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2021年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:政策局
2020年08月31日


  1. 生活様式の見直しを含め、社会全体に多大な影響を与えている新型コロナウイルス感染症は、行政運営にも多くの課題を提起している。この度策定された「行政経営改革実行計画」において、その行政運営上の課題を列記し、新型コロナウイルス感染症対策にとどまらず、様々な危機事案に柔軟かつ機動的に対応するためにとりくんでいきたいとしている。以下、列記された課題に沿って政策局と総務局(別項)に対しそれぞれ要望する。
    (1)市民が必要とする情報や、正しい情報の効果的な発信については、ホームぺージの改善や、市長のSNS発信との整合などの課題がある。また、HPでは情報が届かない層には市政ニュースなど紙ベース発行物は有用ではあるが、どうしても時機に適わない面がある。さらなる改善、研究をすすめること。
    (2) ⼀元的に市民に情報を提供し、職員の業務軽減を図るものとして、様々な部面で民間委託によるコールセンターが設置されたが、市民の問い合わせや苦情に対し十分対処できたのか不明である。民間委託での安易なコールセンター設置は行わないこと。
    (3)人と人との接触を回避しても行政サービスが提供できる体制として、市役所に来なくても手続きができる、行政手続きのオンライン化・ICT化が今後推進されることになる。個人情報の管理など課題を整理し、慎重に進めること。

  2. 市が策定した「行政経営改革前期実行計画」では、2022年度までに78項目について、ほぼ「業務の効率化」を目標に掲げて取り組みを進めるとしているが、行き過ぎた「効率化」が市民サービスの切り捨てにつながるのではないかと危惧するところである。「住民の福祉の増進」をすすめる真の市役所改革につながるものとすること。

  3. 市は、全庁的に業務プロセスを分析し、業務の効率化と各業務の担い手を最適化し事務執行体制の再構築を目指すとしている。その中では、政策企画立案や高い専門性に基づく業務やマネジメントのみを正規職員が担い、専門性が低く定型的な業務は非正規職員や外部委託になどという考え方が示されているが、これは公共部門と公務労働の役割を縮小させ、ひいては地方自治を弱める恐れがある。安易な非正規化、外部委託化は行わないこと。

  4. 多様な公民連携形態の中でも、本市では2020年に企業との包括連携協定あるいは連携協定が相次いで締結された。公民連携では、必要な公共事業・サービスが安定的継続的に住民に対して供給されることが重要である。企業とは対等に、自治体としての責任を堅持して慎重にとりくみを進めること。

  5. 2020年5月、スーパーシティ法が成立した。スーパーシティでは住民の様々な情報が一元的に管理され、かわりに遠隔医療や遠隔教育、自動運転、顔認証やキャッシュレス決済、ロボットでのごみ収集など、さながらSF小説の世界のような各種サービスが一括して提供される。その運営は実質的に民間企業が担う。
    IT技術を活用した便利なくらしは国民の多くが望むものではあるが、個人情報が企業や国・自治体に把握され、監視されることは重大であり、また「公共財」が民間に投げ出されることは自治体機能破壊ともいえるものである。このスーパーシティの背景には、AIやビッグデータなど最先端のIT技術の活用をめざす「Society 5・0(超スマート社会)」 構想があり、本市も無関係ではない。個人情報とプライバシーを保護しつつ、先端技術を住民福祉の向上にどう生かすのか、慎重に検討を行うこと。

  6. この度の新型コロナは市財政にも多大な影響を与える。コロナ対策全般の実施による新たな財政支出や景気・雇用悪化による必要経費の増大などの一方、市税収入の減収や国の交付税・交付金など財源確保の厳しさが見込まれるとして、市は2020年6月、10の投資的事業について着手等をいったん見合わせ、新年度に事業計画見直しの可否の判断を行うとしている。
    今後、財政見通しについて精査し、市民にも公表すること。
    自治体の大きな役割はいうまでもなく「住民の福祉の増進」である。投資的事業はできるだけ先送りし、市民の暮らしや営業を応援する予算配分を行うこと。

  7. 市は自衛隊の要請に応じて、住民基本台帳から18歳と21歳の氏名、住所、性別、年齢の4情報を抽出し、2019年度から電子データで提供している。これは憲法13条に基づくプライバシー権や、自己情報コントロール権の侵害にあたる。名簿の提供は行わないこと。

  8. 政府はエネルギーミックスを謳い、原発をベースロード電源と位置付けて原発の再稼働や増設を行おうとしているが、ひとたび原発事故が起きれば広い範囲で、しかも長期にわたる環境破壊を引き起こすことを福島の原発事故で国民は体験している。福島の事故を教訓に原発から撤退をする国も相次ぎ、脱原発は世界の流れである。しかも、使用済み核燃料の処理にも見通しがない中では原発は廃炉にしていくしかない。
    国民世論は、原発ゼロが多数である。今こそ、西宮市としても市民の安全を守るために原発再稼働に反対する立場に立つべきである。「脱原発をめざす首長会議」に加入するなど、脱原発の世論を広げる役割を果たすとともに脱原発の運動の先頭に立つこと。

  9. ひきつづき本市では、マンション・住宅開発が続いており、教育施設、福祉施設などの不足を生じさせるとともに、教育環境や住環境、自然環境を悪化させている。特に、学校の教室不足、保育所不足等は一刻も放置できない深刻な問題である。児童、生徒の急増に対し、「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」で対応しているが、指定基準が複雑になり、わかりにくくなっている。要綱ではあくまで「市からの願い」であり罰則がないことから限界があり条例化が不可欠である。教育委員会やこども支援局とも調整し、要綱を早急に条例化すること。また、それまでの間は、市全域を「準受け入れ困難地区」以上にして規制を強化すること。

