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野口あけみの反対討論
2020年10月01日

2019年度決算反対討論 総務分科会


 議題のうち、認定第10号 令和元年度(2019年度)一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件(以下、本決算という)について、日本共産党西宮市会議員団は、のちに述べる各施策への取り組み姿勢、行政姿勢に問題ありとの立場から反対いたします。

 まず、本決算の特徴について触れておきたいと思います。
 本決算は、石井市長就任後初めて当初予算を編成し、執行したものです。また、「第5次総合計画」の初年度であり、2019年10月からは国によって消費税10%への増税が強行され、幼児教育・保育の無償化が実施されるなど、市行政にも大きな影響がありました。
歳出・歳入とも前年度決算額を上回る規模となりましたが、収支の結果、財源不足となり、財政基金を53億円取り崩し、実質収支で6億円の黒字を確保しました。

 阪神淡路大震災の影響をようやく脱した2005年度以降本決算までの15年間で、当初予算では基金取り崩しを予定するものの、決算では取り崩しをしない年度は実に11年あり、この間の基金の取り崩しはまれな例です。また、取り崩しゼロの年度の決算剰余は多い時では44億円、およそ25億から30億、40億円、平均でも28億5千万円が計上され、それに伴い基金の積み増しが続いてきました。
 そうした中、前年度(2018年度)決算は基金の取り崩しはなかったものの、実質収支額は7億1200万円と従前より少なく、さらに2019年度、本決算では、財政基金を53億円取り崩し、実質収支は6億円と、前年度よりさらに少ないとなると、財政状況に一抹の不安を抱き、総務分科会では財務局にその要因を確認いたしました。
 当局からは、@歳出では、投資的経費や扶助費などに要する一般財源が前年度より増加していること。 A歳入予算では、前年度決算剰余が少なかったために繰越金が少なかったことや、歳出規模が大きいため、基金取り崩しを84億円と多額を予定していたこと。B予算より決算で上回ることが多かった地方交付税が、本決算では下回ったこと。C利子割交付金、株式等所得割交付金、地方消費税交付金なども予算より決算で下回っていたことなどが、説明されました。
 先ほど、基金の取り崩しは2005年以降はまれな例と申し上げましたが、震災後数年はもちろんのこと、震災前は交付税不交付団体であったため、基金取り崩しはほぼ例外なく行われていました。むしろ、決算で取り崩しをせず、多額の決算剰余が生まれ基金を積み増してきた11年のほうが、まれなことなのかもしれません。
 いずれにしても一般財源として活用できる本決算後の基金残高は、財政基金で176億円、減債基金で35億円、あわせて211億円あります。公共施設保全積立基金36億円を加えると247億円です。基金取り崩しがあったからと言って、いたずらに財政状況に不安を抱く必要はないものと考えます。

 しかし、この度のコロナ禍は、今後の行財政運営に大きな影響を与えることは必至です。2020年4月から6月期の国内総生産(GDP)は前期比7・8%減、年率換算で27・8%減と過去最悪の落ち込みの下、8月21日時点でのコロナ関連倒産件数は帝国データバンクによると、全国で458社。厚労省がハローワークなどを通じて集計したコロナ解雇は9月23日時点で全国6万人を超えています。総務省の労働力調査によるコロナでの一時的な休業は4月時点で対前年同月比370万人増、その後も復帰できずにいる休業者は、6月時点でも対前年同月比で90万人となっています。今後も中小零細企業の倒産、廃業、事業主都合による離職者は増えることでしょう。
 こうした状況では、市の歳入の半分を占める市税の減は避けられません。新年度予算編成にあたっては、厳しい側面に十分配慮しつつ、国に対しては必要な財政支援を強く要求し、何よりコロナ危機に瀕する、市民の命と暮らしを守ることを第一に、尽力いただきたいと思います。


 では、各分科会ごとに意見、問題点の指摘を行います。
 総務分科会です。

 1点目は、まつお議員が一般質問で取り上げた、自衛隊への名簿提供問題です。2015年以来閲覧にとどまっていたものを、2019年12月市長が協定を結び、自衛官募集対象年齢者の名簿を電子データで提供することに踏みこみました。 
 個人情報が知らぬ間に自衛隊の手にわたり、募集のパンフレットが送られてくることに、少なからぬ市民が不審に感じています。これだけ個人情報保護が言われ、学校ではクラス名簿さえ配布されない中で、どこで住所や、氏名、卒業することまで知ったのか、という不審、不安です。
 ましてや自衛隊は2014年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定と2015年9月の安保法制の成立によって、武器を手に取り使用する部隊へと変容しており、そのことへの不安も広がっているのです。電子データの提供を中止するよう求めるものです。

 2点目は、業務プロセス分析に関してです。市は、2018年と2019年度でコンサルに委託し、中央病院、上下水道局などを除く全課の事務事業を対象に業務プロセスの可視化と分析を行いました。
 今後この報告結果を受け、業務の効率化を進めるため、会計年度任用職員の活用や民間委託等のアウトソーシング、ICTの利活用、職員定数の見直しなどを具体化し、進めるとしています。例えば、業務の難易度をA〜Eに分類し、現状難易度の低いD業務に46.2%、E業務に29.8%の正職員がついているものを、会計年度任用職員に置き換えることを検討するなどとしています。
 過度な非正規化やアウトソーシングでは、決して「公」の責任を果たすことはできません。注意深く推移を見ていきたいと思います。

 3点目は、佐藤議員が一般質問で取り上げたジェンダー平等への取り組みです。新年度は本市でもようやくパートナーシップ宣誓証明制度が始まりますが、日本の立ち遅れたジェンダーギャップ指数の向上のためには、とりわけ遅れている賃金の男女差を埋める取り組みが市そのものにも求められます。本市の非正規の85%を占める女性の思い切った待遇改善がそれを後押しします。先ほど取り上げた業務プロセス分析を受けた非正規化を促進しようとする取り組みとのまさにせめぎあいですが、目先の効率化のみにとらわれることなく、大きな視点に立った取り組みを求めます。

 4点目は、名神湾岸連絡線についてです。本市では、都市景観条例により、名神湾岸連絡線も計画策定段階協議を行う対象であり、事業主体が未定の中、現在、国交省と協議中とのことでした。高さ28メートルものジャンクションや海を渡る高速道路は、景観の阻害物でしかありません。これは当局も認めています。この条例を盾に「景観をだめにするからやめよ」とまでは言えないとのことでしたが、少なくとも景観に配慮するよう協議が行われるものです。
 市は独自で景観を守るためにこのような条例を策定しているわけですが、残念なのは、周辺地域住民が望む健康調査には全くとりくむ気がないことです。国や県の仕組みになくても、住民に寄り添う気があるなら市が独自で取り組むことは可能ではないでしょうか。地域住民が望む健康調査にとりくむことを改めて強く求めます。