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野口あけみの一般質問
2023年12月06日

財政問題、財政構造改善基本方針について


 (2)次に、財政問題、財政構造改善基本方針についてです。
 冒頭申し上げた通り、市はにわかに「財政構造改善」を言い出しました。
 基本方針のなかで市は、「実質単年度収支の推移」を示し、種々の特殊要因を除けば2017年(H29年)度までは黒字を確保していたが、2018年(H30年)度以降、赤字基調だと結論付け、そして、本市の財政上の課題は、人件費の高さがその最大の要因である経常収支比率の高さ、すなわち硬直した財政構造にあるとしています。
 さらに基本方針では、「今後の財政収支見通し」を示し、今後、年平均で40億円を超える収支不足が発生し、基金取り崩しで収支不足を補うと、2028年度末R10年度末には基金が枯渇するとし、そこから、単年度で40億円以上の収支改善をめざす取り組みを2024年(R6年)度から5年間で実施するとしています。つまり、このとりくみのなかで収支改善と、経常収支比率の改善を実施し、財政構造を変えていこうというのです。

 ここで私はまず当局の財政分析について、2点、意見を申し上げたいと思います。
 1点目は、経常収支比率のみをもって財政健全度の指標にするのはいかがなものか、という点です。以下は、現在、総務省地方財政審議会会長で、関西学院大学で教鞭をとっておられた小西砂千夫氏の総務省の資料「地方自治体の財政診断の考え方と課題」から紹介します。@経常収支比率は、経常一般財源のうち義務的経費に充当される割合で、これが高いと財政運営が硬直的であり、かつては80%程度が適当とされていた。その当時には、投資的経費に対する財政需要が現在とは比較にならないほど高く、反面地方債の充当率(借金ができる割合)は50%程度と低く抑えられていたため、経常収支比率が高ければ投資的経費の執行ができず、財政運営は危機的とされた。A現在では、投資的経費の財政需要が大きく縮小し、一方、社会保障給付(扶助費)が増大しており、その結果、経常収支比率が上昇するのはむしろ当然。また、地方債の充当率が引き上げられ、かつては投資的事業に充当されていた一般財源が地方債に振り替わり、それが後年度に公債費となることで、経常収支比率を押し上げる。Bよって、経常収支比率の高さだけをもって財政が悪化した状態であるとは言えない。また、経常収支比率の時系列比較(推移)は、歳出構造の変化による影響を表しており、財政逼迫度のみの変化と理解すべきでない。以上が小西氏の見解のあらましです。私はこの通りだと思います。市当局に置かれても、こうした見解もぜひ一考をと、もとめておきます。

 2点目は、今後の収支見通しの試算について。2022年度までは決算値ですが、2023年度以降は見込みです。当局も説明している通り、歳出は一定の積み上げと伸び率でもって試算していますが、市税、地方交付税など歳入は、人口や経済成長率なども加味するものの推計が難しいとして、ほぼ数値は伸ばさず試算しているものです。このような収支見通しの推計はこれまでも当局がとってきた手法であり、党議員団は「歳出を大きく、歳入を小さく」見積もったものであり、これに必要以上に縛られることはナンセンス、と繰り返し指摘してきました。このことは今回も改めて申し上げたいと思います。
 また、人件費や職員定数の問題もいうべきことがありますが、別の機会とします。ただ、人件費総額が中核市62市中2位などと、中核市との比較が挙げられていますが、資料に添付した通り人口20万人以上が中核市です。資料には記載しておりませんが、62市のうち、20万人台が17市、30万人台が23市。本市は人口では62市中8位ですので、中核市の中でも大規模であるということを申し添えておきます。

