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2021年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:市民局
2020年08月31日


  1. 国民健康保険制度について
     2018年から財政運営における国保の広域化が行われ、保険料の統一化が今後進められようとしているが、現在は各自治体が県の示す標準保険料率を参考に保険料を決定している。1984年まで国が5割近くを財政負担していたものが年々減らされ、今では30%を切っている。このことが各自治体での保険料値上げにつながり、多くの自治体が一般会計から繰り入れをせざるを得ない状況を生み出している。
    2014年には全国知事会が政府に対し、国民健康保険制度の見直しに関する提言を発表し、被保険者の保険料負担は限界に近づいていると指摘の上、1兆円の公費投入で協会けんぽ並みに保険料を引き下げるよう求めるとともに、均等割についても廃止を求めている。保険料の負担軽減は喫緊の課題となっていることから、次のことにとりくむこと。
    (1)1984年以降減らされてきた国民健康保険会計への国庫負担率を元に戻すよう国に強く働きかけること。
    (2)国は、自治体が行っている保険料引き下げのための一般会計からの繰り入れを、目標年度まで決めてやめさせようとしていることから、市は新たな減免制度などを2020年度中に検討するとしている。その際には以下のことに取り組むこと
    @所得激減減免の対象を前年所得金額の5割以下から3割以下とすること。
    A2020年度から低所得者の保険料について、所得の19%を超えた分の4分の1
    を減免することにしたが、所得の19%を超えた分については全額減免とする こと。
    B家族の多い世帯の負担を減らすため均等割りの廃止をめざし、当面、特に18歳未満の第3子の保険料均等割を全額免除すること。
    (3)保険料滞納者や分納誓約者に対し,突然差し押さえの通知が送られるケースが増えている。年に一度は行なうとされている分納相談をはじめ機会をとらえ、ていねいな説明を行うこと。また、新型コロナウイルス感染症の影響で納付が困難な人が増えることが予想される。収入が昨年よりも30%以上減った方たちには減免・減額ができるが、その恐れがある場合も適用されることを周知し、納付相談にも丁寧な対応を行うこと。

  2. 中学3年生までの子ども(乳幼児等)医療費助成制度は全国的に増え、兵庫県内では高校生にまで対象を広げる自治体も増えている。また所得制限については、「子育て支援」として撤廃している自治体がほとんどである。中学3年生までの所得制限を撤廃すること。また、無償化の対象を高校生にまで拡大すること。

  3. 後期高齢者医療制度について
    (1)2008年度から実施された後期高齢者医療制度は、多くの高齢者に痛みを押し付けるものとなっており、当初は低所得高齢者の負担軽減策として保険料の特例軽減を導入していたが、国は2017年度から特例軽減も段階的に廃止している。廃止によって保険料が10倍になる人も生まれることから、全国後期高齢者医療広域連合会や兵庫県広域連合からも負担軽減の要望書が出されている。特例軽減については元に戻すよう県を通じ、引き続き要望すること。
    (2)現役並み所得者の窓口負担が3割になり、国は「全世代型社会保障」の名のもとにそれ以外の一定の収入のある高齢者の窓口負担を1割から2割に上げる方向を示している。国に中止するよう求めること。

  4. 平和の施策について
      今年2020年はアジアで2000万人、日本でも310万人近い人がなくなった先の大戦から75年となった。戦争を二度と繰り返さないためにも、戦争の悲惨さを知ってもらう活動や、戦争につながっていく動きに常に警戒をして警鐘をならしていくことが求められている。
      また、県下に先駆けて平和非核都市宣言をした西宮市が、核兵器廃絶に向けて全国や世界に向けて発信していく意義は大きい。
    平和行政として次のことにとりくむこと。
    (1)毎年8月15日の終戦記念日前に、市が原水爆禁止西宮市協議会などと取り組んでいる平和啓発活動は重要であることから、実施駅を増やすなど、取り組みをさらに広げること。
    (2)2017年に国連で可決成立した核兵器禁止条約は、条約発効に必要な50か国の批准まであと6か国の44か国となっている。核兵器廃絶は世界の大きな流れであるにもかかわらず、この流れに逆行するように日本政府は条約に反対している。国に対して核兵器禁止条約に署名・批准するよう求めること。
    (3)被爆者が初めて呼びかけた「核兵器禁止条約」の締結を求める国際署名は、核兵器廃絶のために実効性があるものである。西宮市原爆被害者の会でも積極的にこの署名に取り組まれていることから、様々な市のイベントなどでも署名に取り組んで協力すること。また、原水爆禁止西宮市協議会加入団体に対しても事務局である市が署名の協力を働きかけ、集約についても市が責任を持って行うこと。
    (4)毎年開催されている市の原爆展は重要である。従来はフレンテ西宮で開催されてきた原爆展が2018年以降アクタ東館2階に会場を変え開催され、来場者が増えていることから今後も継続すること。さらに、被爆の実相を伝えるこうしたとりくみを拡大・強化すること。
    (5)高齢化が進む中で戦争体験者がどんどん少なくなっている。全市域で西宮空襲などの体験を「語り部」として語ってもらう人を発掘するとともに、映像などに残して将来的に活用すること。
    また、体験者以外でも「語り部」を認定という形で育てている広島の例にならって、戦争や被爆の実相を語り継ぐ人を育てるとりくみを強めること。
    (6)平和資料館(川添町)はスペースが狭いために、資料がたくさんありながらも十分活用されていない。移転も含めて早期に拡張すること。展示内容については、市民から寄付をされたものが中心であるが、戦争の悲惨な実相を後世に伝える映像等、視覚に訴えるものを市民や専門家の意見を聞き、他の自治体などの事例も研究しながら充実させること。
    また、戦争に至る経過、日本の加害の事実や戦時下での市民の不自由な暮らしなどが小・中学生にもわかるよう展示等を工夫すること。
    (7)市役所前六湛寺公園の名称あるいは愛称を“六湛寺平和公園”とすること。
    (8)阪神甲子園駅西出口から球場に向かう広場にあった平和非核都市宣言碑がリニューアルされたが、植え込みの中の低い位置にあるためにわかりにくい。せめて高い位置に設置し直すこと。

