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野口あけみの反対討論
2021年04月09日

議案第302号、議案第303号、議案第304号、議案第307号、議案第308号について


 ただいま上程中の諸議案うち、
議案第302号 令和3年度(2021年度)西宮市一般会計予算、
議案第303号 2021年度西宮市国民健康保険特別会計予算、
議案第304号 2021年度西宮市食肉センター特別会計予算、
議案第307号 2021年度西宮市介護保険特別会計予算、  および、
議案第308号 2021年度西宮市後期高齢者医療事業特別会計予算
について、日本共産党西宮市会議員団は反対いたします。
 以下、討論を行います。

 昨年年初から今日に至るまで、世界中日本中が新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)に翻弄され続け、現在もなお進行形です。よってまず、コロナについて語らずにはおれません。

 関西3府県は3月1日に、首都圏も3月21日に緊急事態宣言が解除されましたが、新規陽性者数は「下げ止まり」どころか増加傾向、また、感染力が強いとされる変異株の流行も重大な懸念材料であり、感染再拡大(リバウンド)や第4波の危険も指摘されています。昨年11月ごろからの第3波においては、医療壊滅といわれるところまで追い込まれました。陽性者が病院や宿泊療養施設にさえ入れず、最高時には全国で4万6千の人もの人が自宅療養を余儀なくされ、急変で死亡する事態まで起こりました。本市でも、ピーク時には、100名もの方が自宅待機や施設留め置きとなっていました。保健所も業務がひっ迫、通常時の7倍の人員を配置しても連日深夜までの勤務が続き、職員の疲弊は相当のものだったことでしょう。
 こうした事態を二度と繰り返さず、現状を打開するには、コロナを封じ込めるために無症状者を発見・保護するための大規模検査が必要です。3月5日改定の政府基本的対処方針には、高齢者施設に対する社会的検査とともに、「再度の感染拡大の予兆や感染源を早期に探知するため、幅広いPCR検査等(モニタリング調査)やデータ分析を実施する」と新たに明記されました。無症状者に焦点を当てた「幅広いPCR検査」の実施が明記されたことは一歩前進ですが、「1日1万件」の目標ではあまりに規模が小さすぎます。感染拡大の予兆や感染源を早期に探知するためというのであれば、少なくともその10倍、「1日10万件」の桁での大規模検査の実施にかじを切ることが必要です。
 こうした観点からわが党は、3月12日、菅首相あての「緊急要請 コロナ封じ込めのための大規模検査を」という3項目の緊急要請文書を西村経済再生担当相に手渡しました。この内容は政府に向けたものですが、本市においても早急に具体化をはかり、取り組むべき課題について、述べます。

 1つめは、社会的検査についてです。本市ではこの3月より希望する市内介護施設、障害者施設、介護サービス事業所等の従事者約15,000人を対象に、当面、週200人のペースで抗原検査が実施されることとなりました。19日現在、対象1630施設のうち51施設698人が4月中旬までに実施予定とのことでした。施設で3.1%、従事者では4.6%と本当にわずかです。
 重症化リスクの高い場所への社会的検査については、政府コロナ対策本部分科会尾身会長が、「感染対策のうえで非常に意味がある」「今、高齢者施設でやっているが、福祉施設や医療機関などにも同じようにやっていけばいい」「この検査は1回だけやるのではほとんど意味がない。定期的に続けてやるのが極めて重要だ」と、国会でのわが党小池参議院議員の質問に答弁しています。
 新規陽性患者数が一定低減している今こそ、現在本市が対象としている施設・事業所に対しては、検査を受けるよう積極的に勧奨すべきです。そして、検査対象を新規入所者や、医療機関、保育所等にも拡大し、頻回、定期的に実施することを強く求めます。

 2つ目は、「感染拡大の予兆」や「感染源の早期探知」につながるモニタリング検査を実施することです。本市においてどのような集団や地域を設定することが妥当か、現時点で私は答えを持ち合わせていませんが、市ではぜひ専門的知見をもって検討していただきたいと思います。ただ、少なくとも、濃厚接触者となった方の同居家族、陽性者と接触があったが濃厚接触者とは判定されなかった方など、感染を疑い不安にかられる市民が少なからずおられます。なかには自費で検査を受けておられる方もありますが、こうした方々も検査の対象にすべきです。検討を求めます。