  10. 市民会館の建て替えや保健所の整備、市役所本庁舎建て替えなどを含む本庁舎周辺再整備ビジョン(素案)及び、本庁舎周辺公共施設再整備構想(素案)が、2019年12月に示されたが、素案とはいえコロナを経た今、大幅な見直しが必要だと考える。特に、公共施設再整備についてはそれぞれの施設ごとに慎重に再検討すること。

  11. 名神湾岸連絡線については、二回にわたる公聴会で近隣住民をはじめ立ち退きの対象と予想される企業などからも反対の声が上がっている。当該地域住民はこれまでも国道43号線、阪神高速によるばいじん、騒音、日照などの被害に悩まされてきたところであり、さらなる高架道路の建設は、健康被害が増幅するのではとの大きな不安を抱えている。直ちに住民が望んでいる健康調査を実施し、国や県に対しては計画の中止を求めること。

  12. 5次総では「阪神西宮駅について民間主導の駅前整備に向けた検討を行う」としている。公共施設整備の対象となる市道西262号線の拡幅は、事実上不可能である。よって、市として歩行者などの安全対策に絞った整備を阪神電鉄に求めていくこと。

  13. JR甲子園口駅北側は、歩行者や自転車、バスなどが交錯し、「市内でも有数の危険な地区」と市も認識している。駅前広場の拡張や通過交通の分離など課題は多いとしているが、整備をめざすこと。またそれまでの間、安全対策にもとりくむこと。

  14. 北部山口地域の渋滞は地域住民の生活に影響を及ぼしている。西宮北有料道路の無料化と第二名神高速道路の開通との関連も含めた交通量調査を行ない、渋滞解消のための方策を検討すること。

  15. 鉄道駅のホームからの転落による死亡事故が各地で相次いでいる。国は「1日当たりの平均利用客が10万人以上の駅」にホームドアの整備を進める考え方を示しており、県内ではすでにJR三ノ宮駅などでホーム柵が設置され、私鉄でも設置の検討が進められている。本市では阪急西宮北口駅での設置が検討されているとのことだが、他でも安全面で懸念のある駅などへの設置を、国や鉄道事業者等に求めること。

  16. JR西宮名塩駅外エレベーターが整備されたが、下りエスカレーターが設置されていない。引き続き関係機関にはたらきかけ整備すること。

  17. 市民生活を支援するための公共交通の充実を図ることが求められている。とくに、地域交通の柱となるバス交通については、高齢化社会の進展に伴う社会参加促進とともに、通学区がますます拡大する高校生の通学保障の面からも、拡充が急がれる。以下の項目にとりくむこと。
    (1)この間、新規を含め路線の拡充が一定図られているが、引き続き住民要望に基づく以下をはじめとした路線開拓に努めること。
    @臨港線経由の西宮浜と阪神甲子園駅を結ぶ路線の平日運行の実施を行うこと。
    A西宮市立中央病院を経由し、阪急西宮北口駅までの段上地域における路線の新規・増便をはかること。
    Bニテコ池周辺からJR西宮駅へ乗り換えなしで行ける路線も新たに設けること。
    C北夙川地域から阪急夙川駅、阪神西宮駅経由JR西宮駅への新規バス路線の整備を進めること。
    D苦楽園地域から阪急夙川駅への路線を整備すること。
    (2)さくらやまなみバスについては、市民生活にとって重要な地域公共交通であり、今後も、効率的な経営につとめ、市が責任をもって運行を継続させること。
    (3)生瀬地区を巡るコミュニティ交通「ぐるっと生瀬」について市は、その成功の要因を終始一貫して地域が主体となり、利用促進活動等に取り組んでいるからとしている。現在、名塩地域、苦楽園地域、甲陽園地域、山口地域などで自治会等が主体となって検討されているが、容易なことではない。
    コミュニティバス運行は地域住民まかせではなく市が主体性をもって進める
    こと。その場合に、運賃収入で不足する経費については単なる赤字ということではなく「地域を支えるための必要経費」という位置づけをしてとりくむこと。
    (4)西宮市内では、「乗り継ぎ」割引制度がないため、市民や高校生等の負担が大きくなっている。ハニカ定期券が発行されており割引制度が一定拡充されたが、普通乗車券も同様に、同一バス会社の乗り継ぎとともに、阪神と阪急を相互に乗り継ぐ場合も運賃が割引となるよう、市は関係者と協議を行うこと。
    (5)芦屋市や尼崎市など多くの自治体が実施している70歳以上のバス運賃半額助成制度(敬老パス)の創設を、高齢者の社会参加や福祉的観点から早急に実施に向け検討すること。

  18. 生産緑地は指定後30年で指定解除ができることになっている。最初の指定から30年となる2022年には大幅な生産緑地の解除が行われ、農地が大幅に失われる可能性がある。緑地保全等の観点から、次のことにとりくむこと。
    (1)国はいわゆるこの「2022年問題」対策として、生産緑地の貸し付け条件などの緩和を行なったが、十分な対策とはいえない。生産緑地に対するさらなる固定資産税や相続税などの優遇措置を行うよう、国に求めること。その場合、特に相続税については猶予期間の利子税が加算されることから、その軽減策を強く求めること。
    (2)生産緑地解除をしようとするときには、当該自治体に買取り申し出をすることができるが本市で今まで一度も買取りがなされた事例がない。また、自治体が買取りをしない場合には近隣農家などへの購入打診があるがこちらも買取り事例は皆無といっていい状況である。どちらも成立しなければ3か月を過ぎると自動的に解除されて開発へと進んでしまう。市に買取り申し出があった場合は市民要望の強い市民農園や公園などを整備するために、すぐに購入を検討できるしくみをつくっておくこと。