HOMEへ
佐藤みち子の一般質問
2022年12月08日

子どもたちにもうひとり保育士を! 〜保育士配置基準について〜


 静岡県裾野市の民間保育園で3人の元保育士が園児への暴行の疑いで逮捕されました。子どもの命を守り育てる保育の現場でのあり得ない事件ですが、このようなことに至った背景に何があるのか掘り下げて解明してほしいと思います。この事件以前には、認定こども園の送迎バスに子どもが取り残され亡くなる事故がたて続けに起こりました。
 政府は対策として「子どものバス送迎・安全徹底プラン」を10月に発表し4月から通園バスに安全装置の設置を義務付け費用の一部を国が補助します。この政府の対策について現場からは、安全装置の設置だけでは不十分、何よりも保育士を増やすことが必要だとの声が出されています。実際にバスの送迎をしている福岡県の認可保育園では、送迎バスや園児の出欠管理、保育中の動静把握等の点検のやり方を見直すことにしました。しかし、現行の保育士配置基準では一方を手厚くすると、ほかの場所で新たな事故のリスクが高まりかねないとも指摘しています。そのためにも、3歳児で20対1、4~5歳児で30対1と少なすぎる保育士配置基準を引き上げ、一刻も早く処遇改善してほしいと述べています。
 
 国の保育士配置基準は、1948年、戦後まもなく定められ当時0・1歳は10対1でした。現在から見るととんでもない配置基準です。この基準では保育士がトイレに行くことさえできません。保育どころかケガをしないよう見ているだけで精一杯だったのではないでしょうか。その後、0歳児の国配置基準は8対1、6対1になり1998年現在の3対1になりました。1・2歳児は1967年に6対1に3歳児は1969年に20対1になりましたが、この基準は現在まで50年以上変わっていません。4・5歳児の30対1は1948年に定められて以来なんと74年間変わっていません。保育関係者は長年に渡って保育士の配置基準の改善を要求してきましたが、国はその要求を無視してきました。
 そんな中、全国に先駆けて、愛知県では保育士配置基準の改善を求めて「子どもたちにもう一人の保育士を!」を合言葉に、保育士や保護者、市民団体でつくる実行委員会が、保育士配置基準の改善を求める運動を始めています。11月15日、戦後70年以上変わらない保育士配置基準を早急に改善するよう提言を発表しました。
 
 保育士配置基準の改善を求める運動のきっかけになったのがコロナが始まった2020年春です。登園自粛でいつもの半分くらいの子どもを定員の配置基準どおりの正規職員のみで保育をしていました。保育士からは「人数が減ったことで、子どもたち一人ひとりの声が聞こえて、願いをちゃんと聞いてあげることができた」「なんか私、一日大声を出していない」「待っててね。あとでねって言っていない」少人数の静かな部屋で子どもたちが遊びに集中していて、保育士自身も大きな声を出していないことも発見でした。このことは、保育士配置基準がふだんの2倍に引きあがったら、もっと一人ひとりの子どもを大事にする保育ができるんだと実感したとのことです。現場では、日頃の保育でしんどいことがいっぱいあるのは、それは配置基準が貧しいからだということに改めて気がついたということです。
 
 保育士配置基準の見直しを進めている愛知の実行委員会が行ったアンケート結果はとても興味深いです。今の配置基準では、「子どもの命と安全を守れない」その場面として「災害時」と答えた人が84%です。他に「お散歩」60%、「プールなど水遊び」58%、「早朝夕刻時の保育」は43%でした。保育士が子どもの命を守れるか、常に心配しながら日常の保育をしていることが浮き彫りになりました。このことからも国や自治体の責任で自信をもって命を守れる体制をつくることが必要です。
 地方議会では、2022年3月から9月までの間、保育士配置基準の見直しを求める意見書採択が14議会となっており、兵庫県内では高砂、伊丹市議会が意見書を採択しています。

 先日、市内の民間保育園の保育士さんの話を聞く機会がありました。現場では、気になる子どもが増えているとのことです。気になる子どもとはどんな子どもなのでしょうか。例えば、じっとしていられない、暴力的、泣くと止まらないなど、発達障害の診断を受けていないけどいわゆるボーダーラインの子どものことです。保育士が足りないので、気になる子どもたちにじっくりかかわることできていないことが心苦しいとのことです。幼児クラスも複数担任ならば、もっと子どもとじっくり関わることができるとのことです。また、保護者の中にもDV被害者がいたり心を病みがちな保護者もいて、言葉かけなども難しく信頼関係を築いていくことに大変との話もありました。保育園の中に保健師や看護師がいたらどれだけ心強いだろうかという声もありました。

 さらに、民間保育所は地域の子育て支援も担っており、保育士の多忙化は凄まじいです。果たさなければならない役割だけがどんどん大きくなっていくのに配置基準は昔のまま、現場では、超多忙化で有休も消化できず、生理休暇も取れなくなっており、これらの要因で保育士が疲弊し退職につながっています。また、心の病気になり仕事を辞めざる得ない状況も起こっています。配置基準を見直して保育士を増員すること、さらには、臨床心理士、看護師や保健師など保育士以外の専門職を配置することも今の時代の課題であると感じ、保育士だけの頑張りに頼っていることに怒りが湧いてきます。保育士が元気にイキイキと働き続けることこそが、子どもの育ちや保護者支援にはとても重要です。

 西宮市では1,2歳児は国基準より手厚く5対1としています。それ以上に横浜市は1歳児については4対1、新潟市は3対1と、本市よりさらに手厚くしています。2011年地方分権一括法による児童福祉法の一部改正によって保育士の配置基準、面積基準も都道府県、指定都市、中核市の条例で定めることになりました。国に強く保育士配置基準の改善を求めるとともに市自らが配置基準を改正することが必要です。

質問
  1. 保育士配置基準は戦後すぐに決められ、その後3歳児の20対1は53年間、4,5歳児の30対1は74年間変わっていません。このことについての市の見解を聞く。

  2. 現在、市では保育士配置の国基準に上乗せして、1・2歳児は5対1、3歳児は15対1、4,5歳児は20対1の配置となっている。この現状の配置基準について市はどう評価しているのか。

  3. 横浜市は1歳児の配置基準を4対1、新潟市は3対1としている。本市でも現場では1歳児4対1を要望している。市でも調査・検討すべきではないか。

  4. 現在の保育士配置基準からさらにもうひとり保育士を増やすこと、特に幼児クラスを複数配置にすることは子どもにとってどのようなメリットがあると考えるか。

  5. 保育の現場では、障害児や発達障害があると認定された子ども以外にも保育士の感覚として気になる子どもが増えているとのことである。しかし、保育所側の加配配置が必要との考えだけでは、保育士が配置されず市の判定が必要である。判定するには保護者の同意が必要であるが、このことで保護者と保育所側との関係が悪くなったりする例もあるとのことである。この問題に対する市の見解を聞く。

  6. 市では現在保健師が2カ月に1回巡回し気になる子どもの対応など助言をしているが、現場では常時、看護師や保健師、臨床心理士などの保育士以外の専門家の配置を望んでいる。市の見解を聞く。