HOMEへ
野口あけみの反対討論
2022年07月07日

議案第491号令和4年度西宮市一般会計補正予算


 議案第491号 令和4年度西宮市一般会計補正予算(第2号)のうち、日本共産党西宮市会議員団は、 新たに導入する総合コールセンター設置事業にかかる経費436万7千円、総合コールセンター設置及び電話交換業務にかかる構築・運用の業務委託の令和5年度から10年度までの債務負担行為4億6408万5千円と、自治体システム標準化にかかる印鑑登録システム分析業務委託料462万円について反対します。以下、討論を行います。

 総合コールセンターは、市民からの多種多様な問い合わせ電話に対し、FAQ(=よくあるご質問)を参照しながら、委託先のオペレーターに一時対応を行わせるもので、導入当初は、代表番号とは別に総合コールセンターの番号を新たに設けるが、将来的には代表番号をなくしコールセンターの番号に一本化を検討する。担当課への問い合わせをなくすものではないし、住基や税などの個人情報は参照しないとのことでした。

 以下、4つの問題点を指摘します。
 市は導入の目的として、@時間外や土日祝日も含め問い合わせ対応を行う、対応の統一化を図るなどで市民サービスを向上させる。A定型的な問い合わせが減り、職員の業務負担が軽減される。B入電傾向や対応履歴の分析が可能となる中で、市民ニーズの把握と蓄積データを活用し、ホームページに掲載するFAQの内容を充実させる、などとしています。
 対応時間の延長により市民サービス向上となり、蓄積データの分析活用でFAQの内容を充実させるという点は否定するものではありません。しかし、職員の業務負担軽減については、電話時間削減が6万件×3分、対応記録作成時間削減が6万件×4分と、その効果が数値化され示されていますが、ただ単に電話対応時間の総量がこれだけ減り、その分、より高度な業務にそれぞれの職員が時間を使うのだと説明されても、窓口対応や専門業務への人員配置を増やすなど、より具体的な対応が示されなければ、本来の業務効率化や市民サービス向上にはつながらないのではないか、と考えます。これが1点目です。
 
 2点目に、市民満足度調査を実施し、5段階評価で満足度4以上が80%となるようなサービスレベルを求めるとしていますが、満足度調査はコールセンター受託者による聞き取り調査の予定ということでした。これで客観的な調査になるでしょうか。せめて、通話録音の定期的抜き打ち的チェックが必要だと考えます。

 3点目、コールセンターは定型的な問い合わせに対応するとはいえ、FAQ件数で2000件以上、また、総着信回数中9割以上の受電、コール後の平均待ち時間3コール、10秒以内などのレベルが要求されており、相当な業務量や煩雑な業務内容になると想像しますが、そこで働く方々については、公契約条例もない中で、いわゆる「官製ワーキングプア」になりかねないとの懸念を持っています。ワーキングプアを市が生み出すことに反対です。

 最後に、新たに民間委託を拡大することになるという問題です。ご承知のように尼崎市では給付金支給事務で、業務を委託された民間事業者が、全市民の個人情報が入ったUSBを紛失するという重大事件が起こりました。さらに市に報告すべきところを無届で情報を持ち出していたことや、委託業者は無断で再委託をしていたことなどが発覚し、行政が委託業者をまったくコントロールできていない、管理監督ができていないということが露呈しました。「長年の委託関係でチェックが形がい化していたのではないか」などの指摘もあり、報道によれば尼崎市は「業務委託の在り方の検証を行う」とのことです。
 この度の民間委託による総合コールセンター設置は、直接、尼崎市の例のような個人情報を扱うものではないのかもしれませんが、民間事業者が「西宮市です」と名乗って市民に接する業務です。導入となれば先ほども申し上げたように適切な対応となっているか、直接チェックする機会をきちんと持つべきです。窓口と並んで電話応対は市民と直接接する業務です。これを民間委託することが、今後は窓口業務にも拡大することにつながらないか、これも危惧するところです。


