貸し駐車場にして活用すること。
    13. 市営住宅集会所については、高齢化によって閉鎖されるところが出たり、管理運営委員会が定める料金設定が外部利用も含めてばらばらであることから苦情がある。今後は市(指定管理者)が直接管理する支援制度が実施されるが、あわせて納得のいく料金体系に整理すること。

  19. 阪神淡路大震災で市がUR(都市再生機構)から借り上げて市営住宅とした5つの団地は、2018年3月で団地すべての期限がきた。最も期限が早かったシティハイツ西宮北口以外の団地については、転居先の随時斡旋や事前予約住宅を二つから一つにするなど柔軟な対応がなされている。しかし、シティハイツ西宮北口ではそうした柔軟な対応が示されず、期限後も住み続けた7世帯に、市が退去を求め裁判に訴えている。同様の裁判で神戸市では最高裁で住民敗訴となったが市の強制執行はされていない。西宮市も神戸市と同様に強制執行することは難しいと思われることから早期に裁判の取り下げを行ない、話し合いで解決すること。

  20. 西宮市内は家賃が高く、青年や高齢者など低所得者に対して、民間賃貸住宅家賃補助制度を創設し、支援すること。