 次に、財政構造改善への取り組みや姿勢についても2点、意見を申し上げ、質問したいと思います。
 その1点目は、市の歳入をいかに増やすかという点です。
 基本方針では、今後市税収入が大幅に増加することは考えにくいとしています。しかし、岸田首相も所信表明演説で次のように述べています。「この30年間、日本経済はコストカット最優先の対応を続けてきた。人への投資や賃金、未来への設備投資・研究開発までもがコストカットの対象とされ、消費と投資が停滞し、さらなる悪循環を招いている。低物価・低賃金・低成長に象徴される「コストカット型経済」とも呼びうる状況だ」とし、これを変えよう、「コストカット型経済」からの完全脱却を、と。
 この状況をつくってきた責任を全く不問とし、反省もない岸田首相が言ったのでは、信用ならない、そんなことは困難なのでは、と思いがちですが、しかし、政治や経済はまさに生き物です。あきらめることなく、改善や発展を願い、行動することこそ必要です。未来を否定的、固定的にとらえていては委縮するばかりです。
 失われた30年を取り戻す方策はあります。私たち日本共産党は、経済再生プランを提案しています。日本経済を立て直し、成長へと、未来を共に変えていこうと呼びかけたいと思います。
 そうしたことも前提に、国に対し、自治体の財源確保についても強く意見を言い、その方向での努力を強めることを基本方針には盛り込むべきです。その一つは地方交付税です。
 全国知事会も市長会も、地方財源、地方交付税の確保について国に対し要望されておられます。
 「都市自治体の行政運営に必要な財政需要については、単独事業を含め的確に国の地方財政計画に反映させ、必要な一般財源総額を確保すること」「地方交付税については、引き続き、財源調整・財源保障の両機能を強化するとともに、その総額を確保すること」さらに、地方交付税算定の基礎となる基準財政需要額についても、「地方単独事業を含めた社会保障経費の増嵩(ぞうこう=増加)をはじめ、各都市自治体の実態をより的確に反映したものになるよう算定の充実を図ること。また、算定、算出の考え方もわかりやすくかつ明確にすること」
 これらは、今年6月に決定された第93回全国市長会の「都市税財源の充実確保に関する重点提言」にあるものです。市長も全国市長会の構成員ですから、この立場を基本方針でもしっかり位置付けるべきではないでしょうか。

 国からの交付金補助金についてもしかりです。例えば、国が強力に進めている自治体システム標準化。現在市では、システム標準化対象20業務のうち、6業務の移行を終えました。移行に係る経費は100%国費によるとしているにもかかわらず、補助金には上限があり、本市では4億2680万円となっています。6業務移行にかかった経費は15億6617万円で、国費の充当は27%にとどまり、このまま推移すれば差額の11億3900万円余りと、残り14業務についても補助金なしで実施しなければならないかもしれないのです。このことについても全国の自治体と連携して国にしっかり求めていくことが必要ではないでしょうか。
 持ち時間の関係で、この国との関係での質問についても、残念ながら今回はいたしませんが、市の財政構造改善を進めるにあたって重要な観点だと私は考えます。

 次に、財政構造改善に対する取り組み姿勢についての意見、2点目に移り、ここで質問をします。
 10月6日の市長発言についてです。「職員200人削減」が独り歩きしています。
 この件については複数の幹部職員から、困惑している旨、聞いています。また、市職員労働組合のニュースによれば、10月12日、秋季年末交渉の席上で市長は、「同発言は私の思いであり、事前に組合と十分な協議を行えなかったことは申し訳なく思っている」旨発言されたとあります。さらに、11月9日の団体交渉においても副市長が、「市長が10月4日に示した方針について、事前に組合と十分な協議を行わなかったことにより、混乱を招く結果となったことについては、改めてお詫び申し上げる」との見解を示したとのことです。
 本気で改善を進めようとするなら、市職員こそが、業務改善や事業の見直しを直接担うことになります。誰かが決めて命令して進むようなものではないと考えます。心ひとつに協力をしてもらうべき「同志」ではないでしょうか。
 改めて市長に伺います。この度の「職員200人削減」などという発言を申し訳なく思うのなら、発言は撤回し、あらためて市職員には真摯に協力を求めるべきではないか、お答えください。 
 
 壇上での質問は以上です。ご答弁ののち、対面式質問席にて再質問意見要望を行いたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。