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佐藤みち子の決算討論
2021年10月04日

認定第15号2020年度西宮市一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件について


 議題のうち、認定第15号2020年度西宮市一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件について、日本共産党西宮市会議員団は、各施策への取り組み姿勢、行政姿勢に問題ありとの立場から、反対いたします。
 以下、理由を述べます。

 まず、2020年度、決算の概要です。
 一般会計の決算額については、国による特別定額給付金事業や、地方創生臨時交付金を活用した事業など新型コロナウイルス感染症対策関連経費の増により、歳入・歳出ともに前年度を大きく上回っています。
 歳入では、根幹となる市税収入が、新型コロナウイルス感染症の影響などによる法人市民税の落ち込みがあったものの、個人市民税が増えたことから総額では前年度に比べて増えています。また、特別定額給付金事業の実施などにより国庫支出金が大幅に増えています。
 歳出では、特別給付金事業の実施により総務費が増え、認定こども園給付事業経費や障害者介護給付費事業経費が増えたことにより民生費が増え、前年度に比べ増額となっています。収支の結果としては、歳入から歳出を差し引いた金額が50億3千万円で、そこから翌年度に繰り越した事業の財源3億円を引いた、47億3千万円は過去最高の黒字となりました。なお、2020年度は市の貯金である財政基金を取り崩すことなく実質収支の黒字を確保しました。今後も、コロナ禍で大変な思いをされているすべての市民のみなさんの命と暮らしを守ることに全力をあげていただきたいと思います。
 
 新型コロナウイルス感染症についての諸問題にも触れておかねばなりません。

 1点目は、事業者支援についてです。
 国は、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置を9月30日の期限をもって、全面解除しました。同宣言・措置の対象がゼロになるのは4月4日以来、約半年ぶりです。まともな補償がないままの営業制限が長期にわたったことで、飲食店、宿泊業者の多くが苦しみ、中には廃業を検討している事業者もまた多く存在しています。制限の緩和をもって支援を縮小することは許されません。

 特に緊急事態宣言の影響で減収した業者に国が支給する一時支援金について、何度申請しても書類の不備を理由に支給されない、いわゆる「不備ループ」についても一言申し上げます。この一時支援金は、飲食店の時短営業や外出自粛の影響で2021年1月〜3月のいずれかの売り上げが半減した業者に最大60万円を支給するものです。申請をした人に、次から次へと膨大な資料の追加を求め、このことから出口のない「不備ループ」と呼ばれています。無理難題を要求するメールに当事者は、心が折れ、この事態は、社会問題となり国会でも日本共産党が質問しました。国はやり方を改め、迅速に支給すべきです。
 本市では国の一時支援金の対象外となった20%以上50%未満の売上減少の事業者に対し、「西宮市一時支援金」や個人事業主を対象にした店舗等への賃料を支援する事業を実施しました。申請した方からは、簡単に申請でき給付も早かったと聞いています。
 本日、交付金を活用した事業者支援の補正予算が提案されますが引き続き行政の支援が必要です。

 2点目は、陽性者への対応とPCR等検査についてです。
 本市での新型コロナウイルス感染症を振り返りますと、今年3月から6月頃にかけての第4波での感染者は圧倒的に高齢者でした。感染者の急増に伴い入院病床や宿泊療養施設がひっ迫し、保健所による入院・入所調整が非常に難航しました。また、積極的疫学調査業務においても人員が不足し、対応が追い付かない状況が発生しました。クラスター対策、自宅療養者や入院待機者への対応など、これら業務において改善すべき課題が浮き彫りになったことから、第4波までの保健所業務について検証を行い、7月16日に公表、第5波に備える体制をつくりました。
 第5波の備えとは、@自宅療養者の体調管理を効率化するためのアプリによる健康観察A医師、訪問看護事業者など関係者間の情報を共有し、効率化するためのシステムなどを導入することです。これらのことにより市は、第5波では、感染者に対し「大きな問題なく対応できた」としていますが、果たしてどうだったのでしょうか。また、一時期「自宅療養者」「入院待機者」が合わせて700人を超える事態になりましたが、自宅療養という事実上の自宅放置は許されません。
 国は、「原則自宅療養」という方針に専門家の意見も聞かずに転換し、国民の批判の前に一部修正したものの、方針は正式には撤回していません。この方針を撤回し、すべての陽性者が必要な医療を受けられるよう病床増や臨時の医療機関の整備など、医療体制の強化を図るべきです。

