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2013年度予算要望書
2012年8月30日

教育委員会

  1. 憲法と子どもの権利条約を生かし、子どもの成長・発達を中心にすえた教育を教育は、すべての子どもの持っている成長・発達する権利を保障するための社会の営みである。とりわけ学校教育は、「人間を大事にする教育」を大前提に、すべての子どもに基礎的な学力を保障するとともに、子どもたちが社会の主人公として行動できる能力を身につけることを助ける責任を負っている。
    1. 2011年10月に、大津市の中学2年生の生徒が自宅マンションから飛び降りて自殺する事件が起こった。その後の調査で、同級生によるいじめがあったことが明らかとなった。この事件は全国に衝撃を与えている。この背景には真相を隠そうとする学校現場や教育委員会の問題も浮き彫りになっている。あらためて、西宮市において「人間を大切にする教育」「いじめ防止教育」の取り組みを強化し、不幸な事件を起こさないこと。
    2. 学校現場でいじめ問題を隠蔽することの背景に、学校評価制度が指摘されている。教員や学校の評価を下げることになるから「いじめ問題」の存在を隠そうということになっては、重大な事態を招きかねない。あらためてこの制度の在り方等を評価し点検すること。
    3. 登校拒否、いじめ等、心のケアを必要としている子どもも増えている。教育現場の安全配慮義務を徹底すること。相談体制の充実を図るために、養護教諭の複数配置やスクールカウンセラーを小・中学校全校に配置するよう、国・県に求めること。
    4. ネグレクトなど虐待を受けている子どもが増え、社会問題にもなっている。教職員への研修を強め、健康福祉局や県子どもセンターなどとも連携を強めて、早期発見に努めるとともに、なにより子どもの命を守ること。
  2. 憲法と教育基本法を生かし、歴史の真実に沿った教育の実践を進めること。
    1. 子どもや教職員、保護者等の内心の自由を守り、「日の丸・君が代」を教育現場で、決して強制しないこと。
    2. 侵略戦争への反省は日本社会が国際社会に復帰する際の条件であり、日本社会に民主主義を定着させ、日本への誇りを培う上で不可欠のものである。平和教育を重視し、今後も「つくる会」系教科書を採用せず、公教育が侵略戦争の美化・肯定を行うようなことは一切許さないこと。
    3. 市が実施しているリサーチプラン学力テストは、一人一人の児童生徒の学力向上に生かされていない。中止すること。
  3. 一人一人の子どもに行き届いた教育を保障する「少人数学級」が、国際的にも認知されてきている。市教委として30人学級の早期実現のため、以下に取り組むこと。
    1. 市教委として、「少人数学級推進計画」の着実な実施を国に求めること。その上で、義務教育全期間にわたる30人学級の実施を国に要求すること。
    2. そのために必要な正規教職員の確保、学校教室をはじめとする施設整備に対して、国の必要な対応を併せて求めること。
  4. 現在、教室不足に対応するため「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」により規制をはかっている。しかし、新改築した浜脇校区などで、規制緩和によりマンション開発が促進され、また教室不足を起こしかねない事態がある。
    教室不足対策だけでなく、保育所なども含めより良い市民生活を保障する、実効性ある規制をはかるため、都市局と連携し「条例化」による抜本的強化を図ること。
    一定期間のマンション開発を全市域で許さないこと。
  5. 学校配分予算はこの間、わずかな増額はあったものの、長期に削減されてきたことから十分回復していない。思い切って大幅増額すること。また、グランドピアノなど高額備品などについては教育委員会で購入するようになっているが、予算そのものが少ない。引き上げること。
  6. 行き届いた教育のための人的配置等について
    1. 児童生徒数の増加に見合う正規教員が、県教委で確保されていない。定員に対し、小学校で約8.6%,中学校で約15.6%の教員が臨時講師となっており増加傾向である。定員についてはすべて正規教員で確保するよう、県に強力に求めること。また、非常勤講師の加配分についても、定員増を国に求めること。
