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まつお正秀の一般質問
2020年09月07日

自衛隊への名簿提供について


●二つ目のテーマは自衛隊への名簿提供についてです。
 今回この問題を取り上げるのは、西宮市が今年2月から大学生の卒業予定者、6月には高校卒業予定者の自衛隊の隊員募集のために名簿を電子データで提供していたことを知ったからです。
 自衛隊への紙や電子データでの名簿提供はこれまでも各地で問題になっていますが、西宮市はこれまで多くの自治体と同様に住民基本台帳の閲覧しか認めていないものと私は思っていました。ところがこの1月、神戸市が今年の7月から電子データで自衛隊に名簿を提供することを明らかにし、神戸市議会でも取り上げられ、弁護士さんを招いての学習会や名簿提供反対の署名が取り組まれるなどの市民運動が大きく広がっていることを知りました。そこで、私は念のために市の名簿提供窓口となったと聞いた市民相談課に確認をしたところ、今年から電子データで提供することになったという回答が返ってきたのです。その時になぜ今年からなのかと聞きますと、自衛隊地方協力本部の西宮地域事務所から担当者が来て、近隣の自治体も提供しているし法的にも問題ないということだったので、市長が協定書を結んで提供したということでした。
 さらに調べていくうちに、西宮市は以前、2013年度と2014年度の二年間、自衛隊に15歳、18歳、22歳の氏名、住所、年齢、性別の住基4情報を電子データで提供していたことがわかりました。この時期は後でも触れますが、集団的自衛権容認を掲げた安倍晋三氏が第二次安倍政権として復活した時期と重なります。
 2015年10月、神戸新聞が2014年度の兵庫県下の自治体の名簿提供調査を行っています。この記事では41の自治体のうち16自治体が紙や電子データで提供していて、西宮市も含めていくつかの自治体が初めて提供したと報じています。
 第二次安倍政権が誕生したのが2012年12月で、この新聞記事で注目すべきは、その翌年2013年5月、第二次安倍政権誕生から半年もたたないうちに、防衛大臣名で都道府県知事あてに紙や電子媒体での名簿提供要請が行われていたこと、その要請文に井戸知事が「適切に対応を」という一文を加えて県内自治体へ送っていたこと、そして、西宮市はこの通知を前後して二年間にわたって電子データで名簿を提供していたこともこの記事には書かれています。
 さて、この15歳の名簿については、陸上自衛隊高等工科高校への勧誘に使われていることがその後問題となります。自衛隊の幹部を養成する目的の学校では、防衛大学校がありますが、この高校も同じ目的でどちらも横須賀にあります。
 なぜ、この高等工科高校への勧誘が問題なのか。それは2009年に自衛隊法が改正されて、この高校の生徒の身分が自衛隊員から生徒へと変わったからです。自衛隊法では生徒への勧誘を認めなくなったにもかかわらず、自衛隊法の改正後もこれまでの慣例で、全国のほぼ各都道府県単位で50箇所ある自衛隊地方本部の、実に21地方本部が15歳の名簿も含めて提供を求めていました。2015年3月26日に行われた参議院外交防衛委員会でわが党の井上哲士参議院議員が、実際に滋賀県などで勧誘のパンフレットが送られていた具体例を示して違法性を追求しました。当時の担当局長が「深く反省している」と陳謝、是正を約束しました。
 滋賀県といえばこの年に高島市の市立中学校のトイレットペーパーに自衛隊募集と印字されていたこと問題になり、すぐに撤去されたたことで話題にもなった県です。
 この国会質問から、兵庫県内でも2015年度から西宮市をはじめ4市町が15歳だけでなくすべての名簿提供をしなくなりました。というよりも名簿提供を求めてこなくなったというのが真相のようです。また、この2015年はマイナンバー制度が導入されて通知カードが送付された年でもあり、個人情報についての関心が大変高まったことも、名簿提供自治体が減少する背景にあったと思われます。
 先日、安倍首相は辞任表明しましたが、もともと日本国憲法改正論者で、憲法9条に自衛隊を明記することを悲願としてきました。そしてその具体化の一歩として2014年7月、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行い、安保関連法いわゆる戦争法を国会に提出、2015年9月19日未明に国会で強硬可決させました。この安保法制によって自衛隊の海外での後方支援や駆け付け警護など武器使用が拡大され、命の危険が高まったことによって自衛隊への応募が減っていったと思われます。
 こうした政権の動きと自衛隊の応募者数を具体的に見ておきたいと思います。
 民主党政権だった2011年度には応募者43529人だったものが、第二次安倍権が誕生した2012年度は29029人へと激減。2013年度は29535人、2015年度21181人、2016年度20444人へと民主党政権時の半分以下になります。その後の2017,2018年度の2年間は年一回から二回に受験回数を増やしたことでわずかに応募者は増えましたが、それでも2018年度は22452人です。こうした第二次安倍政権誕生から激減していく自衛隊員の応募に対し、業を煮やした安倍首相は、昨年2019年2月13日に行われた衆議院予算委員会で、自治体の6割が名簿提供を拒否していると不満をあらわにした発言を行い、そこからさらに各自治体への名簿提供の圧力がかけられているのです。

■そこで質問です
1点目、これまで電子データ名簿を自衛隊に提出していなかったのに、今年2月から電子データで名簿を自衛隊に提供することになった経緯を伺います
2点目、兵庫県下のこうした名簿の提供状況につい伺います
3点目、こうした名簿を提供することになった根拠法令を伺います
4点目、憲法13条に基づくプライバシー権が名簿提供で棄損されるという認識はないかお答えください
5点目、明らかに自衛隊への勧誘がされることがわかっている目的の名簿提供は憲法違反だと思います。直ちにやめるべきと思いますが見解を伺います。

 これで壇上からの質問は終えまして、ご答弁によりまして対面質問席から、再質問、意見要望などを述べさせていただきます。ありがとうございました。