2022年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:教育委員会/* --項目挿入-- */?>
2021年08月31日
- 長引くコロナ禍が子どもたちの成長・発達を脅かしている。学童期の子どもたちは体をくっつけ合い、じゃれ合って遊ぶことが肌のぬくもりや感情を共有し、社会性を育むうえで必要な「接触」なのに、その機会が減っている。
コロナ下の「子ども期の保障」を考える基本的視点として示したのが、国連子どもの権利委員会の2020年4月の声明である。子ども期の保障には6つの権利が重要だとして生存権・生活権・学習権・多面的・複眼的等把握を上げている。
子どもたちには、なぜ学校が休みになるのか、修学旅行や運動会が中止になるのかを説明しどういう形で実現できるかを子どもたちと相談し、一緒に「子ども期の保障」について考え合うことが必要である。以下のことにとりくむこと。
(1)密を避けられない学校生活の中で、子どもたちも教職員も感染への不安を強く抱いている。安心を与えるという意味でも、無症状感染者を見つけ感染を拡大させないという意味でも、定期的かつ必要に応じて、子ども・教職員・出入り業者など関係者全員に対し、積極的にPCR検査を実施すること。
(2)コロナ禍で教師が消毒作業を行っているが大変である。廃止をしたスクールサポートスタッフを各小学校、中学校、義務教育学校に早急に配置すること。
(3)学びの指導員の増員は決定されているが、大規模校等にとって十分な配置になっているとは言い難い。求めに応じて増員できるように、市教育委員会独自で対応すること。また、配置にあたっては、学校任せにするのではなく、市教育委員会が責任を持って配置につとめること。
(4)様々な我慢が強いられる中での学校生活のストレスも深刻であり、子どもたちや教職員に対する心のケアは重要である。早急にスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの増員を図ること。
(5)子どもの日常生活を取り戻し、尚かつ感染対策が納得を得られるようにすることが大事である。富山市のように専門家を交えた検討委員会を作ること。
- コロナ禍の中、教育関係者や保護者等の運動が実り小学校で、2025年までに35人学級が実現されることになった。県では現在4年生まで35人学級が実施されているが、5・6年生の35人学級については、国に合わせることとしている。直ちに県独自5・6年生まで実施すること。また、中学3年生までの35人学級を国、県に要望すること。実現するまでの間、市独自で実施すること。
- 市は「西宮市子ども・子育て支援プラン」の中で、子ども児童福祉法の改正で子どもが保護の対象から権利の主体へと法の理念が変わったことを明記し、子どもの視点に立ったとりくみを進めていくこととしているので子どもの権利の条例制定の必要はないとしている。しかし、本市でも子どもの人権と教育の機会均等を侵害するいじめ・貧困・虐待・高学費などの様々な諸問題が深刻である。これらの問題を解決する理念と行動の指針となる「子どもの権利に関する条例」の制定を、西宮市でも検討すること。
- 新型コロナウイルス禍で2020年度にはタブレット端末を児童・生徒に1人1台配布された。以下、ICT化やオンライン授業等について具体的に要望する。
(1)各学校のWi-Fi環境を良くすること。
(2)子どもたちが学び成長するためには、数多くの実体験を重ねることが何より大切であり、五感を使って自然と触れ合う体験こそ、その後の豊かな人間生活を送る基礎となる。このことは特に低学年では大事である。全学年にタブレットが配布されているがパスワードの入力等、低学年には操作することに無理がある。タブレット使用そのものについて、子どもの成長や発達を阻害するという指摘がありタブレット使用開始の学年については現場の声を聞き再検討すること。
(3)視力の低下や電磁波等、子どもの身体や健康を守ることに何の検証もされていない。専門家の意見を聞いて検証すること。
(4)有害なサイトにつながってしまう危険性もある。子どもが自宅に持ち帰っているが教師や保護者の目が届かない。持ち帰りについては検討すること。
- 誰もが自分が自分であることに誇りを持って生きたいと願っている。その人の人間たるゆえんに性自認がある。人間の性は多様で、文科省は2015年、2016年に「性同一性障害に係わる児童生徒に対するきめ細かな対応実施等について」という、性的マイノリティーの子どもへの支援に関する通知を出し、教職員向けに周知資料を配布したが、学校ではなかなか理解が進んでいないのが現状である。以下のことにとりくむこと。
(1)制服については男子はスラックス、女子はスカートとなっているが一部の中学校で選択できるようになった。全部の学校で選択できるようにすること。
(2)性別に関係なく誰でも利用できる「みんなのトイレ」を設置すること。
- 子どもの性被害が増加している。文部科学省と内閣府が専門家とともに、性被害を防ぐ教育や啓発のための、発達段階に応じた教材を作成した。性について学ぶことは、人としての尊厳や権利について学ぶことである。以下のことにとりくむこと。
(1)教員が性教育を実施し効果的な授業が行えるよう研修にとりくむこと。
(2)幼児期、小学生、中学生、高校生の年齢にあった性教育を実施し、SNSでの被害についても教えること。
