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2023年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:健康福祉局
2022年09月01日

  1. 新型コロナウイルス感染症対策について
     新型コロナウイルス感染症(以下、コロナという)は、オミクロン株BA、2系統からさらに感染力の強いBA、5系統等へと置き換わり、8月初旬現在、感染急拡大となっている。重症化率は高くないとのことだが、全国的に発熱外来はパンク状態、検査も受診もできず、陽性となっても治療どころか健康観察も行われない、濃厚接触者の特定も検査も行えない事態となっている。
     コロナ発生から3年余りだが、現在の「第7波」までのそれぞれの波ごとに医療・検査・保健所等の体制強化が適切に行われてきたのか、政府の対応が問われている。季節性インフルエンザと危険性が変わらないとの議論もあるが、科学的根拠のない過小評価によるべきではなく、また、「2類相当」の見直しや全数把握の見直しなど
    の議論もあるが、医療や保健所体制の現状のみから議論するのではなく、「国民の命を守る」対策をいかにとるのかを検討し、実施すべきである。
     以下、国や県に要望することを含め、実施を求める。
    (1)発熱外来の体制、高齢者施設等での頻回検査、無料PCR検査を抜本的に強めること。
    (2)市では、臨時交付金を活用してコロナ対応の医療機関に支援金を支給したが、引き続き国や県とも連携して、医療全体の体制強化、臨時的医療施設・療養施設が機能するよう対策を講ずること。
    (3)保健所体制について
    保健所職員以外に他部局からの応援をえて保健所業務にあたっているが、今後も感染拡大のスピードや重症化率の度合い、高齢者の陽性者増などによって臨機応変に応援体制を変えていく方針と聞いている。他部局での業務見直しなども必要があれば躊躇なく行い、万全を期すこと。
    (4)ワクチン接種について、必要とする人への接種が円滑に進むよう引き続き対策をとること。
    (5)医療機関や保健所体制の現状も踏まえた対策が十分市民に向け発信されているとはいいがたい。随時、丁寧に説明を行うこと。
    (6)随時変化のある情報は市ホームページによって発信されているが、関係HPへのリンクなどが多用され、大変わかりにくい。例えば発熱外来の所在などは西宮市分のみをすぐに閲覧できるよう再編集するなど他部局の支援も受けて工夫し、わかりやすくすること。

  2. 済生会兵庫県病院(神戸市北区)の廃止を含む三田市民病院との再編統合が、神戸市、三田市、済生会病院3者の検討委員会で協議され、2022年6月、両市などは三田市民病院と済生会兵庫県病院を統合し、新病院を建設すると発表した。新病院は三田市立施設とし、済生会兵庫県病院を運営する社会福祉法人が指定管理者として経営にあたる。神戸市は財政支援をし、建設場所は神戸市北区北部の北神地域で選定し、2028年度の開院を目指すとのことだ。
     市南部に比べて医療機関が少ない北部住民の両病院、特に済生会病院の利用率は高く、新病院の立地によっては北部地域に医療難民を多数生じかねない。済生会兵庫県病院の存続を求めるなど、北部における医療機関の確保に力を尽くすこと。

  3. 青年期から中高年期にかけての「ひきこもり」は、自己責任とされることが多く、当事者はもちろんのこと家族は悩みを打ち明けにくい。現在は保健所が窓口となり対応しているが、家庭内暴力や、経済的自立など問題は個別的かつ多種多様である。保健所とは別に継続的に対応、対策する部署を設置し、民間機関とも連携してとりくみを強めること。

  4. 介護や看護など家族の介助を大人に代わって担わざるを得ないヤングケアラーの存在が社会問題となっている。市は2022年度に学校関係者等への研修実施の予算を計上したが、引き続き、課題の整理と対策について検討すること。

  5. 介護保険制度について
     2024年春の介護保険制度改定に向け、要介護1、2の保険給付外しや原則2割負担、ケアプラン作成の有料化など、さらなる負担増や給付削減が狙われている。これらは、高齢者にもそれを支える現役世代にも痛みを押しつけるものであり、国民の理解は到底得られない。以下、要望する。
    (1)介護保険制度は大きくは国が制度設計をしているが、高齢者の実態を踏まえ、市として国に対し、国庫負担の増額やこれ以上の制度改悪をやめることを求めること。
    (2)保険料がこれ以上上がると高齢者の生活を壊すことになる。引き上げないこと。
    (3)市が、高齢者と唯一直接関わっているのが介護認定業務である。認定調査の一部を民間委託しているが、これ以上民間委託をすすめれば、市が介護を必要とする高齢者の実態を直接把握する機会がなくなる。これ以上の民間委託はやめ直営を守ること。
    (4)市内の特養待機者は依然多く、同施設の不足は引き続き深刻な事態である。市として特養増設を計画に盛り込み、実現させること。また、国に対し要介護3以上という入所資格の撤廃を求めること。
    (5)小規模多機能型施設、グループホーム、ケアハウスなど特別養護老人ホーム以外の多様な施設についても基盤整備を進め、食費や部屋代への公的補助など、低所得者が利用できるよう国に改善を求めること。

