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野口あけみの賛成討論
2023年09月19日

インボイス制度の中止・延期を求める意見書を国に提出することを求める請願


 日本共産党西宮市会議員団は、ただいま上程中の請願第2号、第3号いずれにも賛成いたします。
 私からは請願第2号「インボイス制度の中止・延期を求める意見書を国に提出することを求める請願」の賛成討論を行います。

 消費税に関連して、この10月からインボイス(適格請求書)制度が導入されます。インボイスが導入されると、零細な事業者やフリーランスで働く人などに、経済的にも事務的にも大変な負担増が生じます。
 今でも物価高騰で大変な中小零細事業者が、このことによってさらに苦境に立たされようとしています。
 ご承知のように消費税は、「売った時に受け取った消費税」から「仕入れの時に支払った消費税」を引き算し、納税する仕組みで、課税業者はこれまで売上額と仕入れ額がきちんと帳簿に記載があればこの計算ができました。しかし、インボイス制度導入後は、「仕入れの時に支払った消費税」は帳簿だけでは認められず、インボイス(適格請求書)を保存し、これをもとに計算する仕組みに代わります。インボイスがないと「仕入れ税額控除」という「引き算」ができなくなるのです。これは、消費税を10%に引き上げる際、食料品などのみが据え置きとなり複数税率になったため、正確な課税のために必要と説明されています。このインボイス(適格請求書)は、税抜きの年間売り上げが1000万円以下の免税事業者は発行できません。
 その結果、免税事業者は次の3つの道から1つを選択することを迫られることになります。
 一つ目は、課税業者は当然ながらインボイスを求めます。そうでないと余分に消費税を支払わなくてはなりません。免税事業者は課税業者と取引するために、インボイスを発行できるよう課税業者となる選択です。2つ目、課税業者との取引をあきらめる道、3つ目、課税業者との取引を続け、消費税分を値引きするかの道です。
 いずれを選んでも、免税事業者が苦しむことになるため、「悪魔の選択」「地獄の選択」と言われています。課税業者となれば手間のかかる事務を負担し、消費税を納税しなければならなくなります。免税業者のままでいようとすれば、仕事を失いかねないわけです。請願者から委員会で紹介された事例は、40歳代の運送業の方です。年間売り上げは600万円ほどで免税業者ですが、元請けから再三、インボイス登録業者にならないと仕事をやらないといわれやむなく登録申請したとのこと。今後、煩雑な会計業務を行い、消費税を申告納税しなければならない。いくつかの経過措置などはあるようですが、一時的なことです。こうした例のように多くは取引先にインボイス登録を半ば強制されているのです。
 こうした窮地に立たされる免税事業者は、財務省の推計で486万者。全事業者のおよそ半数をしめています。さらにインボイスの発行が必要となる可能性がある業種はフリーランスの形で働く人やシルバー人材センターの会員にも及び、1000万人前後にもなるといわれています。課税事業者への転換が進めば、2兆円規模の大増税となります。
 よく、「免税事業者は、お客から受け取った消費税を自分の懐に入れてしまう」「益税だ」というようなことが言われますが、これは事実ではありません。免税事業者も仕入れ時に消費税を支払っており、その消費税を販売価格に転嫁できなければ、利益を圧迫されます。販売価格は市場の動向に左右され、零細事業者ほど転嫁できず、「益税」が存在しないどころか、転嫁できない「損税」が生じています。
 消費税は事業者の付加価値に課税されています。そのため、消費税額は事業者にかかる消費税から仕入れ・経費にかかる消費税を差し引いて計算する仕組みですから、「預かり金」という考えが成り立つ余地はありません。そもそも消費税法には、事業者が消費税を預かる規定はなく、「消費税は価格の一部」とした裁判所の判決が確定しています。
 免税制度は、小規模事業者が煩雑な事務負担や税負担に耐える力が弱いから決められ続けられてきた制度です。これを「益税」といい、負担に耐えよというのが、この度のインボイス制度です。
 「益税」を言うなら大企業の「輸出還付金」こそ、メスを入れるべきです。消費税は国内の取引に課せられる税金なので、輸出取引に消費税は課せられません。一方、国内で仕入れや経費で支払った消費税は売り上げにかかる消費税から引き算し、還付を受けるのです。トヨタ自動車の例でみると、2021年度売り上げ12兆円余りで、輸出割合は77%。消費税還付は6003億円に上ります。21年度の消費税収全体は26兆円で、輸出大企業上位20社には1兆7000億円も還付されているのです。
 「公平・中立・簡素」これが税の三原則とのことですが、このことに全く逆行しているインボイス制度です。請願者は、「インボイス制度は、様々な業種で末端で働き、経済の底辺で私たちの市の財政をささえている事業者や商店街の灯、農業をひとつづつ消していくようなもの」とのべられました。請願趣旨にも、「自営業・個人事業者が経済社会から消え去り、あらゆる産業が成り立たなくなって地域経済が疲弊する。貧困と格差がより一層広がっていく」とも表現されていますが、大げさではなく全くその通りだと思います。
 またこのインボイス制度導入の本当の目的は、近い将来に欧州並みに消費税20%へ引き上げようとする、その際には何種類もの複数税率を採用することになるため、という財界の思惑があります。中小零細事業者だけでなく、すべての国民にかかわることでもあります。議員各位におかれましては、本請願を採択し、ぜひともインボイス制度導入の中止または延期を国に求めていただきますようお願いいたします。