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野口あけみの反対討論
2024年03月27日

2024年度予算案反対討論


 ただいま上程中の諸議案のうち、議案第104号 令和6年度西宮市一般会計予算、
議案第105号 令和6年度西宮市国民健康保険特別会計、
議案第106号 令和6年度西宮市食肉センター特別会計予算、
議案第108号 令和6年度西宮市介護保険特別会計予算、
議案第109号 令和6年度西宮市後期高齢者医療事業特別会計予算、以上5件について日本共産党西宮市会議員団は反対します。以下、理由、意見を申し述べます。

 本市の新年度予算案等が審議された3月定例市議会は、内外情勢の激動の中で開催されました。
 イスラエルによる無差別攻撃による犠牲者が3万人を超え、大量虐殺と飢餓、感染症のまん延という重大な危機が進行しているパレスチナ・ガザの事態は一刻の猶予もない状況です。地区最南部ラファへの攻撃中止と即時停戦を日本政府としてイスラエルに直接働きかけるよう日本共産党は国会でも求めているところです。本市議会にも、市民から市議会としても国に即時停戦を求めてほしいとの陳情が出されました。しかし、「国連で即時停戦を求める決議は採択されているから」と「結論を得ず」が賛成多数となったことは本当に悔しく残念に思います。平和の構築は国任せにするのではなく市民も声を上げ、力を合わせることが必要だと申し上げておきます。

 国内では、わが党の新聞「赤旗」スクープに端を発した自民党派閥による政治資金パーティ収入の裏金事件が、国民に深刻な政治不信を招いています。マスメディアにも大きく取り上げられだしてから3か月余となりますが、真相究明は全く進んでいません。
 また、1月1日には能登半島で大地震が発生しました。激震とともに津波、火災、地盤の液状化、土砂崩れが発生し、甚大な被害となっています。断水が続き避難も長引いており、人手などが足りないために公費解体も仮設建設も進んでいないありさまです。国による抜本的な支援の強化を求めます。
 そうした中で衆議院で新年度国家予算案が強行採決されました。5年間で総額43兆円となる大軍拡計画の2年目となる2024年度の軍事費は、初めて8兆円にせまる突出した増額となっています。安保3文書を具体化するため、敵基地攻撃が可能なミサイルの取得、開発などに巨額の予算を計上し、つけ払いの新規後年度負担も過去最大です。将来にわたって他の予算を圧迫することになります。
 社会保障費は高齢化などで増える自然増5200億円を1400億円削減します。 診療報酬の改定では、薬価の引き下げを含め全体でマイナス、介護報酬は1・59%の微増にとどめます。医療機関や介護事業所の厳しい経営が改善されず、離職者の増加を食い止めることもできません。
 所得税・住民税の定額減税が実施されますが、1回だけの減税で疲弊した暮らしを立て直すことはできません。何よりも重要なのが賃上げです。大企業の賃上げは好調かのように報道されていますが、労働者の7割が働く中小企業はこれからです。実質賃金22か月連続減少を何としても脱出できるよう政治の力が求められています。 
 年3・6兆円の「少子化対策」の財源を「歳出改革」による医療・介護の公費削減(約1・1兆円)や公的医療保険料に上乗せする「こども・子育て支援金」(約1兆円)などで確保するとしていますが、結局、国民の負担増でのりきろうなどという姑息なやり方はいただけません。

 こうした国民のくらしを守るには不十分な国の政治の下、国民・市民に一番身近な地方自治体として、「住民の福祉の増進」が第一の市政運営をすすめるのが本来の役割ですが、今、市長は、市の懐具合ばかりに目を奪われ、その役割を果たせていないと考えます。以下、予算案での主な反対か所を6点申し上げます。

 2022年度の決算において、単年度実質収支が42億円の赤字となったことをきっかけに、市は、「財政危機」を言い募り、「財政構造」を改善しなければならないとして、昨年10月、「財政構造改善基本方針」を、続いて今年2月、「財政構造改善基本方針に基づく取り組みの大枠」を掲げました。
 大枠をさらに具体化し、実施計画を策定するのは新年度になってからですが、市民の負担増や市民サービス低下につながる項目がすでに見られます。
 施設使用料等受益者負担の適正化、水道料金・下水道使用料福祉減免の見直し、公民館・市民館・共同利用施設の再編・縮減や、大学交流センターと市民交流センターの再編による市民交流センターの廃止などです。とりわけ問題なのは公立幼稚園・保育所の再編ですが、これについては後述します。
 予算案反対か所の1点目は、こうした取り組みについて問題ありと指摘します。