(3)特に、知的障害のある子どもは、性被害にあいやすい、自分の体の水着で隠れる部分は自分だけのものであることや他の人に見せたり触らせたりしてはいけないことを繰り返し教えること。嫌なことをされたら安心できる大人に話すことも伝えること。
- 道徳の授業において、教員の自由裁量を保障し、子どもたちの内心の自由を侵害することのないよう徹底すること。また、子どもたちの道徳的価値の見方や考え方が、多面的・多角的なものに広がるよう授業のあり方も工夫すること。
- 英語教育が小学3年生から「必修化」、小学5年生から「教科化」された。また、プログラミング教育も小学校から順次導入されている。このことに関して、以下の点に十分留意すること。
(1)英語教育は小学校教員にとってただでさえ負担が大きい上に、新型コロナウイルスの影響もあり十分なコミュニケーション活動をすることが難しく、現場の教員の不安は強い。これらの不安や負担を軽減していくために、現場からの声を十分に聞き取り、ALTを増やすなど丁寧な支援を行っていくこと。
(2)プログラミング教育は新たな分野である上に、新型コロナウイルスの影響も重なり、現場は混乱していると思われる。教職員の声を聞きとったり、児童の反応をよく観察したりして、適切な教育が行われるよう丁寧な支援を行うこと。
(3)プログラミング教育が導入され、総合的な学習の時間や生活の時間などがプログラミングに充てられている現状がある。子どもたちの貴重な体験学習等の時間
を削ってまで行うような“過度”な実施とならないよう、指導していくこと。
- 文部科学省は、小学校入学時の学習態度や学力の差をなくすことを、5歳児向けの共通教育プログラム(幼児教育スマートプラン)を作る方針を決めた。幼稚園や保育園、認定こども園で生活や学習の基盤となる力を養い、小学校入学後の学びにつなげるとのことである。中央教育審議会で検討を始め、文科相は、2022年度からモデル事業をスタートし、2023年度以降、全国普及を目指している。幼児教育のあり方にも大きく関わる問題であり拙速に進めることには問題がある。市教委として現場の声をよく聞き、国に対して早期教育はきっぱりやめるよう求めること。
- 平和・人権教育について、以下の点を要望する。
(1)東京五輪に関わって女性差別発言、容姿侮辱、過去の障害者いじめ、ユダヤ人虐殺を揶揄等、人権尊重に関する日本の遅れた一面が世界に露わになった。人権や多様性、ジェンダー平等等について啓発すること。
(2)平和教育を重視し、平和の尊さとともに、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史的な事実や反省を、児童・生徒に伝えること。公教育のなかで侵略戦争を美化・肯定するようなことは決して許さないこと。
(3)2021年1月22日核兵器禁止条約が発効されたが、日本は唯一の戦争被爆国でありながらこの条約に背を向け続けている。被爆の実相を語り継ぎ、核兵器の非人道性を児童・生徒にも知らせるなど、平和教育をさらに充実させること。
- 不登校問題について、以下、要望する。
(1)不登校児童生徒のための施設「あすなろ学級」の施設名称が、「教育支援センター」に改められ、その目的も「学校復帰」から「社会的自立」となった。そのこと自体は前進だが、実際は中身が伴っていない。個々の児童生徒に応じた対応とすること。
(2)不登校児童生徒が学校外の公的施設や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取り扱いについて、市は「不登校児童生徒を支援する民間施設に関するガイドライン」を2021年3月に策定した。「出席扱い」については、保護者の申し出を受け、該当児童生徒の状況を踏まえたうえで、個々に判断することが必要だとしている。しかし、判断基準がわかりにくい。各学校長が判断しやすいよう尼崎市のように「指導要録上出席扱いとすることができるフリースクール一覧」等の取り組みを進めること。
- 教職員の「超多忙化」・「非正規化」を解決するために、教職員定数の改善を国に求めるとともに、以下の項目にとりくむこと。
(1)定員についてはすべて正規教員で確保するよう、県に強力に求めること。また、非常勤講師の加配、産休代替教員の確保についても、適正に行われるよう要望すること。
(2)国は教員に「変形労働制」を適用し、多忙化をやわらげようとしているようだが、それでは全く解決にはならない。むしろ授業日の勤務時間が延び、これまで以上に忙しくなってしまう恐れすらある。本市において「変形労働制」の導入は絶対にしないこと。
(3)教員の負担軽減や部活動の質的向上を図るためとして、中学校の部活動指導員を早期に全校配置し、1クラブにつき1人の配置をめざすこと。
(4)教員免許更新制は、国でも見直しの動きが出てきている。市として国に廃止を求めること。
(5)2021年度より教師の勤務時間を把握するためタッチパネル式の勤務時間管理システムが作られている。労働時間管理を厳格に行い実態を把握し長時間労働を改善すること。
- 特別支援教育について、次のことにとりくむこと。
(1)多様な様子を示し、程度もさまざまな発達障がいの子どもが増えている。引き続き教員加配を県に求めること。