  5. アメリカでは、白人警官による黒人男性殺害事件がきっかけとなり、改めて人種差別を含む人権に対する意識が高まり世界的な運動として広がっている。日本でもヘイトスピーチなど、他国の人たちを軽蔑する一部団体などの行動もある。市が策定した「第2次西宮市人権教育・啓発に関する基本計画」に基づいた啓発を行うこと。

  6. 「西宮市男女共同参画プラン」が策定されたが、様々な指標の数値目標を達成するための具体策が不十分である。市内の女性団体などの意見も聞き、さらに具体的な計画をつくること。

  7. 男女共同参画センター(ウェーブ)は男女共同参画社会の実現に向けての学習や交流の場として定着しつつある。その運営について次の点を改善すること。
    (1)ウェーブの認知度がまだ不十分である。市民の講座まかせにせず、市が積極的に広報を行うこと。
    (2)毎年取り組まれている「ウェーブいきいきフェスタ」は登録グループ等で構成する「いきいきフェスタ実行委員会」に委託実施され、今年で21回目を迎えた。参加する講座予算の増額を行うとともに、予算執行については実行委員会の主体性を損なわないようにすること。
    (3)DVや児童虐待が増えており、相談内容も複雑多様化していることから市では相談員を増やしている。さらに体制を強化すること。

  8. ジェンダー平等は世界的な流れになっているが、日本では一部の政治家はじめ、企業や地域でも十分理解がすすんでいない現状がある。性的マイノリティーの人たちを含めた差別解消や支援の推進等、一人ひとりの人格と個性が尊重される西宮市をつくるために、以下の項目にとりくむこと。
    (1)外国では認められる同性婚が日本では認められていないが、性的マイノリティーカップルを「結婚に相当する関係」と認定する自治体が増えている、本市も2021年4月からパートナーシップ宣誓制度を実施する意向を示しているが、年度途中でも実施している自治体もある。早急に条例化を行うこと。
    (2)公的書類の性別欄については、市は性別を把握しなければ事業そのものに支障をきたすような場合を除いては撤廃可能としている。早急に撤廃すること。
    (3)市の公共施設には誰でも利用できる「みんなのトイレ」を設置すること。

  9. 高齢化の進展に伴い、本庁まで来庁することが困難になっている市民が少なくない。
     以下の対応に取り組むこと。
    (1)このたびのコロナウイルスの対応においては、国民健康保険料などの納付相談では電話だけでなく郵送での対応を市は行った。他の窓口業務において、来庁が困難な高齢者などに、郵送などで対応できる業務を拡大していくこと。
    (2)市は支所機能の強化や支所の増加の方向も示している。出張所の増設を含め、身近なところで市民サービスを受けられるよう検討すること。

  10. 地域の集会施設について
    施設の総量縮減は公共施設マネジメントの取組みの一つだが、市民館、共同利用施設などはそれぞれの歴史的経過もちがうことから、安易な統合や廃止は行ってはならない。以下のことにとりくみ市民サービスを向上させること。
    (1)各施設の使用料については受益者負担という考えを導入し、多くの市民館で使用料が引き上げられた。こうした施設は市民のコミュニケーションをはかる、あるいは文化の向上にも寄与していることから今後は安易な引き上げは行わないこと。また、共同利用施設は有料化しないこと。
    (2)甲陽園地域では市民集会施設が市営住宅跡地で整備されることになったが、地域が広く傾斜地が多い。また、上ケ原地域についても地域が広く傾斜地が多い上に、集会施設が地域の端にある。地域の広さや勾配の有無などを考慮して、集会施設の増設を行うこと。
    (3)国道171号線以北の広田地域については市民集会施設の空白地であることを市は課題として認識している。早急に地域の希望を聞いて解決すること。
    (4)地区市民館や共同利用施設は利用が多い施設であることから、次のことに取り組むこと。
    @老朽化した空調設備については改善すること。
    A身体障がい者トイレの設置や男女共用トイレの分別とともに、洋式化(温水洗浄便座を含む)等、使いやすい施設に改善を進めること。
    B老朽化による大規模改修や建て替えも含め、全施設の改善計画を策定しているが早期にすすめること。
    (5)市民館、共同利用施設の視聴覚設備についてはWI-FI環境の整備を行うとともに、最新のマルチメディアに対応できる機器を配備すること。

  11. マイナンバー制度について
    国が行政の効率化、国民の利便性の向上、公平・公正な社会の実現のために導入したとしているマイナンバー制度は、様々なデータを一元化して国民を管理監督しようとするものである。また、政府が進めるマイナンバーカード普及については、膨大なデータの情報漏洩の懸念から進んでいない。今後はカードを国民健康保険証代わりにできるようにし、さらに銀行口座に紐づけすることも検討されている。
    日本弁護士連合会も個人のプライバシー権の侵害になることを指摘していることから、マイナンバーカードの普及を積極的に行わないこと。