 市長は「厳しい財政状況の中、財政構造改善の取組で経費削減を図りつつ、公共施設の老朽化対策、まちづくりへの投資に資する事業などを重視した予算編成を行った」と表明しましたが、JR西宮駅前、阪神西宮駅北側エリアなどの都市開発、学校施設、中央体育館など公共施設の老朽化対策、ごみ処理施設の建て替え、統合といった大型事業が重なり、投資的事業は23年度より4割増えています。本当に財政が危機的状況なら、投資的事業に前年度4割増しで取り組むなどありえないと考えます。
 ましてや阪神西宮駅北側エリアの開発は、2023年11月に初めて民間の提案書という形で概要が市議会に示されましたが、先般、私が公文書公開請求した文書のなかで、2019年以来民間主導としながら民間事業者との間で市が率先して事業手法を提示し、協議が進められてきたことが明らかになりました。当初計画したアミティホールを中心とする公民連携施設から、財政事情等によって中央図書館との公民連携施設へと変更した経過でも、市の側からは、「アミティホールの扱いがどうなろうが駅北の再整備は必要」とか、民間事業者からは「我々の開発は住宅供給が中心になるので図書館やホールはある方が望ましい」「図書館はなんとしても死守してほしい」などの発言があり、市からの要請もありつつ、民間事業者からの要請も強かったと受け取れるやり取りも見られました。
 以上、2点目、まちづくりを民間に丸投げしてしまうような阪神西宮北側エリアの区画整理、再開発事業に反対です。JR西宮駅南地区の再開発事業にみられるように、今の物価高騰による資材、人件費高騰は当初の予算や取り組み期間の見込みを大きく狂わせます。財政に問題を抱えているという市の認識からも今取り組むべきではない、不要不急事業であると申し上げます。

 3点目は、「西宮市幼児養育と保育のあり方」と保育所の待機児童対策についてです。
 保育所待機児童の解消は、本市の重要課題のはずです。ところが、当局は、待機児童解消の展望を何ら示すことなく、待機児童が生じても、それは仕方がないというような答弁を繰り返しています。それどころか、昨年3月にしめされた「西宮市幼児教育と保育のあり方」およびそれを具体化する「アクションプラン」においては、公立幼稚園と公立保育所を統合し、保育所の入所定員を次々と減らすこととしています。
 当局は、この計画について保育所待機児童解消に極力影響を与えないようにすると言いつつも、一方で、待機児童対策とは真逆の計画、つまり待機児童解消にはいたらないと言ってはばかりません。
 保育所の待機児童が生じても仕方がないという態度と方針は直ちに撤回し、本気になって保育所の待機児童は即刻解消する方針と決意をもって実行することを求めます。

 4点目は、学校給食費についてです。学校給食費は、食材費の高騰等から2023年度より、一食当たり小学校で25円、中学校で28円引き上げられました。市は、この値上げ分を、この一年間、物価高騰対策として、国の交付金を活用し、保護者に転嫁することなく、負担してきました。急激な物価高騰は、食材を買い控えるなど、市民生活を脅かしています。にもかかわらず、この4月から、市が負担してきた給食費の値上げ分をすべて保護者にかぶせようとしています。市民生活がますます苦境に追いやられているときの市の対応は、まさに、情け容赦のない対応といわざるをえません。
 市が今やるべきことは、全国に広がっている学校給食の無償化です。市の決断を求めておきます。

 5点目は、留守家庭児童育成センターの指定管理制度についてです。
 育成センターの指定管理については、先の12月議会においても指摘した通り、多岐にわたる問題があります。一つは、指導員の配置が基準を満たしていないこと、第二に、行政の指導監督が行き届いていないこと、第三に、指定管理者選定委員会がその役割をはたしえていないことです。問題を解決する見通しや方策がないまま、同じように指定管理制度を継続することは許されません。根本的な検討が求められています。

 6点目、 医療費適正化についてです。
 新規施策として、生活保護の医療扶助における医薬品の適正使用の推進が挙げられています。これは、重複投薬や不適切な投与がみられる被保護者について、薬剤師等と連携して適正使用に関する指導援助を行うとしています。しかし、医薬品の適正化というならすべての人を対象とすべきです。ことさら生活保護利用者に不適正な仕様があるかのような差別や偏見によるもの、あるいはそれをあおるものだといわねばなりません。よって反対です。