(2)支援が必要な子どもには学校協力員を配置することができるが、あくまでもボランティアという立場であり、1日4時間までという制約がある。そのため支援が必要であるにも関わらず協力員のいない空白の時間が生まれ、現場では困惑している。この際協力員を職員として採用し、1日配置できるように制度を見直すこと。
(3)特別支援学級に通学する子どもは登校や下校に保護者が付き添っており、保護者の都合がつかない時は子どもを休ませている。就労を希望している保護者も付き添いがあるため断念せざるを得ない。2021年6月に障がい児の親、教員等でつくる団体から、通学支援の要望が出されている。健康福祉局と一緒に検討を進めること。
- 全国学力テストは子どもに過度な競争を強いるだけでなく、学校間の序列を生むものである。また、市が実施しているリサーチプラン学力テストも同様である。中止とすること。
- 県の一斉事業であるトライやる・ウィークは、各中学校で受け入れ先の事業所を探さなければならないことや、地域によっては受け入れ先の確保に困難が生じるなど、関係者の負担が大きい。現場の意見を十分聞き取った上で、全校一律・一斉で実施するのではなく、各学校で実施しないことも含め、柔軟に対応できるよう改善すること。
- 「自然学校」は、教職員の多大な負担となっている。コロナ禍では、それぞれの学校の実情に合わせて実施されている。「自然学校」のあり方については、改めて十分検証し、実施日数等を各学校の判断で調整できるよう見直していくこと。
- 西宮市は「西宮市学校施設長寿命化計画」を策定し、各学校を80年〜100年長寿命化させるとなっている。学校施設の老朽化対策予算の大幅な引き上げを政府に要求するとともに、長寿命化計画を見直すこと。老朽化が進んでいる建て替えが必要な施設は、建て替え計画を策定すること。また、新増改築に際しては以下のことに取り組むこと。
(1)アスベスト対策を確実に行うこと。
(2)子どもの更衣室を設置すること。
(3)トイレの洋式化などは積極的に進めていくこと。
- 2021年度は小学校、高校の体育館へのエアコン設置を検討するとしている。なによりも児童生徒の命と健康を守ることを優先し、小学校と高校の体育館への設置も進めること。
また、新型コロナウイルスの影響により先送りにされたが、道路や鉄道、航空機などの騒音対策として設置された空調の老朽化が進んでいる。残されている学校については前倒しで整備すること。
- 近隣他市と比較し、本市の学校司書の配置は圧倒的に少ない。学校司書の配置を拡充していくとともに、早期に専任の司書教諭を全校に配置すること。
- 「直営自校方式」で実施されている西宮市の小・中学校での学校給食は、食育の観点からも子どもたちの健康と成長を守る上でも大きな役割を果たし、保護者からも喜ばれている。以下のことにとりくむこと。
(1)将来的にも「直営自校方式」を堅持すること。
(2)正規調理員を基本とした人員を確保すること。
(3)夏場の調理室では40℃を超えることもある。調理員の健康面でも食材等の管理の面でも、空調の整備が必要である。早急に整備すること。
(4)給食費の無料化に踏み切る自治体が広がっており、給食は食育であり、よって教育費の無償化という教育基本法や憲法の精神に立ち、無料化を検討すること。
(5)国産の食材やオーガニック(無農薬野菜)を積極的に使用していくこと、とりわけ地産地消を進めていくことは重要である。国産小麦を使用したパンを提供していることは大きな前進であり、そのようなとりくみをいっそう推進していくこと。
(6)自分たちで育てた米や野菜を食すという体験は、食育の観点から非常に重要なものである。そのような体験をすべての児童生徒にさせてあげられるよう検討すること。
- 「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」を策定したが、「教育環境保全」に十分な効果を発揮しているとはいえない。仮設教室での対応が可能であれば規制の対象外としていることや、児童数推計の甘さなどに、その原因がある。規制強化の方向で要綱の内容を抜本的に見直し、条例化を検討すること。
- 昨今「生理の貧困」とは、経済的貧困だけが原因ではなく、保護者によるネグレクト、父子家庭の場合、父親からの理解が得られないなどによって入手できない等の問題がある。本市でも災害備蓄品の無償配布が実施されたが不十分である。
全国では、災害備蓄品の無償配布を契機に恒常的な無償提供を求める動きも広がっている。神奈川県大和市では市内の全小中学校のトイレに生理用品が設置され、人の目を気にせず自由に使えるというやり方が導入されている。本市でも市内全小中学校のトイレに生理用品を設置すること。
- 2021年4月より1〜3歳児を対象とした「特区小規模保育事業」は、子どもの成長の幅が大きく、適切な保育が行われるのか懸念がある。また市立幼稚園の預かり保育事業もあくまでも「預かり」であり、十分な保育の質を保つことができるのかは甚だ疑問である。実際に特区保育事業の入所者は少なかった。そこで、2021年度に利用保留児となった保護者にアンケートを実施したが、@幼稚園が給食ではなくお弁当だからA小学校就学まで預けることができず、特区小規模保育事業所から幼稚園に移らなければならないが希望しない理由である。この際、保育の質を保ちつつ待機児童を解消する策として、市立幼稚園の認定こども園化を検討すること。