野口あけみの一般質問/* --項目挿入-- */?>
2021年09月06日
障害者権利条約のもとでの視覚障害者等への支援について障害のある人もない人も同じように、当たり前の権利と自由を認め、社会の一員として尊厳をもって生活することを目的とした国際連合(以下、国連)の「障害者の権利に関する条約」=障害者権利条約は、2006年に採択され、2008年、発効しました。この条約は、「nothing about us, without us」=「私たち抜きに、私たちのことは決めないで」というスローガンのもと、権利の主体である障害当事者が加わってつくられました。また、新たに障害者のための権利を定めたものではなく、今ある基本的な人権や自由を障害者が有することを改めて保障したものです。 我が国は、2013年11月に国会において同条約の締結が承認され、2014年1月、国連に批准書を寄託し、141番目の締結国となりました。2006年の採択からずいぶんと時間がたっての批准となったのは、障害者団体が「待った」をかけたからです。それまでの国内法が条約の精神と程遠いものであったため、まずは国内法の整備を進めることとなったのです。その後、障害者基本法の改正、障害者総合支援法の制定、改正障害者雇用促進法、障害者差別解消法などの国内法の整備を経て、初めて批准の運びとなりました。 さて、障害のある人もない人も同じように、当たり前の権利と自由を認め、社会の一員として尊厳をもって生活するという理念や、障害者を差別してはならないという考え方は日本社会に行き渡っているでしょうか。残念ながら、障害者や、経済的社会的弱者を劣ったものとする差別偏見はいまだに根強く残っているのではないでしょうか。2016年、神奈川県相模原市の障害者施設で、「障害者は不幸しか作らない。だから安楽死させてもいいんだ」という発想から障害者を殺傷する事件が起き、衝撃を与えました。また、先日あるタレントがネット配信でホームレス等への差別偏見発言を行いました。すぐさま大きな批判を浴び、謝罪撤回することにはなりましたが、こうした極端な優生思想はなくなっていません。 すべての人が人間として尊重されるべきという理念の浸透も、そのような社会の実現も、不断の努力抜きには果たせないということを改めて思い知らされました。これは、すべての人と社会に課せられた課題です。 条約では、こうした意識としての「差別」とは別に、障害があるために結果としてやりたいことが制限されたり、社会参加ができないことも「間接差別」とし、障害者が障害のない人と同じような権利や自由を行使するときに必要とされる適切な変更や調整を行うこと、その際には相手側に過度の負担を課さないこと。これを「合理的配慮」と定義し、それを社会に求めています。 すなわち、条約第5条3項で、締約国が、「平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な措置をとる」とされ、これは、締約国に合理的配慮を提供するための適切な措置を義務付けているということです。 本市でもこうした背景の下、2020年7月、「西宮市障害を理由とする差別の解消及び誰もが暮らしやすいまちづくりの推進に関する条例」を制定、施行しました。 これらを前提に、ここ数年にわたり私たち党議員団が、求めに応じて実施している市内の視覚障害者団体の方々との懇談や、個人の方から寄せられた要望をもとに、4点について質問します。 1,日常生活用具給付の拡充について 日常生活用具給付は、原則として在宅の障害者等に対し、移動用リフトや電磁調理器、音声式の体温計、体重計、点字器などなどの日常生活用具を給付することにより、日常生活の便宜を図り、その福祉の増進を図ることを目的としている事業です。対象や対象年齢、基準額、耐用年数などが決められており、低所得者を除いて1割負担です。 これは、障害者総合支援法による障害福祉サービスのうちの地域生活支援事業の必須事業で、地域生活支援事業は各自治体が地域の実情に応じて、創意工夫によって事業の詳細を決めるとされ、自治体によってその給付内容には違いがあります。