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野口あけみの反対討論
2023年03月22日

議案第594号 令和5年度西宮市一般会計予算、議案第595号 令和5年度西宮市国民健康保険特別会計予算、議案第596号 令和5年度西宮市食肉センター特別会計予算について


 ただいま上程中の諸議案のうち、議案第594号 令和5年度西宮市一般会計予算、議案第595号 令和5年度西宮市国民健康保険特別会計予算、議案第596号 令和5年度西宮市食肉センター特別会計予算、以上3件につきまして、日本共産党西宮市会議員団は反対いたします。以下、理由および意見などを述べます。

 過去に例を見ない物価高騰が続いています。一方で我が国の労働者の一人当たり賃金は過去30年にわたりおおむね横ばいです。今年の春闘では、8割程度の企業が賃上げを予定しているものの、賃上げ率5%以上が見込めるのは3割未満とのことで、物価上昇分を上回る賃上げが実施されるかはまだ見通せません。
 年金についても、マクロ経済スライドによるこの間のマイナス改定で、国民年金では40年かけ続けての満額でも月65075円。とても物価高騰に追いつくものではありません。市民、国民の生活は窮地に立たされています。
 政府は新年度予算での物価高騰対策として、低所得世帯に一律3万円、低所得の子育て世帯に子ども一人当たり5万円を給付する方針を発表しましたが、あまりにせこいと話題になっています。「低所得の定義によっていくらでも対象を狭めることができる。一応やっときました感だ」と手厳しいコメントを識者から聞きました。所得での差を生み、国民の中に分断をつくる、このようなやり方はいただけません。政府に対しては、政治の責任で中小企業を含む賃上げに本腰を入れること、もっとも有効な物価対策である消費税の5%への緊急減税、物価高騰だからこそ社会保障と教育の負担軽減を求めます。

 また、政府は昨年末、軍事費5年間で43兆円と敵基地攻撃能力の保有を書き込んだ安保3文書なるものを閣議決定しました。これは、「専守防衛」を投げ捨て、米軍と完全に融合・一体化して先制攻撃を含む海外での戦争に乗り出そうとするもので、新年度には2000億円を超える米国製ミサイルの購入や、大型弾薬庫の建設を予算化。さらに防衛省は47都道府県全体にわたる283地域の自衛隊基地・防衛省施設の約2万3000棟を核攻撃にも耐えられるよう地下化や、構造強化するなどの強靭化計画を立て、この計画について新年度国家予算案を国会に提出する前に大手ゼネコンを集め説明会を開催しているのです。国民の知らぬ間に戦争準備が着々と進み、いつの間にか「いつか来た道」、絶対にこんなことを許してはなりません。

 さて、そうしたなかでの市の新年度予算は、一般会計で1952億3200万円と、前年度比マイナス3%で、阪神淡路大震災直後の1995年度を除き昨年度に続いて2番目の規模です。今後景気の持ち直し傾向があると市税などの増収を見込んでいますが、そうなることを願うところです。以下、順不同になりますが市政に関しての指摘、意見を10点にわたり申し上げます。 

1,光熱費の高騰、建設資材の高騰など物価高騰は、市財政にも大きな影響を与えています。今後も予断を許しません。
 中央運動公園体育館整備や統合新病院建設にかかる費用は、当初見込みより大きく膨れ上がりました。また、先日、卸売市場の再整備を含むJR西宮駅南西地区第一種市街地再開発事業においても、これまで再開発組合で事業費が賄えるとしてきたところ、組合より事業費不足の相談を受け、国県市の補助金導入の必要性、可能性が高まってきたとの報告を受けたところです。
 今後予定されている、中央図書館新設と阪神西宮駅周辺整備を含む市役所周辺整備事業や、まだ10年は先とされていますが、阪急武庫川新駅設置事業など、投資的事業については、その時期や規模など、よくよく精査されて過大にならないよう求めておきます。
 また、名神湾岸連絡線はこれまでも指摘してきたとおり、不要な公共事業の典型です。道路の足元に暮らす今津周辺住民の環境や健康、移転を余儀なくされる事業所を犠牲にするこの事業については、事業主体も現時点で定まっておりません。改めて中止を求めます。

2、兵庫県の方針などが本市市民にも重大な影響を与える問題についてです。
 一つは、県立甲山高校と県立西宮北高校との統廃合問題。二つは、三田の市民病院と済生会兵庫県病院が統廃合によって、済生会兵庫県病院がいまの岡場からなくなり、西宮北部住民の医療が奪われるという問題です。どちらも、市行政が直接かかわり、決定できる案件ではありませんが、事は、西宮の子どもたちや、西宮の住民が苦難を強いられようとする重大問題です。西宮市は、「我 関せずの態度」を改め、住民の切実な声を受け止めて、その声を関係機関に届け、表明することを強く求めておきます。