    2. 臨時教員や非常勤講師については、短期雇用で「官製ワーキング・プア」と言われるような実態がある。このような非正規教員の処遇を大幅に引き上げるよう、国・県に強く求めること。
    3. 中学校におけるクラブ活動指導は、教員の献身性に大きく依存しており、心身ともに大変な負担となっている。早急な改善を図ること。
    4. 年休や出張時には県教育委員会の要領に基づき、代替教員等の配置を行っているが、実態としては短期対応などで不十分な状況となっている。さらにきめ細かな補助員配置を要求すること。また、市独自でプール指導時の補助員や中学校の理科・技術家庭科の実習助手など現場の声を聞き確保すること。また事務職員の増員もすすめること。
    5. 労働安全衛生基準に基づいて、教員の更衣室、休養室の設置を進めること。
    6. 教員免許更新制度は、教員の身分を不安定にし、「物言わぬ教師」づくりをすすめることにつながりかねない。同時に「講習」中の代替要員もない。国に教員免許更新制度をただちに廃止するよう求めること。あわせて「教員評価」「不適格教員」制度や「教員給与の格差付け」についても廃止を求めること。
  7. 教育費の家計負担の軽減について
    1. 公立高校授業料の無償が実現したが、早くも「見直し」の動きがある。引き続き無償を堅持するよう強く国に求めること。私立高校についても無償化・負担軽減を求めること。
    2. 義務教育無償の原則にも関わらず、その対象は授業料や教科書などに限られている。給食費の無料化を開始した自治体もあり、制服代、ドリル代、修学旅行積み立て、クラブ活動経費など保護者負担の無償化を国に求めること。
    3. 不況が深刻化するもとで、就学奨励金については、一層の所得制限緩和を行い、利用しやすくすること。また、申請手続きについては保護者が希望する場合、直接教育委員会でも行なえるようにすること。
    4. 奨学金制度については給付制奨学金の創設を、国や県に早期実現を要求するとともに、市独自の制度についても創設、拡充すること。
    5. 世界一高い大学、専門学校などの学費についても、負担軽減を国に求めること。
  8. 学校園施設等の整備、改善について
    1. 長期的な学校施設改築計画を立てとりくむこと。また、各学校からの改修要望にはただちにこたえること。
    2. 2013、2014年度で中学校普通教室にエアコンが設置されるのに続き、小学校でも順次設置されることになった。特に小学校では条件整備を急ぎ、設置時期を早めること。また、災害時の避難所となっている体育館へのエアコン整備もすすめること。
    3. 学校のトイレは、現代の生活様式に見合った洋便器への改修・改善をすすめること。また、委託業者による清掃は効果も大きいことから、全体として回数を増やすこと。危険を伴うガラス清掃についても、少なくとも各校年1回は実施すること。
    4. エレベーター設置は、早期全校設置に向け、予算を大幅に増やすこと。
    5. 温水シャワーを全校に設置すること。
  9. 個人情報を学校園から持ち出し、紛失する事故が一向に改善されない。個人情報保護をさらに徹底すること。この背景にある教員の持ち帰り残業の改善も行うこと。
  10. 学校図書館指導員により、各校に約50回の配置を行っている。学校図書教育を充実させるためには、「いつ行っても図書の先生がいる」という状況が必要である。先進市に学び、早期に専任の司書教諭を市費で全校に配置すること。
  11. 幼稚園教育について
    1. 「西宮市幼児期の教育・保育審議会」の中間報告では、市内を13の小ブロックに分け、現在21園ある公立幼稚園を8園廃止し、原則1ブロック1公立幼稚園を配置するという内容になっている。これは、「西宮市幼稚園教育振興プラン」で16園に縮小するとの内容からも大幅に後退するものである。廃園は絶対しないこと。
    2. 「西宮市幼児期の教育・保育審議会」の中間報告の内容を早急に市民に公報し、広く声を聞くこと。
    3. 市教委は「公私共存」といいながら、実際には、私立幼稚園の園児確保を前提に、公立幼稚園を調整弁にしている。市民の要望に沿って、公立幼稚園2年保育の募集定員を増やし、入園希望者を全員受け入れること。
    4. 要望の強い「3年保育、延長保育、子育て支援事業」等々を公立幼稚園で実施すること。
