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野口あけみの反対討論
2023年07月05日

令和5年度西宮市一般会計補正予算


 議案第8号 令和5年度西宮市一般会計補正予算(第3号)のうち、政策局所管の行政経営推進関係委託料3000万円と債務負担行為補正、内部経費適正化によるコスト削減支援業務4億円、および財務局所管の税関連システム標準化対応委託料2億746万円と、債務負担行為補正、税務システム標準化対応業務9億310万円について、日本共産党西宮市会議員団は反対いたします。以下、理由を述べます。
 まず、内部経費適正化によるコスト削減支援業務です。これは、本市の財政状況がきわめて厳しいとして、経常的な内部経費を削減することが緊急の課題ととらえ、?施設管理、清掃、警備など委託料、?情報システムなど使用料及び賃借料、?消耗品費、?その他受託者と協議する費目を削減するために、公募事業者に、3000万円の委託料で、市の契約書・仕様書等の内容の分析と、コスト削減策を企画立案させ、場合によっては契約時に立ち会わせるなどのコスト削減に向けた具体的活動支援を行わせようとするものです。来年3月、今年度末までを業務期間とし、来年度6月ごろまでに支払額を算定し、最終報告書を提出させます。あわせて、業務の一つとしてそのノウハウを市職員に研修し、来年度以降は市独自で内部経費削減に取り組むとしています。

 現時点での見直し対象となる経費は約80億円程度としており、その1割を削減目標として、成果連動型民間委託方式を採用し、削減額の50%、予算では4億円を成果報酬として支払います。この業務は昨年度末にはサウンディング型市場調査を準備し、参加申し込みは3月27日に開始され、サウンディングは5月16日に実施。この結果がこの度の予算案の根拠となっています。
 今後の公募型プロポーザルについてのスケジュールでは、市のホームページによりますと、すでにこの6月1日に募集開始、参加表明等の提出期限は6月15日、企画提案書の提出期限は6月26日、7月4日昨日と、5日本日の2日間でヒアリングを実施し、委託先候補を特定するとしています。さすがに契約締結は8月上旬とのことですが、補正予算が通るか通らないかのタイミングで、委託先を特定しようというのです。
 全国的にも自治体で内部経費削減のために成果連動型民間委託方式を採用しているのは、鎌倉市、横浜市、渋谷区の3自治体で、まだ評価の定まった業務ではありません。

 問題点を大きく3点指摘したいと思います。
 1点目は、全国的にも自治体での導入実績が圧倒的に少ない成果連動型民間委託方式という新しい手法を採用しようというのに、議会に対する説明が圧倒的に不足しているという問題です。不足どころか、当局は3月から準備していたにもかかわらず、これまでただの1度も議会に対する説明はありませんでした。
 「本市の財政状況はきわめて厳しい、経常的な内部経費を削減することが緊急の課題、一刻を争うものだ」、財政状況が厳しい厳しいと政策局長は過度に強調していましたが、それはともかく、当局がこの業務の必要性を強調すればするほど、ではなぜ議会を、ひいては市民を置いてきぼりにするのか、という疑問と、議会「軽視」、拙速な進め方に対して怒りがわいてきます。
 これまで市は、新規事業や業務、大きな事業見直しなどについて、事前に委員会の場であったり、各派幹事長や所管の委員などに個別ででも、概ね説明を怠ってこなかったと認識していました。その内容の正否、賛否はともかく、議会に対して真摯に向き合ってこられたと評価をしていました。しかし、この度のことは、これまでの信頼を裏切るに等しいやり方です。
 委員会では局長から丁寧さに欠けていたとの発言がありましたが、他の委員からも同様の指摘があり、また、拙速すぎる、手順が悪いと当該予算を削除する修正案が提案されました。

 2点目は、あまりにも不確定要素が多いという点です。本会議質疑では、「市内における公共調達の面で市民生活に影響がある経費が、どこまで今回の業務の対象となるかは、受託事業者と協議する」と答弁されましたが、総務常任委員会のやりとりでも、「すでに議会での指摘や当局が課題としてきたものについては除外するが、その詳細は今後事業者と協議し確定」「成果額をどう算出するかも事業者と協議」「今年度のみ経費削減できてもリバウンドが起こらないとも限らない。その際のアフターフォローも事業者と協議」などなど、契約後に協議して決めるとし、現時点では不確定なことがあまりにも多すぎます。このままでは、事業者の言いなりになるのでは、と危惧します。