3,マイナンバー制度について 
 そもそもマイナンバーカード取得は法律では任意であり、政府の個人情報保護委員会に寄せられた報告では、2017年から21年度までの5年間で約5万6千人分のマイナンバー情報が漏洩、情報の入ったUSBの紛失試験などが発生しています。
 安全性への懸念や監視社会への不安から、国民のカード取得が政府の思い通りに増えない中、マイナカード取得がデジタル社会のキーとのことで、政府は新規に取得すると最大2万円のマイナポイントがもらえると50億円近い広告費を使って大宣伝し、2月末までの本市での申請は82.33%、交付率は65.59%となりました。マイナポイント事業では総額2兆1千億円の国費が費やされています。
 このようなアメ作戦でもまだ足りない100%普及を目指すと、今度はムチ作戦に出ようとしています。現在、社会保障と税、災害対策の3分野に限定しているマイナンバーの利用範囲を、国家資格更新や自動車登録などにも拡大するとともに、現行の健康保険証を2024年秋に廃止したうえで、マイナ保険証を義務付け、これを持たない国民にはマイナ保険証より窓口負担が増える資格確認書の発行をもくろんでいます。岡山県備前市に至っては、保育料や学校給食費の無償対象を家族全員がカードを取得した世帯に限定するという、教育の機会均等に反することまで実施されようとしています。便利でも必要でもないカードをアメとムチで強引に利用拡大を図り、持ちたくない国民にカードを強制する政策は直ちにやめるべきです。

4,デジタル化に関連しては、行政システム標準化についても申し上げます。政府は、国を挙げてのデジタル推進のなか、これまで各自治体で独自に導入して来た行政システムのうち20業務を2025年度(R7年度)までに全国の自治体で統一化、標準化しようとしています。現在稼働中のシステムとの差異や共通点を探るフィットアンドギャップ作業を経て、国の標準に見合うシステムを新たに導入する必要があります。現在市では20業務中新年度予定の業務を含めて17業務でフィットアンドギャップ作業が終了もしくは進行中であり、新年度は2業務で新システムを導入予定とのことでした。莫大な国費が費やされるこの事業ですが、これまで積み上げてきた市の施策等が、標準化の名のもとに切り捨てられることなく、もれなく実施できるように留意することを求めます。

5,業務委託と指定管理者制度における市の管理、監督責任についてです。コロナワクチン接種コールセンター業務における再委託業者の過大不正請求事件が発覚しました。公務で行うべき業務が公務員削減や経費節減等々の目的で次々と民間委託、あるいは指定管理者制度による執行となって久しくなります。すでに代表質問でも申し上げました通り、業務は委託してもその業務執行に対する市の責任は厳然とあり、適正な業務執行を管理し監督する責任を、市は果たさなければなりません。問題はその体制や仕組みが不十分なことです。
 所管課が目を光らせるのはもちろんのこと、所管課だけに任せるのではなく、政策局や財務局も民間委託導入に際し支援する如く、導入後も執行状況の管理監督に対して必要に応じて支援をする新たな仕組みや体制などについて検討を求めます。  

6,こども医療費助成制度と学校給食費無償化
 所得に関わりなく、子育て支援は等しく行われるべき、との声が子育て世代の間で広がっています。もはや低所得者のみを対象に子育て支援を行う時代ではありません。子育て、とりわけ教育に経済的負担が重くのしかかる状況は、少子化対策としても真っ先に対応解決すべき課題です。本市におけるこども医療費助成制度も40年以上にわたる市民の声のなかで少しづつ対象が拡大され、ようやくこの1月18歳までのすべての子どもが一部または全部助成を受けられるようになりました。今度は一部助成か全部助成かの、所得での差を取り除き、完全無料化するまであと一歩です。市長も公約に掲げておられます。一日も早い実施を、くどいようですが求めます。
 学校給食費の半年間無料も歓迎するものですが、新年度は継続できませんでした。引き続き党議員団は市民とともに求めます。

