HOMEへ
2023年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:教育委員会
2022年09月01日

  1. コロナ禍の下でも子どもたちと相談し、一緒に「子ども期の保障」について考え合うことが必要である。以下のことにとりくむこと。
    (1)密を避けられない学校生活の中で、子どもたちも教職員も感染への不安を強く抱いている。定期的かつ必要に応じて、子ども・教職員・出入り業者など関係者全員に対し、積極的にPCR検査を実施すること。
    (2)学びの指導員の配置にあたっては、学校任せにするのではなく、市教育委員会が責任を持って配置につとめること。
    (3)様々な我慢が強いられる中での学校生活のストレスも深刻であり、子どもたちや教職員に対する心のケアは重要である。早急にスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの増員を図ること。

  2. 県知事は30人数学級を選挙時に公約した。直ちに県独自で5・6年生、中学3年生までの35人学級を実現することを県に要望すること。市独自でも実施することを検討すること。

  3. 本市でも子どもの人権と教育の機会均等を侵害するいじめ・貧困・虐待・高学費などの様々な諸問題が深刻である。これらの問題を解決する理念と行動の指針となる「子どもの権利に関する条例」の制定を市独自で検討すること。

  4. ギガスクール構想で、全児童生徒にタブレットが配布された。視力低下や依存症の問題、さらには有害サイトにつながる問題等がある。これらの問題について市教委で検証しその結果を保護者や教職員に知らせること。

  5. スマホの急激な普及で、いじめ、性被害、ゲームへの課金、依存症などの問題が起きている。ネットを正しく使うことを繰り返し児童生徒に指導すること。

  6. 個人の尊厳を守り育むことはとても大事なことであり、誰もが自分が自分であることに誇りを持って生きたいと願っている。しかし、身近な大人や教職員による子どもの性被害や容姿への侮辱、LGBTQへの無理解など課題は多い。以下のことにとりくむこと。
    (1)性的マイノリティーや性の問題など、人としての尊厳や権利について知らせること。
    (2)人権や多様性、ジェンダー平等等について啓発すること。
    (3)幼児期、小学生、中学生、高校生の年齢にあった性教育ができるよう教職員等の研修をすすめること。
    (4)特に、知的障害のある子どもは、性被害にあいやすい、自分の体の水着で隠れる部分は自分だけのものであることや他の人に見せたり触らせたりしてはいけないことを繰り返し教えること。嫌なことをされたら安心できる大人に話すことも伝えること。

  7. 男女とも従来の水着で嫌な思いをしたという声が多数寄せられていたことから「男女共用セパレーツ水着」が発表されている。体のラインが目立たないよう、ゆったりとしたシルエットが特徴である。また、水着で覆われている面積が広いため、日焼け防止の観点でも有効だとされている。採用している自治体は少ないが本市でも児童生徒の意見を聞いて検討すること。

  8. 道徳の授業において、教員の自由裁量を保障し、子どもたちの内心の自由を侵害することのないよう徹底すること。また、子どもたちの道徳的価値の見方や考え方が、多面的・多角的なものに広がるよう授業のあり方も工夫すること。

  9. 平和教育について、以下、要望する。
    (1)平和教育を重視し、平和の尊さとともに、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史的な事実や反省を、児童・生徒に伝えることは、二度と同じ過ちを繰り返さない観点から重要である。公教育のなかで侵略戦争を美化・肯定するようなことは決して許さないこと。
    (2)核兵器禁止条約が発効されたが、日本は唯一の戦争被爆国でありながらこの条約に背を向け続けている。被爆の実相を語り継ぎ、核兵器の非人道性を児童・生徒にも知らせるなど、平和教育をさらに充実させること。

  10. 不登校問題について、以下、要望する。
    (1)登校を優先するのではなく親の不安を解消できるように助言あるいは提案できる関係機関を紹介すること。
    (2)学校とPTAが中心となって不登校保護者交流会を開催している取り組みがある。この取り組みに学んで市でも検討すること。
    (3)不登校児童生徒が学校外の公的施設や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取り扱いについて、市は「不登校児童生徒を支援する民間施設に関するガイドライン」を策定しているが、「出席扱い」については、判断基準がわかりにくい。各学校長が判断しやすいよう「指導要録上出席扱いとすることができるフリースクール一覧」等の取り組みを進めること。
    (4)本市の不登校児童生徒は1000人を超えている。この背景には、過度な競争教育と校則にみられるような管理教育がある。少人数学級を実現し、一人ひとりが大切にされる学校づくりを目指すこと。