  6. 新型コロナウイルスの感染拡大で、介護現場、障害などの福祉現場はさらに深刻な人手不足におちいっている。介護や福祉などのケア労働は社会を下支えする重要な仕事であるが、平均賃金は全産業平均を月10万円も下回っており、提供体制を強化するためには労働条件の抜本的改善、担い手の育成確保が不可欠である。
     国は2022年に補助金による一定の賃金引上げを実施したが、同年10月以降はその財源を介護報酬に求め、保険料や利用料における国民負担を増やすこととしている。 
     賃金、労働条件の引き上げや改善を国民負担とせず国に求めるとともに、市としての対策も検討すること。

  7. 高齢者の難聴は放置するとうつ病や認知症、ひきこもりにつながるといわれている。しかし、補聴器は健康保険や法的補助が適用されないため、片耳だけで20万円〜40万円の自己負担があり、購入をあきらめている高齢者も多い。すでに全国の自治体で始まっている、補聴器購入助成制度をつくり、高齢者の健康増進を図ること。

  8. 近年の猛暑は命の危険にまで及ぶレベルのものである。他市で実施しているエアコン購入・修理費への助成や電気料金補助を市民税非課税世帯などの低所得者を対象に実施すること。

  9. 高齢者交通助成制度は鉄道会社の協力が得られず事業が中止となった。それに替わる事業として市は、健康ポイント事業と高齢者バス助成制度を2021年度から開始したが、市民の評判はすこぶる悪い。以下、要望する。
    (1)鉄道への利用が可能となる制度構築を研究し、実施すること。
    (2)バス助成についてもバス路線が不十分な本市の特徴から、市民には不公平感がある。バスに加えてタクシー利用が可能な制度に改善すること。

  10. 障がい者(児)施策について 
    (1)社会参加の促進のために視覚障がい者に対して支給している同行援護(ガイドヘルパー)は月60時間であるが、活動的な障がい者は足りない現状がある。時間数の拡大をすること。また、選挙投票への同行支援は別枠とすること。
    (2)日常生活用具給付は、地域生活支援事業の必須事業で、地域の実情に応じ地域が創意工夫し提供するとされているが、本市は中核市の中でも水準が低い。音声血圧計の追加や、点字ディスプレイを現在の「視覚聴覚障害2級以上」から「視覚障害単一」を対象とする、世帯要件を見直すなど、当事者の意見・要望をもとに拡充すること。
    (3)視覚障がい者は聴覚によって得る情報が多いが、加齢性難聴によって情報へのアクセスや、コミュニケーションを阻害されることになる。県市の独自事業で障害者手帳を持たない軽・中度難聴児への補聴器購入補助制度があるが、これにならい、市独自で加齢性難聴の視覚障がい者に補聴器購入補助制度を創設すること。
    (4)点字ブロックや音響式信号機、エスコートゾーンの整備など、当事者の要望に沿ってバリアフリー化を進めること。
    (5)国の基本指針では障がい者入所施設から地域生活への移行を進めるとしているが、地域における居住の場であるグループホームは圧倒的に少ない。また、障がいの状況などによっては入所施設の役割も重要である。どちらも計画的に増やすこと。
    (6)2020年10月に施行された重度障害者等就労支援特別事業は、市町村等が「就労中の支援が必要」と認めた障がい者を雇用する事業主(自営業者も利用可)が、障がい者が行う業務の介助や通勤の援助を重度訪問介護等サービス事業者に委託する場合に、委託費用に対し助成金を支給するものである。この事業は地域生活支援事業の任意事業であるが、制度適用希望者も存在しており、本市でも実施すること。

  11. 生活保護制度、生活困窮者支援について
     生活保護制度は憲法25条が定める生存権保障の土台となっている制度であり、また、最低賃金、就学援助、国民健康保険料の減免基準、公営住宅の減免基準等、生活保護を利用していない多くの国民に関わるさまざまな制度の基準と連動している、まさに生活保護基準は“命の砦”である。
     2013年に平均6.5%、最大10%の生活扶助基準の引き下げが決められ、3回に分けて実行された。この史上最大の生活保護基準引き下げに対して、現在、全国29都道府県、1,000名を超える原告が違憲訴訟を提起し、国・自治体を相手に裁判で闘っている。この裁判は「命の砦」訴訟と呼ばれ、熊本や東京などで勝利している。以下、要望する。
    (1)命の砦にふさわしい制度となるよう、老齢加算の復活、生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)を引き下げるのではなく、引き上げを国に求めること。
    (2)国基準(被保護世帯80世帯に1人)に比べて少ないケースワーカーの増員が一定はかられたが、一部ケースワーカーに代わって見守り支援員が訪問指導を行うなど苦肉の策がとられている。引き続き増員を進めること。また、質を高める研修をおこなうこと。
    (3)申請を躊躇させるような、扶養義務照会を行わないこと。
    (4)近年の酷暑下では、エアコンの使用は不可欠だ。厚労省は2018年以降、新たに生活保護を利用する世帯がエアコンを購入する際に一定の条件で購入費の支給を認めているが、周知が不十分である。周知を徹底すること。また、エアコン買い替えなどは自己負担となっているが、市独自で補助すること。
    (5)電気料金の負担からエアコン使用を躊躇している利用者も多い。電気料金への補助を検討すること。
    (6)市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および上下水道料金の基本料金免除を復活すること。
    (7)離職や廃業に伴い、住居を喪失またはその恐れのある人には一定期間家賃相当額の支給を行う住居確保給付金については、コロナ禍で収入が減少した人も受給できるように制度が改正された。しかし、預貯金保有の要件や、求職活動要件が厳しすぎる。見直すよう国に要望すること。