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野口あけみの反対討論
2021年03月24日

議員提出議案第7号 市長の専決処分事項の指定の件について


 議員提出議案第7号 市長の専決処分事項の指定の件 について、日本共産党西宮市会議員団は反対します。以下、討論を行います。
 専決処分は、本来、議会の議決・決定を経なければならない事柄、これは地方自治法第96条で定められていますが、この事柄について、地方公共団体の長が地方自治法の規定に基づいて、議会の議決・決定の前にみずから処理することを言います。議決しなければならない事件には、条例の改廃や予算の議決、決算認定などとともに、訴えの提起や、和解、あっせん、調停、損害賠償の額決定など15事件が具体的に挙げられており、専決処分は、あくまで例外だということが重要です。これは先ほどの本会議質疑で提案者も認めておられます。

 この度、提案されているのは、地方自治法第180条、「普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものは、普通地方公共団体の長において、これを専決処分にすることができる」、にもとずく専決処分事項の指定に、@市営住宅等の家賃等の支払い及び明け渡しの請求にかかる訴えの提起、和解及び調停、A100万円以下の金銭債権にかかる訴えの提起を追加しようとするものです。
 これはいずれも市民に対する訴えの提起であり、私たちはとてもではありませんが、軽易な事項とみなすことはできません。

 2015年12月議会においてUR借り上げ市営住宅の明け渡し及び家賃相当額の損害金支払いを求める訴えの提起が、議決事件として提案され審査されました。詳細の説明は省略しますが、マスコミも注目する阪神淡路大震災から20年経過してもなお解決が図られていなかった大きな本市の課題でした。本会議建設常任委員長報告によれば、「各委員から訴訟を起こす前にもう少し当事者間で話し合うべき等の意見が出たため」、採決の結果、全会一致で「継続審査」となりました。そして、翌2016年3月議会で、同議案は日本共産党西宮市会議員団、無所属議員以外の賛成多数で採択されましたが、同時に、「訴訟手続きと並行して、引き続き代理人による協議を継続すべき」との内容の付帯決議が全会一致で採択されたのであります。
 市民に対する訴えの提起に関して、このように議会らしい徹底審査が行われたのは、専決処分とせず、議決事件としているからです。提案者は、専決処分とはいえ、後に議会への報告が義務付けられているため、当該訴訟に関して議員が意見を述べる機会は担保されていると主張されていますが、後に意見を述べてもその結果を覆すことができないのです。
 (よつや議員の質疑にもあった通り)、西宮市議会基本条例の基本理念や責務である、議会の活性化、議会と市長との健全な牽制関係、行政執行の監視という観点からも、専決処分事項の拡大はすべきではありません。

 また、過日、金銭債権にかかる訴えに関して提案者から、訴訟による有効な結果が見込まれる場合に限定して実施するもので、議決事項の見直しが訴訟の乱発・濫用につながる可能性は極めて低いなどとする論点メモをいただきました。しかし、当局が新年度か導入する予定の「標準的な債権管理事務モデル」では、これまで各所管でばらばらだった債権管理を、マニュアルにもとづいて実施し、滞納繰越後は原則、法的手続きによって対処しようとしています。現状では市民に対する債権管理では市営住宅家賃と災害援護資金貸付以外は、ほとんど法的手続きを取ってこなかったわけですが、財産調査権のない学校給食費や育成センター使用料などの私債権も、有効な結果が見込まれる、つまり差し押さえができるのならば訴えようというのです。提案者の言い分をうのみにすることはできません。
 以上の理由で、本議案に反対いたします。