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野口あけみの賛成討論
2023年07月05日

国に対し「再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める意見書」の提出を求める請願


 ただいま上程中の請願第1号  国に対し「再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める意見書」の提出を求める請願について、日本共産党西宮市会議員団の賛成討論を行います。
 
 本請願は、ひとたび確定した判決であっても、もし冤罪のおそれがあるならば、人道的観点から、あるいは基本的人権の尊重の趣旨から、できる限り刑事司法制度のなかで救済することが必要であるため、冤罪の可能性がある場合には確実にすみやかな再審の道を用意しよう、そのために再審開始を長引かせている現制度の主だった欠陥2点の改善を求め、国に対し意見書提出を求めているものです。
 
 無実の人が誤ってとらえられ不当に罰せられる、えん罪事件は今も後を絶ちません。そもそもえん罪が生まれてしまう背景には警察や検察の無理な取り調べや自白の強要などがあり、取り調べの可視化などにも取り組まれるようになりましたが、現時点では、裁判員裁判に付される事件のみとわずかであるとのことでした。冤罪を生み出さないとりくみは、この取り調べの可視化の完全実施や、例えば、日本弁護士連合会が提言している、えん罪原因究明のための公正中立な第三者機関の設置などが必要です。あわせて、最悪の場合には死刑になってしまう無実の人を救出できる最後の手続である、再審請求と、のちに行われる再審公判が速やかに行われることは人権保障の観点からもどうしても必要です。

 再審は、刑が確定したのち刑の言い渡しを受けた者が、いわゆる新規明白な証拠をもとに再審請求をし、それを受けた裁判所が取り調べ結論を出します。この過程が再審請求審です。そして、裁判所が新規明白な証拠と認めた場合のみ、再審裁判が開かれます。
 この再審制度は刑事訴訟法に定められていますが、法の改正はされたものの再審の規定については1948年に定められて以来74年間改定されておらず、全19条の、極めておおざっぱな規定となっています。
 そして、再審開始に気が遠くなるような時間を要し、困難にしている原因の一つが、全ての証拠を握っている検察が自分に不都合な証拠、すなわち被告に有利な証拠を提出しないことです。先ほども申し上げた通り、再審を請求するには、刑の言い渡しを受けた者が、いわゆる新規明白な証拠を示さなければなりません。しかし、再審請求手続きにおける証拠開示は、明文の規定が存在せず、裁判所の裁量にゆだねられています。2016年の同法改正の折にその問題点が指摘され、再審請求手続きにおける証拠の開示等について検討するものと附則第9条第3号に定められましたが、いまだ検討がすすんでいないとのことです。こうした経過からも、請願にある「再審における検察の手持ち証拠のすべての開示を制度化する」というのは、当然の要求です。

 国連の人権条約機関、自由権規約委員会からは1993年以来何度も、「弁護人が警察の関係資料にアクセス権利がないこと」、つまり、検察官による証拠開示義務がなく、弁護側にも証拠開示を求める一般的な権利がないことに懸念が表明され、弁護側がすべての関係資料にアクセスできるよう法律と実務を確保すべきことが勧告されています。これは日本の公判手続き全般にわたって言われていることですが、被告人側が証拠を提示しなければならない再審においてはさらに必要なことと言わなければなりません。

 欠陥の2点目は、検察による不服申立てです。何年、時には何十年もの困難な闘いを経て再審開始決定が出されても、検察官が不服申立てをすることができるため、再審開始が遅らされたり、取り消されたりしています。これもまた、再審制度を有名無実化する元凶です。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなど欧米諸国や、韓国、台湾などでも、検察の不服申立ての禁止は既に取り入れられており、証拠の開示についても事前・全面開示を義務づけるなどされているとのことでした。
 
 総務常任委員会の審査では、法に精通しているとは言えない市議会での議論はなじまない、市議会ではなく専門家の声を聴くべき、国での議論を待つなどの意見がありましたが、現再審制度の欠陥のうち、請願項目の2点は、冤罪被害者を救おうという立場に立つならば、専門家でなくとも十分理解できることではないでしょうか。
 
 これら再審制度の改善は、法曹界や専門家に任せるのではなく、市民が関心を持つこと、世論の喚起が必要です。実際、再審事件の動向は全国的に報道され、中学や高校の教科書でも取り上げられています。その世論喚起の一つとしてこの請願を直ちに採択し、西宮市議会から、再審法(刑事訴訟法の再審規定)の改正を求める意見書を国に挙げようではありませんか。以上、討論とします。