 3つ目は、変異株の疑いを確認するサーベイランス検査の割合を大幅に引き上げることです。神戸市では市の持つ衛生研究所において、新規陽性者の7割に変異株の有無を調べるPCR検査とゲノム解析を実施し、その39%で変異株が検出されています。本市では、こうした解析を進める術はなく、PCR検査の中で一定変異株が疑われる検体については国県の指示により、加古川にある県立健康科学研究所に送付、解析しているとのことでした。国が対象としているのは、全陽性者の5〜10%に過ぎず、これを神戸市並みに引き上げることが必要です。国や県にぜひ要請していただきますよう要望します。
 保健所は業務ひっ迫の中でもよく奮闘されておられ、何度敬意を表しても足りないと思っているのですが、検査に関しては、ほとんど国の方針の範囲を出ておらず、積極性に欠けると感じています。本気でコロナ封じ込めのために、やれることをやり、言うべきことを言っていただきたい。検査については以上です。

 ワクチンについても一言申し上げます。ワクチンはコロナ終息に向けた有力な手段の一つですが、順調に進んだとしても社会全体で効果が表れるには一定の時間を要します。決してワクチン頼みとなってはなりません。ましてや、接種スケジュールは当初の予定から大きくずれ込み、先行き不透明です。副反応の情報などを含め、適切に情報を公開し、実施されるよう求めます。

 人との接触を避けるための外出自粛、文化的あるいは芸術的な行事や活動の自粛、また、国や自治体による営業に対する自粛要請等々によって、日本経済全体、雇用や市民の生活全般に多大なる影響が続いています。自治体として、感染拡大防止策のみならず、雇用、経済、生活支援が不可欠ということは、市長も施政方針で述べられました。問題意識は共有できていると思っています。その質と量が問われます。
 国の3次補正によるコロナ対応地方創生臨時交付金を活用した市独自策の補正予算提案がこの後ありますが、わが党は、予算分科会等で、再度の水道料金減免や、この3月で終了とされている小中学校スクールサポートスタッフの引き続きの確保、これまで全く対象になっていない保育士や育成センター指導員への慰労金支給などを求めました。これらを含め、引き続き必要な施策、有効な施策を急ぎ研究検討し、連打されることを求めます。

 2点目は、西宮市行政経営改革についてです。今年度から2022年度までの前期実行計画が開始されています。市民に開かれた市役所へ(オープン)、合理的で無駄のない市役所へ(スマート)、市民から信頼される市役所へ(リライアブル)の3つの視点を掲げていますが、 前期実行計画における具体策は、行政のあらゆる分野において、業務の効率化(スマート)ばかりに偏っていると考えます。
 もちろん、地方自治法が言うところの「最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」ことは当然でしょう。しかし、効率化、最適化などを強調しすぎ、そのことばかりに熱中することになれば、地方自治の本旨である、「住民の福祉の増進」のために業務を進めるという本来の職員の職責から離れはしないか、懸念するところです。
 とりわけ、今議会では、保育所の民営化、民間移管が議論の一つの焦点となりました。民間でできることは民間で といいますが、これは公民の給与など待遇の格差を前提とし、当然としたうえで、安上がりで済まそうということです。むしろ、全産業と比較して月10万円も低いとされる民間保育所保育士の処遇改善にこそ目を向け、国も自治体もその実現のために奮闘すべきです。そして本市では保育ビジョンを策定することになっていますが、保育の質を全体として向上させていくために、公立保育所が範を示していくべきです。
 この行政経営改革については、引き続き注視していきたいと思います。

 3点目は、市役所のICT化、「自治体デジタルトランスフォーメーション」「自治体DX」に関してです。菅首相肝いりのデジタル改革関連法案の審議が始まっていますが、その問題点が早くも浮き彫りになっています。関連法案は6本の法案からなり、うち1本の整備法案には、59本の法改定案を詰め込む膨大なものですが、関係資料には45か所もの誤りが見つかるなど、拙速な対応、国会での審議や国民的な議論を軽んじる対応が際立っています。
 これら法案は、自治体にも深くかかわる内容です。自治体情報システムの標準化・共通化については、私の代表質問でも指摘したように、自治体の業務内容を国のシステムに合わせていく問題を引き起こし、地方自治を侵害する恐れがあります。当局も、この点では「自治体が独自に設けている制度運用に係る機能に対して、どこまで対応できるか不明なこと」が懸念材料だと明言されています。
 また、法案には、個人情報保護法の改定も含まれています。これは、現在は、民間、行政機関、独立行政法人の3つに分散して規制している個人情報保護法を統合し、地方自治体の保護条例も一元化しようとするものです。つまり分散管理されている個人情報を、集中管理に変え、本人の同意なしに個人データを利活用しやすくしようとするものであり、大問題です。 
 基本法案の基本理念にそもそも「個人情報保護」の文言がありません。いま、対話アプリLINEの利用者情報が漏えいし露出していたことが発覚し、本人同意の在り方なども問われています。個人情報は個人の人格尊重の理念のもとに慎重に扱われるべきであり、情報の自己コントロール権を保証する仕組みこそ求められています。
 行政手続きのオンライン化では、紙や窓口を利用した対面サービスが後退するのではないか、という問題も重要です。コロナにおける持続化給付金などではデジタル申請のみとされ、対応できない事業者が多数生まれました。本市では、その支援策をとらざるを得ませんでした。デジタル化で「無人窓口も実現可能ではないか」と主張する総務省幹部もいます。
 市は、代表質問への答弁で、「来庁が必要な方、希望される方のために、従来の対面の窓口をなくすことはございません」と明言されましたが、この立場を堅持されるよう求めます。
 デジタル化推進のカギに位置づけられているのが、現在、税、社会保障、災害対策に限定されているマイナンバーの利用範囲の拡大です。法案では、医師、看護師免許に関する事務や保育士の登録など国家資格保有者に関する業務をマイナンバーで行えるようにします。預貯金口座に関する二つの法案は、公的給付金の受給者をはじめとして銀行口座のマイナンバーへのひも付けを促進します。膨大な個人データが国に集まります。そして市では、市民のマイナンバーカード取得を進めようと躍起になっています。なかば強制ともいえるような動きには反対です。
 以上のように、デジタル関連法案は、個人データの利活用推進を優先し、住民サービスの低下や地方自治への介入、個人情報保護体制の後退などを招く内容となっており、多くの学者、弁護士などがその危険性を指摘しています。わが党も、デジタル関連法案は国民にとって「害」しかないと言わざるを得ず、拙速な審議で成立を図ることは許されないと考えます。徹底審議し、廃案をめざすことを表明いたします。

