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佐藤みち子の賛成討論
2020年03月23日

「選択的夫婦別姓の導入へ、一日も早い民法改正を求める意見書提出の件」について


 ただいま上程中の意見書案第10号「選択的夫婦別姓の導入へ、一日も早い民法改正を求める意見書提出の件」につきまして日本共産党西宮市会議員団は賛成します。
 以下、理由を述べます。

 現行の民法750条では、「夫婦は婚姻の際に協議によって夫または妻の氏のどちらかを称することに定め、婚姻中その氏を称さなければならない」となっており、夫婦別姓を認めていません。夫、妻どちらかの氏を選択できますが、実際には96%が夫の姓になっています。この問題の背景にあるのがジェンダー平等です。

 ジェンダーとは何か。社会が構成員に対して押し付ける行動規範や役割分担のことです。たとえば男の子はやんちゃがいい、女の子はおとなしいのがいい、結婚したら男の姓になるのが当たり前、女は女ことばを使うのが当たり前、ていねいな言葉使いをしなくてはいけない等々です。それらはシャワーのように、呪文のように繰替えされて、私たちの行動、価値判断を無意識のうちにしばっています。それは決して自然にできたものではなく、時々の支配階級が、人民を支配・抑圧するために、政治的につくり、歴史的に押し付けてきたものにほかなりません。

 過去に遡れば、第二次世界大戦までの時期は、人権問題は国内問題とされ、外国からの口出しは無用と扱われてきました。しかし、日本でもドイツでも、ファシズムと軍国主義による人権蹂躙が、未曽有の犠牲を生んだ第二次世界大戦への道を開いたという歴史の教訓を踏まえ、戦後「国際的な人権保障」という考え方が登場しました。21世紀の世界においては、人権を擁護し発展させることは、単なる国内問題でなく「国際的な課題」となりました。

 この「国際的な人権保障」とは、20世紀中ごろにつくられた、国際的な人権保障の基準を土台に、女性、子ども、障害者、少数者、移住労働者、先住民など、その尊厳を保障する国際規範が発展しました。具体的には1979年の女性差別撤廃条約、1989年の子どもの権利条約、1990年の移住労働者権利条約、1992年の少数者の権利宣言、2006年の障害者権利条約、2007年の先住民の権利宣言などです。これらの人権保障の豊かな発展をかちとった力は、全世界の草の根からの運動によって作られました。ジェンダー平等という概念は、こうした人権の豊かで多面的な発展の中から生まれたものです。

 しかし、日本はこの分野では世界の先進国の中でもとりわけ遅れていますが、その一つが明治時代に作られた差別が根っこにあります。1890年に作られた教育勅語には12の徳目があり、その中に「夫婦相和し」とあります。これは、夫婦仲良くという意味ではなく、妻は夫に服従し逆らうなという意味で、男尊女卑を徹底的にたたきこみました。
 さらに、1898年旧民法は家制度を作りました。戸主、家長がすべての権限をもち、結婚やどこに住むかも家長の許可が必要とされました。妻となると民法上の無能力者とされ、家長の許可なしには、経済活動、訴訟、労働等の自由はありませんでした。また、妻は婚姻により夫の家に入るとされ、夫婦同姓が強いられ、徹底した家父長制度が押し付けられました。

 続く1907年に制定された刑法にも家父長制がきざまれています。妻は夫の財産とみなされ強姦罪は財産犯のようなものとされました。強姦罪で権力を侵害されるのは夫や父でした。財産である窃盗、詐欺罪の並びの中に位置づけされました。妻は貞操を守ることが当たり前で、その凌駕する暴力があれば犯罪として成立しましたが、抵抗しないものは保護にあたいしないとされました。戦後、成立した憲法でこのような問題はいっそうされるべきでしたが、それが引き継がれ、今なお民法では夫婦同姓が強制されています。

 そして、高度経済成長以降、財界を中心とする新たな差別の構造が作られました。男は24時間企業戦士として、どんな長時間過密労働も単身赴任も家庭を顧みることなく働くのが男の役目とされました。女は結婚したら夫を支え専業主婦になって、掃除、洗濯、子育て、介護、いっさいの身のまわりの世話をするのが女の役目だと強制したのです。

 こうした価値観、役割分担の押し付けによって、男性も女性もひどい搾取の下においていきました。利潤第一主義をあらゆるものに優先させ、財界、大企業が戦後、ジェンダー差別の新たな構造をつくっていきました。昨今は、多くの女性が仕事を持ち共働き世帯が当たり前の社会になっても形を変えながら再生産されています。

 請願審査の中で陳述をした女性は、「かつては、結婚すれば男性の姓を名乗るのが当然で、それはうれしいことだと思っていました」と、しかし、そうではない人が自分の身近にいたことがこの問題を考えるきっかけになり、ジェンダーの問題だと気付いたと発言しました。多様性を認め合おうとする現代社会で「夫婦同姓」を法的に強制することは時代に逆行しています。同じ姓を選択することも別姓を選択しても不利益なく社会生活を送れることを保障すべきです。今やジェンダー平等を求める闘いは日本国民にとっても強い関心が寄せられている切実な問題です。

 生まれ持った名前を一生大事にしたい、そう考えるのは男性も女性も同じです。
 女性の社会進出が進んでいること、生まれた時からの名前を大事にしたい等、夫婦別姓を求める声は時代の流れです。是非、本意見書案に賛同していただきますようお願いいたします。