7,保育所待機児童対策と保育所の在り方について
市は待機児童対策として、特区小規模保育所を誘致し設置しました。特区小規模保育所では、1歳児から3歳児を保育し、そこを卒園したのちは、公立幼稚園、夙川、越木岩、高木の3園の、4歳児クラスに入園が可能となります。現在、特区小規模保育所は8カ所で1施設19人定員となっていますが、定員を下回っている施設が多く、保育や運営面で課題を抱えておられるのではないかと思います。
 また、これも待機児童対策として誘致された、高須東小学校跡地のパーク&ライド方式の保育所は、市内各地、遠方からでも車で保育所まで子どもを送迎し、保育所内駐車場を利用、最寄り駅から通勤してもらうというものです。保育所内駐車場は60台分もあり、そこでの子どもの乗り降りは、事故を起しかねないと、2017年12月議会で、駐車場の安全対策を求めました。しかし、開園以来、駐車場の利用はほとんどありません。いくら車社会だといえ保育所への毎日の送り迎えに、遠方から車でというスタイルがなじまないということです。
 市が実施した、これら待機児童対策は失敗だといわなければなりません。やはり、就学前まで安心して通える認可保育所の増設こそ、保護者の願い、ニーズであり、これにこたえるべきです。
 今後の「幼児教育保育の在り方」の報告がありました。ここでは、公立幼稚園と公立保育所を統合して公立認定こども園とすること、少子化を見据え定員の見直しなどの方針が打ち出されましたが、課題は多いものと考えます。2年後には第1号として浜脇幼稚園と浜脇保育所の認定子ども園化が計画されていますが、関係者の意見をよく聞き、拙速に進めないことを求めます。
 また、少子化対策としては安易に保育所を削減せず、70年来変わっていない子ども一人当たりの面積基準や保育士の配置基準を見直して、一人ひとりを大切にする保育を求めるものです。

8、民設民営学童保育について
 学校内で育成センターを整備できない場合等の対策として、2020年度より市は民設民営放課後児童クラブを公募し開設しました。定員は25名から37名で現在6カ所設置されており、2023年4月より新たに3クラブが開設予定です。この民設民営学童は、市費が投入されることから、厚生労働省の規定と市の条例に基づいて運営されることになっています。
 育成センター事業は、子どもたちの命と成長を見守っていくとても重要な事業です。その事業を企業にゆだねていくことは大きな問題あり、と指摘しておきます。

9,西宮浜義務教育学校についてです。
 2020年4月、西宮浜小学校と西宮中学校を統合した義務教育学校が開校しましたが、その際の市教委の説明は、以下の通りです。「今後、西宮浜小学校に地元から入学してくる児童数は毎年30から40名で推移すると予想されるため、適正規模の維持は喫緊の課題となっている。人口島という特殊な地理的条件を鑑みると統廃合することは困難であり、両校が培ってきた小中一貫校を土台とし、さらに魅力ある学校づくりを進めるため、義務教育学校を設置し、西宮浜以外の地域からの通学も可能としていく」というものでした。
 しかし、現在、6学年中5学年が単学級で、市教委がいう適正規模の維持、すなわち単学級を避けるという思惑通りに学校運営が進んでいません。地域外の申し込みは、2020年度は21人、2021年度20人、2022年度20人、2023年度は12人と、減少傾向にあります。このことについて、市教委はコロナで学校の魅力が充分伝えきれなかったと予算分科会で説明しましたが、今後、むしろ少人数学級や小規模校の特性を生かすなどの新たな学校運営方針の検討が求められるのではないか、と申し上げます。

10,最後に、施策の前進面についても触れたいと思います。
 新年度より、公立保育所において使用済み紙おむつの持ち帰りがなくなり、園で処分することになりました。私立保育所などにおいても同様に実施する際には補助するとのことです。保護者にとっては大きな負担軽減です。歓迎するものです。
 この間、党議員団は小中高校の女子トイレへの生理用品配置を求めてきました。市教育委員会は保健室に取りに来てもらうことが教育上からもふさわしいの一点張りでしたが、新年度に兵庫県で県立高校並びに私立学校に生理用品配置が予算化されたことを受け、一転して市立高校では新年度から、市立小中学校でも遅くとも2024年度から生理用品のトイレへの配置が予定されることとなりました。方針の転換をこれも歓迎するものです。
 児童相談所設置検討の開始について。市では新年度早速に県との協議を開始するとのことです。児童虐待問題でも障害児対策でもかなめとなる重要な機関です。専門家の確保など課題も多いとは思いますが、できるだけ早期に設置できるよう望みます。
 加齢性難聴補聴器購入費助成制度創設についても市のガードはなかなかに硬いようですが、つどい場や西宮いきいき体操などでのフレイルチェックに難聴に関する項目を追加するとのことです。ほんの少しの前進ですが、党議員団は引き続き実現できるまで求め続けたいと思います。 
 以上、議案第594号 令和5年度西宮市一般会計予算に対しての討論です。

 次に、議案第595号 令和5年度西宮市国民健康保険特別会計予算については、別の日程で議案614号国民健康保険条例制定の件で討論した通りの理由で反対です。

 最後に、議案第596号令和5年度西宮市食肉センター特別会計予算についてです。
 食肉センターの2023年度予算は、主に、電気代の高騰、処理頭数の減などで、一般会計から2億4,450万円を繰り入れるもので、この額は、昨年より4,500万円増えています。党議員団は、長年にわたって一般会計からの繰り入れを廃止するよう求め、民営化や廃止を提案してきました。これらのことからこの特別会計予算に反対します。