    5. 私立幼稚園就園奨励助成制度における所得制限は撤廃し、奨励金もさらに増額すること。
  12. 障害のある子供たちの教育条件を改善するために、以下のことを取り組むこと。
    1. 肢体不自由児通園施設「新わかば園」の整備に合わせ、「西宮スクーリングサポートセンター」が合築される。他市の先進例を参考にするとともに、特別支援教育の拠点施設として、現場の先生方の意見を十分反映させること。
    2. 特別支援教育においては、専門家も含めたマンパワーが必要である。子どもたちの障害の複雑化に対応するため、市費による教員も含め増員すること。
    3. 特別支援教育支援員が全学校に配置されているが、2011年度から県教委の補助金が打ち切りとなり、全額市費により継続している。県に対し、補助金の復活と実態に応じて複数配置を求めること。さらに、専任のコーディネーターや医療職員を配置すること。また、学校協力員については、ボランティア依存することなく、職員として勤務してもらうこと。
    4. 障害認定がなくても、配慮を要する子どもが増えている。教員加配など必要な手立てをとること。
  13. 高校教育について、
    県教委は「兵庫県高等学校通学区域検討委員会報告」にもとづき、2014年度の入学者から、全日制普通科の通学区域を現行16学区から5学区に統合・拡大することを強行した。これにより西宮市は阪神・丹波学区に統合される。学区拡大は競争を激化し、遠距離通学による経済的、身体的負担の増大をまねくとともに、「地域の高校」という特徴がなくなるなど多くの問題点が指摘されている。このような通学区の広域化は中止するよう県に要望すること。
  14. 西宮市の小・中学校での学校給食は、“直営自校方式”で実施され、食育の観点からも、子どもたちの健康と成長をまもる上でも大きな役割を果たしている。次のことを実施すること。
    1. 将来的にも「直営自校方式」を堅持すること。
    2. 正規調理員を基本とした人員を確保すること。また、同じ職務にありながら嘱託、新嘱託、臨時等で勤務時間の差とともに賃金格差がある。早急に関係団体と協議し、整理改善すること。
    3. 「米飯給食」を自校炊飯できるよう施設整備をすすめること。米粉パンについても実施すること。
    4. 食物アレルギーのある子どもが増加している。アレルギー除去食の完全実施を行うこと。
    5. 現在、児童生徒数550人以上の学校に1名の栄養教諭が配置されているが、食育の観点からも栄養教諭を全校に配置するよう県に求めること。
    6. 給食費の公金化に伴い、「学校給食課」が新設された。これまで学校給食会が担っていた食材の調達などの業務も行うことから、適正な人的配置も含め、子どもたちの食育を進めること。
    7. 相生市では、学校給食の無償化がはじまった。西宮市でも早期に取り組むこと。
  15. “西宮市人権・同和教育協議会”は、あらゆる人権問題の早期解決をめざすとしているが、同和教育に大きく偏っている。廃止すること。
  16. 社会教育の重要な拠点である公民館は、1中学校区地域に1公民館を基準として設置しているが、設置場所によって利用しにくい地域がある。交通の便が悪く、起伏のある上ヶ原・甲陽園・広田地域に公民館を新設すること。
  17. 図書館について、以下のことに取り組むこと。
    1. 開館日の増や時間延長等による正規司書職員を増員すること。
    2. 拠点図書館については毎日開館すること。また開館時間についても、一定改善されているが、特に北口図書館は勤労者が利用できるよう午後9時までとし、必要な人員を確保すること。
    3. ひきつづき地域図書館の整備を進めること。要望のある津門・今津地域には、教育会館等も視野に入れ検討し、甲陽園地域にも地域図書館を設置すること。
    4. 分室については、市民に最も身近な図書館であることから民間委託から直営に戻すこと。
  18. 市民のスポーツ要求に応えるため、以下のことに取り組むこと。
    1. 民間スポーツ施設が市内に増えているが、料金も高く利用できない市民も多い。サンアビリティーズのような、低料金で手軽に利用できる公的スポーツ施設を抜本的に増やすこと。
    2. 市民要望の強い温水プールを整備すること。
  19. 廃校となった高須東小学校については、当面の暫定的活用をしながら、全市全庁的な視野で有効活用が図れるよう早期に検討すること。