本市に対し、視覚障害者団体や私たちからも、現在は給付種目ではない音声血圧計の追加と、給付種目である点字ディスプレイについては、「視覚障害聴覚障害とも2級以上の重複障害者で18歳以上」としている対象を、他市のように「視覚障害2級以上の単一障害者」に広げることを要望していますが、実現していません。 私は、議会事務局の協力を得て、周辺市と中核市の同事業の実施要綱を取り寄せ、音声血圧計と、点字ディスプレイの2種目のみに着目しチェックしました。その結果が配布している資料です。最終ページにまとめを記載していますが、神戸市と、西宮を除く阪神間6市1町、丹波市、丹波篠山市の周辺10市町のうち、音声血圧計を支給種目としている市は、神戸市と川西市のみ、点字ディスプレイを視覚障害単一で支給している市も同じ2市のみです。残り8市町は、西宮市と同水準でした。 一方、中核市では、西宮を除く61市中、音声血圧計が支給種目なのは、32市で半数を占めます。点字ディスプレイの視覚障害単一での給付は、47市で、77%です。本市と同水準の中核市は、8市のみです。明らかに西宮市と阪神間各市は後れを取っています。 質問です。 @なぜ、西宮では当事者からの再三の要望に関わらず、音声血圧計の追加と点字ディスプレイの視覚障害単一での支給が実現していないのでしょうか。その理由をお聞きします。 ぜひ、追加、改善すべきですが、いかがですか。 A2014年の障害者権利条約の批准以降および、2020年の「西宮市障害を理由とする差別の解消及び誰もが暮らしやすいまちづくりの推進に関する条例」制定以降、日常生活用具給付等事業における種目や対象などは拡充されたのでしょうか。あればその内容を聞かせてください。 B神戸市では、同事業の対象となる用具の種別等の追加や変更は、医師や理学療法士等からなる「神戸市日常用具費支給事業運営検討会議」の意見を聞き適切な運用に努めているとしていますが、本市における給付内容の検討、決定はどのようになされていますか。また、日常生活用具は日々進化を遂げています。当事者や専門家の意見をきき、給付内容を改善させていくため、神戸市のような仕組みを作るべきだと考えますがいかがでしょうか。 2、補聴器購入補助制度の創設を 補聴器購入の助成制度を持つ自治体が全国に増え続けています。現在少なくとも43市区町村で高齢の難聴者が補聴器を購入する際に費用の一部を助成する制度が実施されています。東京都千代田区では、高齢者だけではなく、聴力レベルが片耳40デシベル以上で、聴覚障害手帳を所持していない区民も対象にしています。 国の「新オレンジプラン」では、認知症発症の危険因子の一つに難聴をあげ、世界保健機構(WHO)も中等度(41〜69デシベル)の難聴者には補聴器の装着を推奨していますが、補聴器が高額なことから購入をためらう人が多数います。2019年12月、西宮市議会でも、加齢性難聴者の補聴器購入に対する補助制度の創設を国に求める意見書が全会一致で採択されていますが、国の制度創設を待つことなく本市独自で助成制度創設にぜひ早期に踏み出していただきたいと思います。 本日、私は高齢者全般ではなく視覚障害の難聴者に限っての制度創設について質問いたします。視覚に障害を持つ方は、聴覚によって得る情報が多くなりますが、年齢を重ねること等で難聴となると、情報を得ることが圧倒的に困難になります。また、コミュニケーションも取りにくくなります。今年3月議会の予算特別委員会健康福祉分科会で、わが党佐藤議員がこの問題で質問しましたが、生活支援課長は次のように答弁しました。「視覚障害者団体の方からも日常生活用具で給付できないかとの要望があるが、補聴器は全国一律の制度である補装具にあたるため、日常生活用具で支給するのは少しむずかしい。しかし、加齢によって耳が聞こえにくくなった視覚障害者に補聴器購入の際に補助することは、社会参加促進の観点等からも有効である。まずは他の自治体の調査をしてみたい」という内容でした。 @調査は実施されましたか。その結果はいかがでしたか。 A県市の独自事業で障害者手帳を持たない軽・中度難聴児への補聴器購入補助制度があります。