 また、第5波のデルタ株は感染力が強く、これまで感染しにくいと言われていた子どもにも感染者が出ています。保育所、幼稚園、学童保育、小中学校等で感染者がでました。同時に、感染者が発生した場合、濃厚接触者だけでなく、安心、安全のために広く検査をすることや市民に対して「いつでも誰でも何度でも」PCR検査を大規模に実施するよう市に求めましたが、検査拡大や定期的検査についても、相変わらず市は全くやる気がありません。この姿勢は転換すべきです。

 専門家は「第6波」は必ずくると明言しています。今大切なことは感染拡大の「第6波」を起こさないための対策に全力をあげると同時に「第6波」が起きた時の備えをしっかりとすることです。そのためには@保健所体制の抜本的な強化Aワクチン接種と一体の大規模検査B持続化給付金と家賃支援金の再支給・継続給付など、十分な補償、これら三つが大事です。

 次に、各分科会ごとに意見、問題点を指摘します。

 初めに総務分科会です。
 1点目は、職員定数の問題です。
 子ども家庭総合支援拠点(以下、支援拠点)と言います。市は2021年度中に開設を予定しています。支援拠点は2016年に成立した「児童福祉法等の一部を改正する法律」において、市区町村が子どもとその家庭及び妊産婦を対象に、実情の把握、相談全般から通所・在宅支援を中心としたより専門的な相談対応や必要な調査、訪問等による継続的なソーシャルワーク業務を担う拠点として整備に努めなければならないと規定され、国は2022年度までに全市区町村に支援拠点を設置する計画を打ち出しています。本市での開設はこの国の計画に基づいたものです。
 この支援拠点には、子ども家庭支援員、心理担当支援員、虐待対応専門員など、いずれも資格が必要な専門職を配置しなければなりません。本市の標準配置人員は17名となっているにもかかわらず、13名にとどまっています。早急に人員を満たさなければなりません。
 同時に、当然、新しい事業が開始されるのですから職員数そのものを増やさなければなりませんが、定数条例で職員数が決められており、よって、正規職員ではなく会計年度任用職員で職に当たらざるを得ません。支援拠点の本市の正規職員数は6人ですが、人口規模の近い東大阪市では正規職員が23人などと比べて、正規職員も配置人員も少なすぎます。果たして、この体制で虐待や多種多様な子育て支援に応じることができるのか疑問です。正規職員を増やして体制強化を図るためにも定数についての議論を求めます。

 職員配置にかかわって、2点目は、公立保育所保育士についてです。保育所の人員は、正規保育士310人、会計年度任用職員A(以下、非正規)というが326人です。本市の公立保育所23か所には、正規保育士と非正規保育士が半分ずつ配置されています。市は@弾力運用よる定員以上の子どもの保育A障害児の加配B幼児のフリー保育士として非正規保育士を配置していると説明しています。
 保育所は、言うまでもなくただ単に子どもを預かる場所ではありません。子どもの発達を保障し、保護者の働く権利を守る場であり、初めて子育てする親にとっては、親として育つ場でもあります。
 さらに、昨今では地域の子育て支援と保育の現場は多くの役割を担っています。そのためにも保育士は経験や研修を重ね、より専門職としての知識をつけていく必要があります。本市の非正規保育士は資格を持ち、0歳児〜2歳児の担任を担い、職員会議にも出席しているとのことで、保育に関しては正規保育士と何ら変わりません。にもかかわらず待遇面に格差があるのはいかがなものでしょうか。子どもの命と安全を最優先する保育を保障するためにも、正規保育士を配置することを求めます。

 本市では、かつて女性の正規雇用が多かった保育士や給食調理員の非正規化が進み、加えて虐待や婦人相談等、重要な専門職においても、多くの女性が非正規雇用されています。これら職種を含む会計年度任用職員は実に85%が女性です。子どもの安全や安心、市民の暮らしを支える重要な職務を非正規雇用の女性が担っています。このことを放置し続けることは許されるものではありません。
 この問題で行政に問われるのは、口先だけの「男女共同参画」ではなく、本気でジェンダー平等に取り組むという姿勢です。特に、職員の雇用については、目先の効率のみにとらわれず、大きな視点にたち検討することを求めます。