 次に、意見・要望を5点申し上げます。
 1点目は、高齢者外出支援についてです。当該サービスとして健康ポイント事業が開始され3年目ですが、新年度は新規募集を行わず、事業の効果検証をはかるとしました。事実上の廃止です。これ以外に福祉タクシー、バス運賃助成が行われていますが、一部バス路線の廃止や減便が続きバス運賃助成が利用しにくくなった方、またそもそもバス利用はなく鉄道をもっぱら利用される方々から交通助成、外出支援に対しての要望が数多くあります。今後、高齢者人口が増えることが予想される中、コミュニティ施策として外出支援策の検討をすすめていくことを求めます。

 2点目、加齢性難聴補聴器購入助成制度については、この1年間で2倍近い自治体が助成制度を設けています。高齢者の社会的孤立を防ぐために、兵庫県が行った「高齢者補聴器活用調査」の結果を市も生かし、聴こえのフレイルの取り組みをすすめるとともに、聴覚健診の早期実施、補聴器購入助成制度導入を強く要望します。

 3点目は介護保険認定調査と介護支援専門員の資質についてです。
 認定調査は研修を受けた介護支援専門員が行うこととしていますが、調査が公平・公正に行われているのか疑問です。厚労省の調査研究事業報告によると、委託による調査では技術面に課題が多くあるとの結果です。今年度の不服申請数は増えていると聞きます。研修内容等について検討を行い、認定調査が適正に行われるよう要望します。
 介護支援専門員の資質についても同様です。今後ますます、認知症の方や身寄りのない高齢者、意思決定支援への期待が高まっている中、利用者本位、公正中立等で疑問視されるケースが見受けられます。ケアプラン検討委員会でのケアプランチェックだけでなく、資質向上の研修などを行い、利用者が安心して在宅生活を送れることが必要だと考えます。
 4点目、市営住宅の名義承継の厳格化が新年度いよいよ始まります。十分な周知とともに、新たな住宅困窮者を生むことのないよう、場合によっては新たな対応策を検討するよう、求めます。

 最後に、地球温暖化対策についてです。気候危機は、自然災害の深刻化や農業・漁業への影響をはじめ、日本社会の各分野に重大な被害を及ぼしています。G7のなかで唯一、石炭火力発電からの撤退期限を示さず、大型石炭火力の建設を続ける日本政府は、国際社会で取り残されています。
 本市も「2050ゼロカーボンシティ」を宣言していますが、その実現にむけ新年度に予定している各施策を確実に実施するよう求めます。特に、再エネ・省エネの普及は、「コスト」ではなく未来への投資という立場で、大胆に進めるよう申し添えます。

 次に、議案第106号 令和6年度西宮市食肉センター特別会計予算についてです。これまでも一貫して主張し続けてきました通り、市から多額の補助金を投入し、本事業を継続する意義があるのか、市民に利益をもたらしているのか、はなはだ疑問です。この度の「財政構造改善基本方針に基づく取り組みの大枠」で、改めて、「食肉センターのありかた検討」が俎上に上りました。いったんは、廃止または民営化の方針が出たもののいまだその方向が示されず現実のものとなっていません。今度こそ、思い切った見直しがされるよう強く求めておきます。

 議案第109号 令和6年度西宮市後期高齢者医療事業特別会計予算は、新年度の保険料が、国民健康保険料、介護保険料と同様に値上がりとなることから反対です。アップ率は、約4%です。2022年10月から一定所得があるとみなされた高齢者の窓口負担が1割から2割へと2倍になりました。3割負担の高齢者が10%、2割負担が24%、1割負担が66%となっています。
 なお、国民健康保険と同様に、2024年度は紙の保険証が発送されますが、2025年度はマイナ保険証か資格確認証を利用することになります。その際、この窓口負担率が所得によって変更されることになり、マイナ保険証にはその表示もないため、資格確認証とは別に、すべての後期高齢者医療保険加入者には窓口負担割合をお知らせする資格情報を発送する見込みとのことでした。ここでも行政の手間と費用負担が余分にかかることになります。

 議案第105号 令和6年度西宮市国民健康保険特別会計、及び議案第108号 令和6年度西宮市介護保険特別会計予算については、先の条例案で討論した通りの理由で反対です。

 以上、今後も「住民の福祉の増進」を実現する立場で奮闘することを表明し、日本共産党西宮市会議員団の市予算案に対する反対討論とします。