野口あけみの反対討論/* --項目挿入-- */?>
2020年12月16日
社会教育施設移管問題反対討論ただいま上程中の諸議案のうち、議案第247号 西宮市教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例等の一部を改正する条例制定の件、議案第248号 西宮市職員定数条例の一部を改正する条例制定の件、議案第251号 西宮市勤労福祉センター条例の一部を改正する条例制定の件、議案第254号 西宮市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例制定の件、および議案第256号 西宮市特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営に関する基準を定める条例の一部を改正する条例制定の件、以上5件について、日本共産党西宮市会議員団は反対します。 私からは、議案第247号および議案第248号の2件について反対討論を行います。 2019年6月、「地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」(第9次一括法)の公布・施行、および「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」「社会教育法」「図書館法」「博物館法」の一部改正によって、地方公共団体の判断に基づいて首長が条例の定め、社会教育施設を所管する仕組みが導入されました。 議案第247号は、生涯学習の振興を全庁的に、より一体的に推進するためとの判断から、2021年4月から、現在教育委員会の所管である図書館、郷土資料館、公民館を市長事務部局に移管させ、産業文化局に所掌させるため、関係条例、全部で8条例を改正するものです。 「お国のために血を流せ」とこどもたちに教えた戦前の教育行政の反省から、教育の自主性を守るため、教育行政を国や首長から独立させるためにできた教育委員会制度ですが、教育委員会の形骸化はずいぶん前から進んでいます。そして、「首長からの独立性」を取り上げ、教育委員会の権限を取り上げて、首長に移す「地方教育行政法」改変が2014年なされました。 教育委員会を代表する教育委員長をなくし、自治体幹部である教育長に教育委員長の役割も与え、それまであった教育長に対する教育委員会の任命権、罷免権、指揮監督の権限をなくしました。また、それまでの制度では、基本的に教育委員会の権限に属すべきものであった自治体の教育政策の大本となる「教育大綱」を決定する権限も首長に与えました。 こうした一連の流れの中で、むしろ先んじて実施されたのが、文化、スポーツ、生涯学習にかかわる行政分野の、教育委員会から首長部局への移管です。どれもが、教育委員会の所管を基本とすべき、望ましいとされながら、一方で、自治体の実情に応じて、自治体の判断により、首長が所管することを選択できるとしてきました。 この度の、公民館、図書館、博物館(本市では郷土資料館)の社会教育施設についても、H30年12月の中教審答申で、文化、スポーツ等と同様に、教育委員会の所管を基本とすべきだが、地方の実情を踏まえ、より効果的と判断される場合には、地方公共団体の判断により、社会教育の適切な実施の確保に関する制度的担保が行われることを条件に、公立社会教育施設を地方公共団体の長が所管できることを可とすべきとされました。 これらから読み取れるのは、教育委員会の形骸化を一層進めることになるということです。日本社会教育学会は、公立社会教育施設の教育委員会所管堅持を主張していますが、教育委員会が学校教育委員会化する可能性があると指摘しています。 しかしながら、一方で、社会教育の適切な実施のために確保すべきものとして、教育の政治的中立性や継続性、安定性、地域住民の意向の反映、学校教育と社会教育との連携・融合などをあげ、そのための教育委員会の関与などの一定の担保措置を講ずるべきとしました。 この度の条例提案に際しては、教育委員会の意見を聞く措置をとりました。 −意見といっても「異議なし」というのみでしたが − 委員会質疑では、これ以外の措置として、特定社会教育機関(首長の所管することになる図書館、公民館、郷土資料館)を設置及び廃止する場合に教育委員会の意見を聞かなければならないことを規則で定める、首長=市長が主宰する総合教育会議や生涯学習推進本部には、教育長、教育次長も参加することなどをあげられました。はたしてこれらの措置が、中立性や継続性、安定性を確保するために有効に働くのか、懸念するものです。 言葉を換えれば、現時点での市のスタンスは、生涯学習を全庁的に推進する、公民館を地域の学習・交流の拠点として位置づけ活用していくなど積極的なものと思われますが、市長や担当者が変わったらどうなるかが懸念されるということです。市長には政治的中立などを求めるわけにはまいりません。れっきとした政治家です。とりわけ図書館において、個別の図書、資料の選定において首長の政治的立場などを忖度することを招かないか、利用率など目先の数字をもとに効率的に運営すべきと、指定管理者制度の導入や、最悪「廃館」などの事態を招かないかなども杞憂で終わればよいのですが、首長によっては全く可能性がない話ではありません。 先に述べた日本社会教育学会は、自治体によっては社会教育行政が衰退していく可能性も指摘しています。 よって、日本共産党西宮市会議員団は、この条例案に反対です。もちろん、だからといって社会教育行政が衰退してもよいなどとは思っておりません。生涯学習が全庁的に推進されることを望んでいることも申し添えておきます。 議案第248号は、この議案第247号の条例成立を前提に、定数を変更するもので反対です。 最後に、質疑の中で政新会の委員から、「教育委員会は政治的中立なのか。世の中に政治的中立などありえない。正しさも時代によって変わっていくもの。時代によって変わり、あやふやで定義のないものを言い募る必要はない。教育委員会をなくして教育局でよい」などの趣旨の発言がありました。 もちろん、中立を保つことは難しいことかもしれません。しかし、文部科学省が重視する中央教育審議会も、要旨次のように言っております。「学校教育、社会教育の別を問わず、教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身共に健康な国民の育成を期して行われるものである。特に、学校教育は、教育を受ける者の人格形成に直接影響を与える度合いが特に強いものであることから、教育基本法などにおいて、政治的中立性の確保に特に配慮する規定が置かれている。 社会教育は、随時かつ任意で参加できるものであり、事業内容に応じて自由に参加を判断するものであることなど、学校教育とは異なる側面も多いが、政治的中立性を確保することは極めて重要である。」などとされています。 すなわち、教育が平和で民主的な国家や社会の形成者を育成することを目指すことや、中立性、行政からの独立を求めることは普遍的な原則です。これらを否定するかのような意見はいかがなものかということを指摘しておきます。以上です。 |