  11. 教職員の「超多忙化」・「非正規化」を解決するために、教職員定数の改善を国に求めるとともに、以下の項目にとりくむこと。
    (1)県教職員組合から教員が不足し産休・育休・病休等の代替教員が見つからないことや4月には学級担任がいないという非常事態になっているとの訴えがある。大幅に採用を増やすよう県教委に要望すること。
    (2)国は教員に「変形労働制」を適用し、多忙化をやわらげようとしているようだが、それでは全く解決にはならない。本市において「変形労働制」の導入は絶対にしないこと。
    (3)教員の多忙化解消から部活動については地域へ移行する方向が文科省より出されている。部活動は教育の一環でもあり、そのあり方についてはいろいろな問題がある。地域移行については慎重に検討すること。

  12. 特別支援教育について、次のことにとりくむこと。
    (1)多様な様子を示し、程度もさまざまな発達障がいの子どもが増えている。引き続き教員加配を県に求めること。
    (2)支援が必要な子どもには学校協力員を配置することができるが、あくまでもボランティアという立場であり、1日4時間までという制約がある。そのため支援が必要であるにも関わらず協力員のいない空白の時間が生まれ、現場では困惑している。この際協力員を職員として採用し、1日配置できるように制度を見直すこと。
    (3)特別支援学級に通学する子どもは登校や下校に保護者が付き添っている。2022年から保護者の都合がつかない時は、事前に登録すれば付き添いが学校協力員の付き添いが可能となった。就労については、付き添いが認められないため就労を断念している実態がある。この問題については、健康福祉局と一緒に検討を進めること。

  13. 全国学力テストは子どもに過度な競争を強いるだけでなく、学校間の序列を生むものである。また、市が実施しているリサーチプラン学力テストも同様である。中止とすること。

  14. 県の一斉事業であるトライやる・ウィークは、全中学校一律・一斉で実施するのではなく、各学校で実施しないことも含め、柔軟に対応できるよう改善すること。

  15. 「自然学校」は、教職員の多大な負担となっている。「自然学校」のあり方については、改めて十分検証し、実施日数等を各学校の判断で調整できるよう見直していくこと。

  16. 西宮市は「西宮市学校施設長寿命化計画」を策定し、各学校を80年〜100年長寿命化させるとなっている。しかし、校舎の老朽化で、学習環境は劣悪である。学校施設の老朽化対策予算の大幅な引き上げを政府に要求するとともに、長寿命化計画を見直すこと。

  17. 学校トイレの改善について
    (1)性別に関係なく誰でも利用できる「みんなのトイレ」を設置すること。
    (2)すべてのトイレを洋式化すること。
    (3)生理の貧困解消のためにも市内全学校の女子トイレに生理用品を設置すること。

  18. 近隣他市と比較し、本市の学校司書の配置は圧倒的に少ない。学校司書の配置を拡充していくとともに、早期に専任の司書教諭を全校に配置すること。

  19. 「直営自校方式」で実施されている西宮市の小・中学校での学校給食は、食育の観点からも子どもたちの健康と成長を守る上でも大きな役割を果たし、保護者からも喜ばれている。以下のことにとりくむこと。
    (1)将来的にも「直営自校方式」を堅持すること。
    (2)正規調理員を基本とした人員を確保すること。
    (3)夏場の調理室では40℃を超えることもある。調理員の健康面でも食材等の管理の面でも、空調の整備が必要である。早急に整備すること。
    (4)給食費の無料化に踏み切る自治体が広がっており、給食は食育であり、よって教育費の無償化という教育基本法や憲法の精神に立ち、無料化を検討すること。

  20. 「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」は、「教育環境保全」に十分な効果を発揮しているとはいえない。仮設教室での対応が可能であれば規制の対象外としていること等にその原因がある。規制強化の方向で要綱の内容を抜本的に見直し、条例化を検討すること。

  21. 2021年4月より1〜3歳児を対象とした「特区小規模保育事業」は、子どもの成長の幅が大きく、適切な保育が行われるのか懸念がある。また市立幼稚園の預かり保育事業もあくまでも「預かり」であり、十分な保育の質を保つことができるのかは甚だ疑問である。保育の質を保ちつつ待機児童を解消する策として、市立幼稚園の認定こども園化を検討すること。

  22. 県教育委員会は、2022年3月17日、全日制県立高校125校のうち、2025年度には9校、2028年度には6校、計15校を削減し110校にする「県立高等学校教育改革第三次実施計画を発表した。さらに、7月14日には、2025年度実施対象校を発表した。その中には県立西宮北校、県立西宮甲山校が統合対象校となっている。県教委は、普通科・総合学科で1学年6〜8学級が望ましいとしている。
     しかし、当事者である生徒や保護者の意見、市教委の意見を聞かずに進めることは問題である。今こそ、一人ひとりを大切にする少人数学級にすべきである。以下、要望する。
    (1)市教委として生徒や保護者の意見を聞く場をもち、県教委からの説明の場を設けること。
    (2)このような統合計画は撤回するよう県教委に求めること。