 次に民生分科会です。
 1点目は、気候変動・地球温暖化対策です。喫緊の課題であり、市も昨年度末に2050年ゼロカーボンシティを表明しました。ただし、現状の取り組みではその危機感を感じることはできません。2020年度決算で、エネルギー政策推進事業にかけられた事業費は約1600万円。環境先進都市である埼玉県所沢市が同様事業に1億7000万円ほどの予算をかけているのと比べれば、その差は歴然です。また、2021年度に3号機、2022年度4号機と神戸製鋼石炭火力発電所が2基増設されて、運転が開始される予定ですが、本市はそのことに「他市のことだから」と口をつぐんできました。合計4基となる神戸製鋼石炭火力発電所は毎年約1400万トンのCO2を排出すると試算されています。一方、西宮市全域のCO2排出量は毎年約200万トン程度ですから、本市がどれだけ努力をしてゼロカーボンシティを実現したとしても、その努力が水の泡になってしまいます。市として、「石炭火力発電所は中止せよ」と表明すべきです。そして、ナッツ同盟の吹田市、豊中市と歩調を合わせ、「気候非常事態」を宣言し、積極的に再生可能エネルギーへの転換を求め、本市における再生可能エネルギーの利活用を強力に進めていくことを求めます。

 2点目は、ごみ指定袋制度です。
 この制度は、2022年4月から開始予定ですが、党議員団は以前から住民に対する丁寧な説明を求めていました。ところが新型コロナの影響もあり、説明会は思うように進んでおらず、2021年9月28日現在で、自治会からの説明要請は60件の申し込みにとどまっているとのことです。あまりにも少なすぎます。かつて、「その他プラ」の分別が開始された当時の説明会は年間で450回行われたということですから、今回のごみ指定袋制度の説明が足りていないことは明らかです。このまま十分に周知がなされないまま実施された場合、事業が成り立たない可能性も十分に考えられます。したがって、市民に対して十分な周知がなされるまでは、事業の開始を延期することも含め検討することを求めます。

 3点目、食肉センター特別会計では、2020年度は一般会計から1億7,760万円の繰り入れが行われています。2017年4月に姫路に開設された民間の和牛マスター株式会社の影響により、屠畜数が年々減少しています。今後もこの傾向が続けば、さらに繰入金を増やすおそれがあります。また、今後は施設の老朽化による建て替えや設備機器の更新に、市の負担が増えることにもなるのではと危惧します。早急に民営化、または廃止を決断することを求めます。

 次に、健康福祉分科会です。
 1点目は、災害援護資金貸付についてです。
 これは、1995年1月発生の阪神淡路大震災後に低所得者を対象に貸し付けたものですが、2020年度末の未償還件数、残高は、169件、2億5897万円です。貸付総数、総額はそれぞれ8934件、203億5506万円でしたから、未償還件数で1.89%、未償還額で1.27%となっています。
 その内訳は、少額返済中が51件、4432万円の残。残り118件は、行方不明など回収困難となっており、市は、償還の可能性があるものは償還指導を行うとしていますが、どれだけ可能性があるかは不明とのことでした。
 神戸市では、同貸付未償還の709件、約11億5000万円の返済をこのほど免除することとしました。高齢化やコロナ禍で返済に苦しむ借り手が増えた、今後予定される返済額が回収費用を下回る等の理由からです。
 分科会では、本市でもぜひ神戸市と同様の措置をと求めましたが、現在のところは予定していない、との答弁でした。しかし、国に対して返済期限の延長、返済免除要件の緩和などについて、県や神戸市、関係各市とともに働きかけをしてきた経過からも、神戸市同様、償還残について免除する決断をするよう強く求めます。