 次に、自治体システム標準化にかかる印鑑登録システム分析業務委託についてです。
 昨年国会において成立したデジタル改革関連法の柱の一つは地方公共団体情報システム標準化法で、この法律では、これまで各自治体で独自に工夫し積み上げてきた様々な住民サービスのための情報管理やシステムを、国が標準的な仕様を示してそれに合わせるように求めるものとなっており、住民記録、地方税、福祉、選挙人名簿など17の業務において令和7年度までに国の仕様に合わせることを義務としています。
 昨年12月議会で、住民記録標準システム移行準備業務と、17業務のうち国が標準化の具体的中身をまだ示していない16業務を2つのグループに分け、国が順次示すとされている内容に対し、どのように対処すべきかなどのアドバイスを受ける標準化対応全体移行計画支援業務についての債務負担行為の補正予算が可決されました。
 国が標準化を目指す17業務に印鑑登録システムなどあらたに3業務が加わり、うち、印鑑登録システムは先行する住民記録標準システム移行と同時に行う方が効率的として、この度の補正となったとのことです。

 そもそも情報システムを統一化することで、自治体には膨大な業務量の増大と業務負担の増加が強いられています。西宮市はそれこそ情報化では日本のトップレベルであり、技術的な心配というものはないでしょうが、全国の中小の自治体では、内容にもついていけないとの悲鳴が上がっていると少し前に大手新聞で取り上げられていました。また、自治体が独自に設けている制度運用に係る機能に対して、最小限度の変更や追加を行うことができるのでないかとされているものの、どこまで対応できるのかが不明なことも懸念材料だと、これは昨年の代表質問で答弁されました。膨大な経費をかけて自治体システムを統一化し、はては住民サービスまで統一化し、鋳型にはめていくことにつながり住民サービスが後退しないか、懸念はぬぐえません。

 以上2点が反対箇所ですが、補正予算案について少し意見を申し上げます。
 3月議会に提案され可決された当初予算は市長選挙前のいわゆる骨格予算であり、この6月の補正予算案は2期目を迎える市長が、ご自身の公約などに基づき肉付けするものだと認識しておりました。
しかし、コロナ対応も依然として必要ななかで、産後ケアの拡充や若年者の在宅ターミナルケア支援事業、ヤングケアラー研修など、議会の意見を反映したものも散見されますが、これらは予算規模も小さく、全体としては、肉づけ不足では、というのが感想です。
 わが会派の佐藤議員が一般質問で取り上げた、市長公約のなかでも大きな課題、高校卒業までの医療費無料化については9月議会にはなんらかの形を示したいとのことでしたので、これに期待したいと思います。
 最後に、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の問題です。自治体の裁量でコロナに対応できるこの交付金は、本市において2020年度に36億2000万円、2021年度には28億8000万円活用されました。今年度は、従来の地方単独事業分10億4300万円に加えて、原油価格・物価高騰対応分として11億1800万円も交付されるとのことです。地方単独事業分を活用した事業は当初予算、補正2号、3号でほぼ予算計上されていますが、原油価格・物価高騰対応分は現在のところ、バス・タクシー事業者への補助金、約5300万円のみの計上となっています。
 今まさに原油価格や物価の高騰が、暮らしと営業に深刻な影響を与えています。文科省も通知している学校給食費の保護者負担軽減は全国各地で取り組みが広がっています。さきごろ川西市が2学期のみではありますが、給食費無料にすることを決定したと聞いています。水道料金の値下げ、これは石井市長は可能性が低いと、広く薄くではなく、本当に困っているところにと一般質問で問われ答弁されておられましたが、全市民に及ぶ物価高騰の影響は、広く薄くでも余計な経費や手間をかけず、直ちに実施されることが望ましいのではないでしょうか。年度内執行画家安納とのことですが、一刻も早く具体化されることを求めます。
 以上、討論とします。