HOMEへ
野口あけみの反対討論
2023年03月22日

議案第579号 西宮市個人情報保護条例制定の件について


 議案第579号 西宮市個人情報保護条例制定の件について日本共産党西宮市会議員団は反対します。以下、理由を述べます。

 2021年に公布されたいわゆるデジタル関連法で、国や自治体が持つ膨大な個人情報の「データ利活用」を成長戦略に位置づけました。その際、自治体ごとに個人情報保護の規定・運用が違うことが、「データ利活用、流通」の支障になると、個人情報保護法が改正され(以下、改正法という)、自治体の条例はいったんリセットされ、一元化されました。
 提案の西宮市個人情報保護条例案は、基本理念を定めたうえで改正法の施行に関し必要な事項を定める、いわゆる施行条例です。

 では、この改正法と現行条例(このたび提案の改正前の条例を言う)との相違はどういったところにあるでしょうか。現行条例により規定していた個人情報の根幹部分は改正法でも維持されているというのが当局の説明でしたが、党議員団は個人情報保護の水準が改正法では低下している点が多々あることを指摘しました。総務常任委員会で議論指摘したもののうち4点について述べます。
 1点目、個人情報の定義です。提案されている条例では改正法の例によるものとされ、改正法の定義では「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」は個人情報に入ることになっています。しかし、現行条例では「容易」という文言はなく、これまでなかったこの「容易」という言葉が入ることで保護水準は格段に低下します。
 2点目、行政による個人情報の収集の規制も緩和されます。現行条例では、利用目的の明示とともに本人から直接取得することを原則としていましたが、改正法では、利用目的の明示はありますが、本人から直接取得する原則の規定はありません。
 3点目、思想信条や宗教、身体に関する情報、社会的差別の原因となる情報について、いわゆるセンシティブ情報は、現行条例では原則、取得保有をしてはならないとしています。しかし、改正法では行政機関に対する適用はありません。
 4点目、オンライン結合について。現行条例では漏洩、プライバシー侵害のリスクを極力低減させるために禁止していましたが、改正法ではそのような規定はありません。むしろ、国・政府の見解はオンライン結合の禁止は、「個人情報の円滑な利用を阻害する」ものとしています。
 このように総じて個人情報の保護水準が低下してしまうのが改正法の根本的な問題点です。これは先に申し上げました通り、今回の法改正が行政デジタル化による個人情報の「利活用」を大きな目的にしているからです。
 さらに、改正法では他の情報と照合しない限りと特定の個人を識別することができない仮名加工情報や匿名加工情報の作成についても規定があります。両加工情報を作成し、都道府県や政令市においては、民間企業などへの提供を前提とする提案募集が義務付けられました。
 こうした「加工」したとはいえ、個人に関する情報を外部に流通させ、目的外利用が可能になることに、個人情報保護はどうなるのか、という不安は尽きません。個人情報を匿名加工しても、AIで解析する技術をもつ企業であれば容易に個人を特定できるともいわれています。中核市や一般市町村では今のところ任意ですが、いずれ義務化が押し付けられるであろうことは予想されます。
 個人情報の漏洩事件は多く起こっています。そもそも、法の趣旨にある「個人情報保護」と「データ流通」の両立には無理があります。「データ流通」「利活用」よりも国民市民の情報漏洩への不安に十分こたえることが法や条例に求められているのではないでしょうか。また、EUなどでは基本原則となっている自己情報コントロール権が改正法では明確にされていない点は、日本弁護士連合会も「構造的な欠陥」と厳しく指摘しているところです。
 以上の理由から、党議員団は議案第579号に反対するものです。

 併せて、後の日程で議題となります、議員提出議案第10号 西宮市議会の個人情報の保護に関する条例についても意見を申し上げます。
 議会は改正法の対象外となっており、議会も引き続き個人情報保護の対象としていくために、何らかの議会の個人情報保護の条例化が求められます。しかしながらこの度の提案は、議会が「共通ルール化」の適用対象から除かれているにも関わらず、改正法の規定に準じた内容となっており、先ほど述べました理由の通り、反対するものです。