 3点目、新たな官製ワーキングプアを作り出すことにつながりかねないという問題です。
 施設管理、清掃、警備などの委託では、その多くが人件費です。人件費が委託料に占める割合は資料を持ち合わせていない、わからないとの当局答弁でしたが、業務内容、形態からも十分推測されます。また、市内業者が担い、市民が多く従事していることも推測されます。当局は、最低賃金は守られるもの、他市との比較などで削減などと答弁されましたが、この経費削減は市民生活に影響が出るものと考えられます。本会議質疑への答弁では、「直接・間接に市民生活に影響がある経費をどこまで対象とするかは、慎重な対応が必要になる」とのことでした。
 働いても働いても貧困、というワーキングプアは、ひところ社会問題となりましたが、今も問題は解決していません。市の業務に携わる民間労働者のワーキングプア、公共が生み出すワーキングプアも同様に問題となりましたが、解決されていません。これをいっそう進めるようなことは決してあってはなりません。
 以上、3点に絞って問題点を指摘し、反対します。

 次に、税関連システム標準化対応業務についてです。
 2021年5月、デジタル改革関連法の一つとして、「地方公共団体情報システム標準化法」が成立しました。これは、これまで自治体が、独自のシステムとサーバーで自主・自律的に管理していた住民基本台帳や税、健康保険など20の行政事務を、国の定める一元的なシステムへ2025年までに移行することが義務付けられたものです。
 本市ではすでに、現行市システムとの共通点と差異を探るフィットアンドギャップ作業を、必要とされる19業務中17業務まで着手、この度の税関連システムでは今後おおむね2年半かけて国システムに移行するというものです。市の現行システムとのフィット率は半分以下であり、今後細かい運用も含め、国システムに適合させ、どうしても移行できず、残すべきものについてはサブシステムとして残すことも、この間に検討するとのことでした。
 税関連システム標準化対応業務の総事業費は11億1千万円余り。国の事業であり、全額、10分の10、国の補助金によるものと説明を受けてきましたが、本業務への国の補助は、1億余り、1割です。聞きますと、国の予算が足りず、本市の20業務移行についての補助総額は、人口割で上限4億2680万円にすぎません。
 フィットアンドギャップ作業を終え、移行作業に取り組んでいるのが今回の税務システムを含め6業務、残り14業務について今後同様に2025年までに作業を進めていくことになりますが、すでにこれまでで、補助金を上限まで使い果たしているのが実態だとのことでした。時間もお金も人材も足りないということではないでしょうか。
 そもそも現状で問題なく運用しているシステムを捨て、政府指定の方法に移行しなければならないこと自体、自治体には相当の負担であり、また、憲法で保障されている地方自治が後退する危険も極めて高いものだと指摘したいと思います。

 今、マイナンバー制度をめぐって、誤登録が次々と明らかになるなど問題が噴出し大混乱となっています。デジタル化のキーとしてきたマイナカードをポイント付与の飴と、健康保険証との一体化のむちを使って、何としても100%普及させようと躍起となってきた結果でもあります。デジタル大臣は名称変更にまで言及していますが、名前を変えたところで解決するものではありません。
 地方公共団体の情報システム標準化は、このマイナンバー制度とも連動するものであり、また、マイナ制度と同様に、一部のIT業界に「おいしい市場」を提供するものです。
 以上が反対箇所への討論です。

 最後に、本補正予算案では、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金による電力・ガス・食料品等価格高騰支援策が盛り込まれています。必要な事業ではありますが、その規模や内容は、失礼ながら「ないよりまし」。残念ながら物価高に苦しむ市民、国民を救うには抜本的な対策ではありません。
 国は、各自治体に交付金を配り、対策を取らせるのみでなく、すでに世界で103か国・地域に及んでおり、物価高対策として最も有効な消費税減税にこそ踏み出すべきということを申し上げて、議案第8号への討論とします。