 4点目 保育所待機児童対策についてでは、特区小規模保育事業ならびに連携公立幼稚園事業に反対です。
 特区小規模保育事業はこの4月1日からの開園に向け準備が進められていますが、実際にこの特区小規模保育を希望する保護者が現時点ではとても少ないということが明らかにされました。待機児童が非常に多い地域に設置したにもかかわらずです。この事実に対し当局は、「初年度なので様子を見ている保護者が多いのではないか」と説明していますが、私たち党議員団が指摘してきた通り、保育の質の面で不安を抱いている方が少なくないということではないでしょうか。このような現状であるにもかかわらず、市は新年度に新たに9カ所の特区小規模保育所を設置する予算を組んでおり、言語道断です。私たちは0〜5歳の子どもたちを安定して預かることのできる認可保育所の増設を求めます。

 5点目、留守家庭児童育成センターの待機児童対策として、放課後キッズルームを受け皿にしようとしていることは問題です。育成センターの待機児童対策は、育成センターの増設で対応すべきです。放課後の子どもたちの自由な遊び場として放課後キッズルームを整備していくことには意義があり、進めるべきですが、育成センターの役割とは全く別のものです。放課後キッズルームの導入・拡大により、育成センターの整備が抑制されることのないよう強く求めておきます。

 6点目 こども医療費助成制度はようやく所得制限が一部緩和され、少し前進しました。しかしなお中学3年生までの子どもたちのうち17%の子どもたちが対象外です。85%の自治体が所得制限なしで実施しているという全国の水準からずいぶんと遅れているといわざるを得ません。私たちは引き続き、所得制限撤廃と高校卒業までの医療費助成制度の実現をめざしていくものです。

 7点目 健康ポイント制度について
 2021年10月より開始される健康ポイント事業は、市内在住の70歳以上の高齢者を対象に、高齢者の社会参加、健康増進、介護予防、健康寿命の延伸を目的とし、歩数計及びスマートフォンを使用して、歩数に応じ獲得したポイントを商品券等の景品と交換する事業です。
 この事業は、電鉄会社3社の協力が得られなくなったとして今年度が最後となった高齢者交通助成制度に代わるものですが、これまでは8割以上の高齢者が利用していた事業が、他市の事例から見ても1割程度の利用しか見込まれないものとなっており、多くの高齢者から「残念」との声が寄せられています。市は議会からの声もあり、高齢者バス制度と福祉タクシーの拡充を合わせ実施することとしましたが、それでも利用見込みは高齢者の3割程度です。引き続き、タクシー利用などへの拡充を求めます。
 また、健康ポイント事業では、歩いた人とそうでない人の医療費を分析し、事業効果を測るとして、国民健康保険のデータを使うとしています。しかし、国保のデータは医療機関の受診履歴や既往症、服薬の状況等、たいへん繊細な個人情報です。当局は、個人を特定するような収集や活用はしないと説明していますが、ポイント事業を管理運営する株式会社に個人情報が漏洩しないか、懸念があります。データの利活用において個人情報をどのように守っていくのか、先ほども指摘しましたが、この事業においても危惧されることを重ねて申し上げます。

