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佐藤みち子の一般質問
2021年03月03日

介護保険について


 介護保険は3か年の事業計画によって運営され2021年度から、第8期介護保険事業計画に入ります。また、2020年4月は制度開始から満20年という節目でもありました。今回は、第8期介護保険事業計画と制度開始から20年の介護保険について質問します。

ア、第8期介護保険事業計画について
 第8期介護保険事業計画(以下、第8期計画という)は、2021年度から2023年度までの3か年の計画です。第8期計画は、2025年を見据えた「地域包括ケア計画」であり、団塊ジュニア世代が65歳以上となり、医療・介護ニーズが高い85歳以上人口が急速に増加してくる2040年を見据え、地域共生社会の実現に向けた中核的な基盤となる地域包括ケアシステムを推進し,第7期計画の基本理念である「すべての高齢者が、住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせるまち」を継承します。

 コロナ禍の中、第8期計画には、新たに感染症対策が盛り込まれています。本市でも第3波といわれる中、複数の高齢者施設でクラスターが発生していますが、このことをどう防いでいくのか対策が必要です。この問題については、先日のわが党野口議員の代表質問で答弁があり、3月から希望する介護従事者等15000人に対する検査を始めます。この検査は1回で終了しますが、検査の結果や市内感染状況を踏まえ、検査の拡大について検討するとの答弁もありました。この件については、是非とも前向きに検討されるよう要望します。コロナは感染していても症状が出ない、いわゆる無症状者が感染を拡大すると指摘されており、クラスターを発生させないため今後も職員・入所者、さらには出入り業者への定期的な検査の実施が必要です。検査については、監査業務を担う法人指導課が担当していますが、違和感があります。適切な担当課を検討すべきではないでしょうか。

 介護現場ではコロナ危機で、大変な困難に直面していますが、そのどさくさにまぎれて厚労省は制度改悪を決めました。2014年にそれまで介護給付として行われてきた要支援1・2に対するホームヘルプサービスやデイサービスは市町村が実施する総合事業に置き換えられ、介護給付から外されました。これは大改悪です。ところが、厚労省は要支援者だけでなく要介護と認定された人についても、本人が希望して、市町村が認めれば総合事業の対象にできるようにする制度改変を、国会審議にかからない、厚生労働省令の改定だけで実行することにし、2021年4月から実施します。介護関係者からは、今回の制度改変が要介護1・2の軽度者についても介護保険給付からの追い出しにつながらないかと、懸念の声を上げています。

質問します。
1、第7期の65歳以上の第1号被保険者の保険料は5,600円だった。第8期計画では65歳以上、第1号被保険者の保険料基準額は、第7期計画の基準額と同額になるとのことだが、その要因をお聞きします。

2、第8期計画では、施設の食費負担が引き上がることになっているが詳細を聞く。また、高額介護サービスの負担限度額引き上げについてもお聞きします。

3、介護現場はコロナ以前より人手不足が深刻な状況だったが、コロナ禍で介護従事者の離職が増えていると聞く。このことについては、個々の事業所任せでは解消できないと思うが、市として現場の人手不足にどう対応するのか。お聞きします。

イ、介護保険施行20年―介護の社会化は達成できたのか
 1997年に介護保険法が国会で可決されました。当時の世論調査で、国民の8割が介護保険制度の導入を支持しました。「介護地獄」と呼ばれた家族の介護負担、特に、妻・嫁・娘など、もっぱら女性が家族の介護を担わされる苦しみと理不尽を、「介護の社会化」によって解消するという理念に、多くの国民が期待を寄せました。
 日本共産党は、介護保険法が国会で審議されていた時から、この制度は「年金天引き」で保険料を徴収されるが、いざ介護が必要になったときに、十分なサービスが受けられない「保険あって介護なし」になりかねないと指摘し、介護保険と老人福祉の両方を充実し、困難を抱えた高齢者には、措置制度で保険給付と同様のサービスを提供できるようにする改善策を提案しました。

 この20年間に、介護をめぐる矛盾が社会問題となったことが何度もありました。自公政権の「構造改革」で、格差と貧困が広がった時期に大問題となったのが「介護難民」です。特別養護老人ホームが不足する中で、劣悪な施設が作られ、そこに入所している高齢者が悲惨な状況に置かれていることが、発覚し大問題となりました。
 さらに、2010年代、老親の介護のために現役世代が仕事を辞める「介護離職」が問題になりました。このことも、提供体制の不足と費用負担の重さが重なる中で深刻化しました。当時、安倍政権は「介護離職ゼロ」を掲げましたが、現在も毎年8万人〜10万人という状況で介護離職が推移しています。

 一方、介護現場の従事者はどうか、20年間、介護従事者の厳しい労働環境や劣悪な処遇は放置され続けてきました。現場では若い職員の離職や志望者の減少が続き、どこでも深刻な人手不足に陥っています。現在、ホームヘルパーの年齢構成は60歳代以上が4割を占め、80歳代のヘルパーもいます。20歳代のヘルパーは4%にすぎず、ヘルパーの高齢化が進んでいます。こうした事態を引き起こしてきた最大の要因は、介護従事者の過酷な労働環境と低処遇です。介護従事者の平均給与は、「全産業平均」より月10万円低い状況が続いてきました。長時間労働で夜勤もあり、命に関わるプレッシャーもあります。その上に、専門性が必要で高齢者や障がい者の尊厳と人権を守る職務がありますが、これらの重要性がまったく正当に評価されてきませんでした。

 現在の介護保険は、国民の要望や期待に応えらない多くの矛盾を抱えていますが、その大本に政府の社会保障削減路線があることは、介護の現状を憂える多くの有識者や、関係団体の共通認識となっています。
 要支援者や軽度の保険給付外しをめぐっては、厚労省の初代局長として介護保険の導入を主導した元官僚も「こうしたやり方は被保険者との約束を国が反故にするもの」と指摘しています。そして「言い過ぎかも知れないが、団塊以降の世代にとって介護保険は、「保険あって介護なし」という、「国家的詐欺」になりつつあるように思えてならないと痛烈な批判をしています。 
 そのことは、今後、高齢者は十分な介護が保障されないということを意味しています。それは、現在の高齢者だけの問題ではありません。

質問します。
1、軽度の要介護者は在宅で生活しているが、要支援1・2の訪問介護は保険給付から総合事業に移行した。また、在宅ヘルパーの訪問時間が、90分、60分と短くなり、2015年からは45分、20分とさらに短くなっている。第8期計画の基本理念は、「すべての高齢者が、住み慣れた地域で自分らしく安心して暮らせるまち」である。地域で暮らすことを支えるためには在宅ヘルパーの在り方が重要だと思うが、訪問時間が徐々に短時間になっていくことで、在宅高齢者の暮らしが支えられるのか。特に老夫婦で片方が要介護者の世帯や一人暮らしの要介護者の暮らしについて、市はどのように把握しているのか。お聞きします。

2、特別養護老人ホームの入所要件が2015年に施行された改正介護保険法で、原則「要介護3以上」になった。直近の特養待機者の人数は何人か。お聞きします。

3、介護保険開始前、家族中心で行われてきた介護を、「介護の社会化」への転換として、税金と保険料で支える介護保険が始まって20年が経過した。そもそもの「介護の社会化」が実現したのか。第1期からの保険料の推移、自己負担の推移、介護事業者数、要介護認定率の推移、特別養護老人ホームの数とそれ以外の施設数、さらに現在の特養待機者等から、保険者としての20年間の評価をお聞きします。