 2点目、高齢者外出支援サービス事業の一つである、高齢者交通助成事業は、2020年度末をもって廃止となりました。その理由は市の説明によると、サービス利用高齢者の8割が助成券を交換する鉄道事業者の事業への協力が困難となったから、というものでした。
 そして、市は、その代わりの事業、代替事業として健康ポイント制度の創設と、介護タクシーの拡充、高齢者交通助成制度のうち、バスについて今までとほぼ同様の事業として継続することとしました。
 2021年度に入り、健康ポイント制度の申請書が70歳以上、約9万人の全対象者に郵送され、この10月から事業開始されますが、1万人の参加を予定していたものの、申請締め切りの8月末現在、3343人、全高齢者の3.8%の参加にとどまっています。
 結局、多くの「歩けない」高齢者にとっては、手続きや利用方法も難しく、この制度は高齢者交通助成制度の代わり、代替にはならないということではないでしょうか。もちろん健康増進のためのウォーキングは推奨されていますし、これは高齢者に限定しない健康増進事業として進めるべきものと考えます。その際にも、民間事業者に丸投げという委託の在り方など、検討すべき課題もあるということを指摘しておきます。
 また、バス運賃助成については想定を上回る申請件数となり、増額補正がされましたが、バス路線網が不十分な本市では、高齢者交通助成制度で鉄道に次いで13.4%の利用があったタクシーを継続することを求める声も多く、党議員団でそのことも求めてきました。しかし、分科会では、タクシー事業者とは継続の協議すらしてこなかったことも明らかになりました。鉄道事業者の撤退をいいことに、結局、高齢者施策の縮小をはかったということではなかったのか、そんな声も多数聞いています。
 いずれにしても、高齢者外出支援サービス事業については再構築が必要だということを指摘し、検討するよう求めます。

 次に、教育こども分科会です。
 留守家庭児童育成センター(以下、学童保育)とい言います。
 本市では41校区85センターの学童保育が設置されており、社会福祉協議会や株式会社によって指定管理者制度で運営されています。本市では、学童保育に待機者が出ている5校区に全児童を対象とした放課後キッズルームを設置し、学童保育待機者の受け皿にしています。
 さらに、学童保育の待機児童が多い地域に現在4か所の民設民営学童を設置しています。この学童はオプションなども可能で、運営は有限会社やNPO法人です。2021年度は、さらに2か所設置するとのことです。
 そもそも学童保育は、子どもが集団での遊びや生活を通じて発達を保障する場であり、保護者と指導員が共同して子どもを育て、親が親として育っていく場でもあります。全児童対象事業や民設民営でこれらのことが実施できるでしょうか。待機児童解消のためには量が必要ですが、それ以上に質が問われます。
 さらに、児童福祉法が2015年に改正され、それまでは10歳未満の児童が通う施設との位置づけから、小学校に就学している児童、すなわち小学校6年生まで受け入れが可能となりました。本市では、現在、障害のある児童は6年生まで受け入れ、17校区の学童保育で4年生までの受け入れを実施しているところです。今後も増えていくと思われます。
 市の説明によりますと、学童保育に3年生まで通っていた子どもの約70%が4年生になっても引き続き通っているが、夏休み明けには退所する子どもが多いとのことでした。その理由については明らかではありません。
 小学生は低学年と高学年では体の大きさや思考も大きく違ってきます。当然、指導員も高学年の指導については未経験ですから専門家から学ぶ必要があります。今後、小学6年生までを受け入れ、どのように指導していくのか、このことを、指定管理者任せにすることは無責任です。市が、責任を持って高学年学童について検討することを求めておきます。

 最後に国の政治についても一言申し上げます。
 自民党の総裁選は、「新型コロナ失政」や強権・腐敗政治に対する国民の怒りと運動に追い詰められた菅首相が、政権を投げ出すもとで行われました。当選した岸田文雄氏は、9年間に及ぶ安倍・菅自公政治を、重要閣僚として、党の幹部として中枢で支えてきた人です。まさに、政治の中身は、「安倍・菅直系政治」です。今、国民が求めているのは、コロナ対応の無為無策、強権政治、腐敗政治によって行き詰まった自公政治そのものを終わらせることです。来るべき衆院選では、市民と野党の共闘で、自公政権を倒して政権交代を実現し、国民の命と暮らしを守る、新しい政権をつくるために全力をあげるものです。
 以上です。

 ご静聴ありがとうございました。