 その他、各分科会でわが党議員団は、小学校体育館への早期エアコン整備、加齢性難聴となった視覚障害者への補聴器補助、LGBT相談窓口の設置など具体的に求めてまいりました。これらについても実現に向けて検討されるよう求めます。

 次に特別会計予算について順次、反対討論をおこないます。
 議案第303号 2021年度西宮市国民健康保険特別会計予算については、先の日程で述べたとおりの理由で反対です。

 次に、食肉センターについては、私たちは長年、一般会計から多額のお金をつぎ込むことに反対し、センターの民営化や廃止を求めてきました。新年度の予算では新たに一般会計から1億9400万円の繰り入れだけでなく、現在2台ある小動物の皮剥ぎ機のうち老朽化した1台を4400万円の債務負担で購入、あわせて2億3800万円がつぎ込まれることになっています。
 2019年度の民生常任委員会は、食肉センターを施策研究テーマとし、昨年5月21日にそれぞれの委員からの意見を取りまとめ、当局に提出しました。
 この報告書では、多くの委員から一般会計から多額の市税をつぎ込むことの問題が指摘され、また、このセンターで加工された肉の多くが市外で消費されているということから、県や国が関与して広域的に位置づけにするべきという意見も出されています。このまま市税投入を続ければ、いずれ施設の建て替え時期が到来し、その際にはさらなる多額の市税投入が避けられなくなります。以上のことから、議案第304号 2021年度西宮市食肉センター特別会計予算について反対するものです。
 
 次に、議案第307号 2021年度西宮市介護保険特別会計予算についてです。
 2021年4月から始まる第8期介護保険事業計画では、1号被保険者の保険料については基金等を取り崩し、第7期と同額の基準額5600円に据え置かれました。
 一方、特別養護老人ホームに入所した際に、自己負担となっている食費や居住費について、低所得者に対し、食費・居住費を補助する補足給付制度が、第8期計画で変更、改悪されることとなりました。年収120万円の高齢者では、食費の実費負担が月額2万円から4万2千円に、2.1倍となります。
 さらに、単身で1000万円、夫婦で2000万円の預貯金があれば、低所得者であっても補足給付の対象外とされていましたが、預貯金の額が年金収入に応じて単身では650万円〜500万円に下げられました。これは、これだけの貯金額があれば、特養入所後15年間はこの貯金を取り崩しながら生活できるでしょうとの国の説明です。
 そもそも補足給付は住民税非課税世帯の低所得者が対象で、その貯蓄というのはそれこそどれだけ努力苦労をして築いたことでしょう。せめて葬式代にと貯めたものではないでしょうか。国は、貯金がなくなれば補足給付の対象になるといいますが、まさに、身ぐるみはぐような改悪です。
 さらに、高額介護サービスの自己負担額の上限月額は現在、年収383万円以上は4万4400円ですが、収入を3段階に分け、年収約383万円〜年収約770万円はこれまで通り4万4,400 円とし、年収約770万円〜1160万円は9万3000円に、年収1160万円以上は14万100円までに上げ、負担が増えます。このようにこのたびの第8期計画における国の見直しは、高齢者に負担を押し付ける改悪であり、反対です。

 次に、議案第308号 2021年度西宮市後期高齢者医療事業特別会計予算についてです。
 国は、世論に押されこの制度の発足時から均等割りの8.5割軽減、さらにその翌年度からは9割軽減を行ってきました。しかし、この均等割りにおける特例軽減を、2019年度から順次本則の7割軽減に戻しており、新年度2021年度からは、残っていた7.75割軽減の方も本則の7割軽減になってしまいます。これにより、9981人の高齢者の保険料が引きあがることになり、この予算に反対するものです。
 あわせてこの制度における窓口負担は、現役並み所得とされる年収373万円以上の高齢者で3割、それ以下の収入の方は1割負担です。しかし政府与党は、単身で年収200万円、夫婦とも75歳以上の場合は合計320万円以上の高齢者について2割負担にすることを昨年末に閣議決定し、関連法案を今国会に提出、審議が始まろうとしています。実施は、2022年の参院選後とし、全国で370万人、20%、兵庫県では22.2%と推定され、これを当てはめると本市では11700人の高齢者の窓口負担が2倍にされようとしているのです。
 現行の1割負担でも75歳以上の高齢者は、年収比で若い世代の4〜6倍も負担しています。負担を苦にした受診控えに、コロナによる受診控えが重なっています。そこに負担増の追い打ちは、さらなる受診控えを招きます。こんな冷酷な政治はありません。政府自身が掲げる「人生100年時代」の看板にも逆行します。政府の病床削減推進法案と合わせ、この高齢者医療2倍化法案については、国民的運動で阻止したい、その先頭に立つことを表明し、討論とします。