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佐藤みち子の一般質問
2020年03月09日

保育所保育指針に基づく保育所の現状と課題について


 保育所保育は、本来的には、各保育所における保育の理念や目標に基づき、子どもや保護者の状況及び地域の実情等を踏まえて行われ、その内容については、各保育所の独自性や創意工夫が尊重されます。その一方で、すべての子どもの最善の利益のためには、子どもの健康や安全の確保、発達の保障等の観点から、各保育所が行うべき保育の内容等に関する全国共通の枠組みが必要となります。このため、一定の保育水準を保ち更なる向上の基点となるよう、すべての保育所が拠るべき保育の基本的事項を定めているのが、保育所保育指針(以下、指針という)です。この指針は1965年8月に策定されて以降、1990年、1999年と2回の改定が行われ、2008年3月に3度目の改定が行われました。

 この背景には、核家族化や地域のつながりの希薄化などにより、周囲の社会から子育てへの協力を得ることが難しいことや孤立によっての育児不安、さらに、子育てを負担に感じたり、児童虐待の相談件数も増加していることが挙げられます。また、乳幼児期に感情面がどのように成長していくかということが、大人になったときの生活に影響を与えることが明らかになり、保育所での乳幼児期の経験が、長期的な影響を与えることから、保育所の役割が重要視され指針が改定されました。

 指針で強調されているのは、「一人一人の子どもの人格を尊重して保育を行わなければならないこと」「子どもの発達について理解し、一人一人の発達過程に応じて保育すること」「一人一人の子どもが、自分の気持ちを安心して表すことができるようにすること」等、「一人一人の子ども」ということが強調されています。つまり、一人一人の子どもを保育士がしっかり把握し、個人差を考慮しながら保育をすることが重要視されているのです。

 特に、0歳児から2歳児までは、心身の発達の基盤が形成される上で極めて重要な時期であり、この時期の子どもが、生活や遊びの様々な場面で、主体的に周囲の人や物に興味をもち、直接関わっていこうという姿は「学びの芽生え」といえるものであり、生涯の学びの出発点にも結び付くと言われています。

 また、保育所では障害のある子どもを保育しています。障害のある子ども2人に対して保育士ひとりが配置基準です。現場では、障害のある子どもが異年齢の場合は、保育士はどちらかの、子どもにのみ対応することになります。特に、3,4,5歳児は一人担任ですから、加配の保育士がいなければ、障害のある子どもに十分な対応ができません。
 さらに、発達障害等、障害によっては、保育士がどのように対応するかわからない場合もあります。一人一人の子どもを尊重し発達を保障していくためにも臨床心理士等、専門家のアドバイスが必要です。

 さらに、地域の保護者に対する子育て支援は、「児童福祉法第48条の4において、保育所における通常業務である保育に支障をきたさない範囲で、情報提供と相談及び助言を行うよう努めることと規定」されています。公立・民間保育所とも、特別保育として、一時預かり保育、産休明け保育、休日保育を実施、さらに地域子育て支援として育児相談、園庭開放、短期体験、あそぼう会、子育て教室、子育てサークルを各保育所で実施しています。通常保育をしながらこれら多岐にわたる子育て支援をしていますが、その為の人員も保障されておらず、保育所は多忙化しています。

この中で、一時預かり保育は公立保育所では実施しておらず、実施しているのは民間保育所のみです。講演会やその他の事情で未就園児を預かる必要がある時に、実施するとしています。
 現在、一時保育を実施しているある民間保育所の状況ですが、@1日5人、一人の子どもにつき週3日の利用を上限としている。A新人保育士では対応できないのでベテラン保育士が対応している。B年間の補助金が150万円で正規保育士の給与は保育所の持ち出しになるとのことです。

 改定された指針では、このように子どもの保育、保護者への支援、地域の子育て支援と保育所の役割や機能が多様化し拡大されています。
 しかし、保育士の配置基準は、戦後すぐの1948年に作られ、その後、幾度か改定されていますが、現在の配置基準は1969年に改定されたもので、50年間、変わっていません。
 市の保育士配置基準は、0歳児が3対1、1歳児・2歳児は5対1、3歳児は民間は15対1、公立は3,4,5歳児は20対1となっており、0歳児以外は、国基準より上回って保育士を配置していますが、これでは十分とは言えません。そもそも国基準の配置が低すぎるのが問題です。

 他の先進国では、一人一人の子どもを尊重して保育するために、保育士の配置基準は、3歳児で比較すれば、フランス、イギリスは8対1、ニュージーランドは6対1です。指針にあるように一人一人の子どもを尊重して保育するためには、保育士の配置基準を手厚くする必要があります。
 本来なら、指針の改定で、保育所の役割が増えることになれば、同時に保育士の配置基準や処遇を見直すべきですが、そうなっていないことは大きな問題です。

質問
  1. 一人一人の子どもを尊重して保育するには、保育士の配置基準を改定することが望まれます。市では1歳児については国基準を上回り5対1としているが、現場からは4対1を望む声が出ている。他の自治体では1歳児を4対1としているところもある。現場の要望に沿って特に、1歳児については4対1にし、公立保育所の3歳児を民間保育所と同様の15対1に保育士配置基準を改定すべきではないか。

  2. 市でも保育士確保が大変と聞いている。その原因は、他の産業に比べて給与が安いからだと指摘されている。今こそ、かつての民間給与改善費を復活させ民間保育所の保育士給与を引き上げるべきではないか。

  3. 民間保育所でも障害のある子どもを保育しているが、その中にはどのように保育していけばいいのか保育士が対応に苦慮している。そこで、臨床心理士等専門家に巡回して対応について指導してほしいという要望がある。市で検討すべきではないか。

  4. 一時預かり保育については、なぜ公立保育所で実施をしないのか。疑問です。民間保育所の20園で一時預かり保育を実施していますが、民間保育所に比べてベテラン保育士が多いし、財政的にも公立保育所で実施する方が望ましい。一時預かり保育についてはすべての公立保育所で実施すべき。