日常生活用具給付としては困難だというなら、この制度を拡充するなどして加齢性難聴の視覚障害者に補聴器購入補助制度を創設できないでしょうか。お答えください。 3、「重度障害者等就労支援特別事業」 障害や難病のある人への就労支援については障害者総合支援法にもメニューがありますが、重度障害者の就労時間中においての支援や介護は対象外です。厚労省はこのことについて、就労は個人の経済活動にあたり、そのための支援・介護は障害者差別解消法で求められる「合理的配慮」として職場の事業主が行うべきものだとの見解を示しています。また、障害者総合支援法における移動支援・外出支援サービスのメニューである同行援護、行動援護、移動支援事業、および重度訪問介護は、いずれも通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出には利用できないとされています。通院や買い物など社会生活上必要不可欠な外出や余暇活動等の社会参加にはガイドヘルパーは利用できても、通勤や通学には利用できない、まったく不合理な内容となっています。 2019年7月の衆議院選挙でれいわ新選組の重度障害者2名が当選したことをきっかけに、就労中の介助や就労のための移動(=通勤)について制度改正を求める声が高まりました。ご記憶の方もいらっしゃると思います。そして、2020年10月、重度障害者等就労支援特別事業という新しい事業が施行されました。これは、市町村等が「就労のための支援が必要」と認めた場合、障害者が行う業務の介助や通勤援助に対し、障害者を雇用する事業主を通じて助成金を支給するものです。自営業者も利用が可能です。この事業は地域生活支援事業ですが、日常生活用具給付のような必須事業ではなく、任意事業であり、全国的にはまだ13市町村のみの実施です。 具体的な事例を紹介します。市内の視覚障害者のMさんは、現在、大阪市内の就労継続支援A型事業所が経営するマッサージ施術所に勤務しておられます。電車を乗り継いでの出勤ですが、決まったコースでの出勤は細心の注意を払い、また反復することで一人でもこなせていました。しかし、様々な事情から他の職場を探すことになり、神戸市の一般の訪問型リハビリ事業所に応募し決まりかけましたが、訪問先への移動は自力でとのことでハタと困まってしまわれました。毎回違うところへの訪問、初めての訪問は視覚障害者にとって大きな障壁ですが、先ほども申し上げたように、障害者総合支援法における視覚障害者の外出支援である同行援護サービスは、就労中の移動、外出には利用できないのです。そこで、これが可能となる重度障害者等就労支援特別事業を知り、西宮でも実施してもらいたい、と要望されておられるのです。 まだ始まったばかりで全国的にもこれからの事業ですが、現にこの西宮に制度があれば助かる障害者が存在しています。これからもこの事業によって就労の可能性が広がる障害者がおられると思います。直ちに実施すべきと考えます。いかがでしょうか。 4、バリアフリーのまちづくり 街を歩けば、いたるところにバリアです。これは、障害者にとってだけではありません。6月議会ではわが党のひぐち議員が第2庁舎のバリアフリー問題を取り上げ改善が約束されましたが、合理的配慮が必要な個所はあまたあり、気が遠くなります。しかし少なくとも、視覚障害当事者団体のみなさんが要望されている以下の課題は直ちに改善すべきではないでしょうか。お聞きします。 @音響信号機の音の調整です。聞き取りにくい所では、スピーカーの設置位置や向き、角度などを調整していただきたいが、いかがでしょうか。 A音響信号機は現在、西宮警察署管内に22か所、甲子園署管内に9か所設置されています。必要に応じての設置だと思われますが、新たに、山手幹線と市道西第441号線の交差点(神明町4番街区地先)及び、山手幹線と西福河原線交差点の信号機を音響信号機にしてほしいという要望がもう数年にわたって視覚障害者団体から出されています。近隣の障害当事者からの強い願いからです。設置の見通しはいかがでしょうか。 B音響信号機のない交差点には、視覚障害者への声かけ看板を設置できないか。あるいは、あらたに声かけマークを作成し、普及提示することが考えられないか |