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2021年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:こども支援局
2020年08月31日


  1. 幼児保育現場における新型コロナウィルス感染症対策として、以下のことを要望する。
    (1)幼児保育現場において「3密」は避けられないが、少しでも密を避け、保育士の負担を軽減していくためにも、保育士配置基準の見直しを行い、増員を図っていくことは急務である。本市では運用により一定の配置基準の拡充を行っているが、この際条例化に踏み出し、さらなる拡充を実現すること。
    (2)常に感染リスクを抱えながら働いている保育士に対して、慰労金を支払うこと。
    (3)保育所の利用者・職員・出入り業者等が定期的かつ必要に応じてPCR検査を受けられるようにすること。
    (4)学校現場では各校に清掃や消毒等を担うスクールサポートスタッフが配置されることが決まったが、保育現場においてもサポートスタッフを配置すること。

  2. 全国各地で保育所待機児童解消は社会問題となっているが、本市でも2020年4月1日現在の利用保留児(潜在待機児童)数が936人にものぼり、引き続き重大な課題である。待機児童問題について、以下要望する。
    (1)民間まかせにせず、公立の保育所や分園も増設し、定員を増やすこと。
    (2)保育所に申し込みをしたが入所できなかった子どもたちがどのような実情にあるのかを調査し、適切な対策をとること。
    (3)2020年8月の所管事務報告において、市の保育所待機児童対策として、2021年度から1〜3歳児を対象とした「特区小規模保育事業」をスタートさせ、2022年度からその連携事業として市立幼稚園の4,5歳児クラスで預かり保育を行う計画が発表された。しかし、1〜3歳までの成長の幅は大きく「特区小規模保育事業」で適切な保育が行われるのか懸念があり、また市立幼稚園の預かり保育事業もあくまでも「預かり」であり、十分な保育の質を保つことができるのかは甚だ疑問である。この際、保育の質を保ちつつ待機児童を解消する策として、市立幼稚園の認定こども園化を検討すること。

  3. 2019年10月から幼児教育・保育の無償化が実施され3歳〜5歳児の保育料は無償となったものの、給食費は年収360万円以下、全世帯の第3子以外は実費徴収となっている。独自で無償化を実施している自治体に倣い、本市でも独自に助成し無償とすること。

  4. 保育士不足が各地で深刻になっている。解決のためには、賃金が全職種の平均を月10万円余り下回っているなどの低待遇の改善が不可欠である。本市では2018年度より「保育士奨学金返済支援事業」を開始しているが、保育士不足を改善するという目的に照らして不十分と言わざるを得ない。給与の上乗せや家賃補助、通勤手当の支給など、抜本的な処遇改善策を進めること。

  5. 市立保育所、保育事業について、以下のことを要望する。
    (1)芦原むつみ保育所は2018年4月に定員150人でまず開所された。しかし、最大で210人まで増やす、大規模化への懸念を顧みない定員増の方針はそのままとなっている。新型コロナウィルスの影響がいつまで続くかわからない中で、密状態を生み出す定員増の方針は見直すべきである。保護者や保育士の意見を十分汲み取り、一方的で安易な増員はしないこと。
    (2)待機児童がなくなり定員の弾力化が解消されれば公立保育所3か所を民間移管する計画になっており、実際に今津文教保育所の廃止が決められてしまった。保育における公的責任を考え、公立保育所民営化はきっぱりと撤回すること。新たな保育所民営化は行わないこと。
    (3)虐待や貧困などの影響を受けている子どもや、親自身が特別の支援を必要とするケースが増えている。特にコロナ禍においてそのような家庭が増えているという報道がある。市保育所事業課の保健師や保育士等が、市要保護児童対策協議会と連携して対応しているとのことだが、これまで以上にとりくみを強めること。また、虐待など問題をキャッチできるのは現場の保育士である。研修を強め、適切に対応できるようにすること。
    (4)自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で、給食調理員の過重負担がある。調理員の増員をはかること。
    (5)誰もが利用できる一時預かり(一時保育)を公立保育所でも実施すること。対象を限定して実施されている現行の「スマイル保育(一時保育)」事業を他の保育所にも拡大すること。
    (6)民間保育所や保育ルーム等に対し、保健指導等のための巡回指導など、保育の質を高めるための支援策が実施されているが、いっそう強化すること。

  6. 子育て広場の設置目標を小学校区に1か所へと拡充すること。

  7. 学童保育(留守家庭児童育成センター)は、保護者が昼間家庭にいない子どもに、授業終了後および学校休業日に、専用施設を利用して適切な遊びと生活の場を与え、その健全な育成を図る事業である。また、指導員には子どもの安全を守り、適切な指導で発達を保障する専門職としての重要な役割がある。市として次のことにとりくむこと。
    (1)新型コロナウィルス対策として、指導員の配置基準の見直しを行い、増員を図ること。そして各校でのセンターの数も増やし、子どもたちが密になりにくい環境を整えていくべきである。そのための取り組みを進めること。
    (2)常に感染リスクを抱えながら働いている学童指導員に対して、慰労金を支払うこと。
    (3)安井育成センターで新型コロナの感染者が出た際に濃厚接触者以外にもPCR検査の対象を拡げたが、さらに体制を強化し、学童保育の利用者・職員・等が定期的かつ必要に応じてPCR検査を受けられるようにすること。
    (4)現在学童保育は公募による指定管理者制度により運営されており、株式会社も指定管理者として参入している。しかし、新型コロナウィルスのような緊急時に指定管理者で十分な対応ができるかどうかは甚だ疑問である。あくまでも学童保育事業の最終責任者である市が、いかなる場合でも責任をとること。
    (5)幼児保育事業と同様に営利はなじまないが、2020年度より民設民営学童の運営がスタートしている。運営状況を注意深く観察し、くれぐれも子どもたちに不利益が及ばないよう指導していくこと。そして、今後の民設民営学童の増設はやめること。

  8. 児童虐待や育児放棄などは、年々増加の一途である。特にコロナ禍において、全国的に虐待が増加しているという報道がある。市では子供家庭支援課を虐待問題等の窓口として対応しており、家庭児童相談員の一定の増員も図られているが、さらに児童福祉司や臨床心理士などの専門職も増員し、早急に体制を充実させること。そして、児童相談所の設置へ向けて動き出すこと。

  9. 「子育て支援の拠点」として児童館・児童センターを位置づけるのなら、当然直営を守るべきである。あわせて、休日の開館や、地域偏在の解消・増館についても進めること。

  10. 厚生労働省が実施した国民生活基礎調査によると、子どもの貧困率は13.5%(2018年)で、子どもの7人に1人が貧困状態にあり、深刻な状態にある。特にコロナ禍において失業者が増えており、貧困率がさらに高まっている可能性は高い。市では「西宮市子ども・子育て支援プラン」の中に「子どもの貧困対策計画」が盛り込まれ、学習支援などを実際に行っているが、まだまだ十分とは言えない。現行の計画を確実に実行するとともに、医療支援を追加するなど、さらなる拡充を図ること。

  11. 市内の少なくとも12ヵ所ですでに運営されている「子ども食堂」が、子どもとともに親や地域の人たちの居場所づくりとしても期待され、発展している。運営している民間各団体の自主性を尊重しつつ、関係者の意見も聞いて必要な支援を行うこと。また、新型コロナウィルスの影響により、今後運営が途絶えてしまわないよう、十分かつ継続的な支援を行うこと。