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野口あけみの質疑と討論
2024年06月26日

西宮市国民保護計画の変更報告の件について


 報告第46号 西宮市国民保護計画の変更報告の件について質疑します。

 質疑に先立ちまして、1点申し上げます。本案件についてはかつての議会運営委員会で「議決を伴わない報告案件のため、常任委員会への付託は行わず、本会議にて報告終了」とされているとのことですので、この質疑の場で必要なことをただし、また、意見を述べさせていただきます。

 では、一括して大きく2点うかがいます。

1、この度の計画変更は、国の「国民の保護に関する基本指針」の変更、およびそれを反映した県の「国民保護計画」の変更を踏まえたものとのことでした。主な変更点は4点と聞いていますが、それぞれの変更に伴う市の今後の取り組みについてお聞きします。
2、説明資料によると、今年3月26日に西宮市国民保護協議会に諮問済みとのこと。この国民保護協議会の組織及び開催頻度についてお聞きします。



 ご答弁ありがとうございました。
 本計画は、2003年(平成15年)6月に成立した、事態対処法など有事関連3法を受け、翌2004年6月に、武力攻撃事態等から国民を守る仕組みを定めた国民保護法に基づき、作成された計画です。
 ご答弁にありましたように、その内容の多くは地域防災計画と重なるものです。

 計画の冒頭には、「計画作成にあたっての基本的考え方」が記載され、要旨、次のように書かれています。
 「武力攻撃事態への対応は、原因の意図性、攻撃の反復性などの点で自然災害や事故災害との違いはある」=そのとおり
 しかしながら、「市民の安全を確保するための方策においては共通する部分も多いことから、地域防災計画等に基づくこれまでの取組の蓄積を最大限に取り入れるとともに、地域防災計画との整合を図るよう努める」

 また、次のようにも書かれています。
 「国の平和と国民の安全を確保するためには、諸外国との良好な協調関係の確立や国際社会との協力などにより、武力攻撃の発生を未然に防ぐことが何よりも重要であり、西宮市においても、国際平和を希求する立場から、平和非核都市宣言の理念に基づき、国際交流など様々な取組を展開しており、このような取組はこれからも続けていかなければならない。
 しかしながら、こうした平和への努力を重ねてもなお、万一、武力攻撃や大規模テロが発生したときは、市は、市民の生命、身体及び財産を守る必要があるため、この計画を作成するものである」
 これまたそのとおり、特に前段はいいこと言ってます。ちなみに県の計画でもほぼ同様の記述があります。どちらかがコピペしたものと思われます。他県や他市の計画も少し調べてみましたが、必ずしも同様の記述はありません。

 繰り返しますが、「国の平和と国民の安全を確保するためには、諸外国との良好な協調関係の確立や国際社会との協力などにより、武力攻撃の発生を未然に防ぐことが何よりも重要」です。その通りです。
 ところが、日本政府がやってきたこと、やろうとしていることはこれに逆行しているといわなければなりません。冒頭申しあげたとおり、意見を述べる機会がここしかありませんので、少しだけお時間をいただくこと、お許しください。
 
 本計画作成の根拠、出発点となっている有事法制では、「武力攻撃事態」というあいまいな概念の下で自衛隊が武力行使や部隊の活動を円滑・効果的に行うことを広く認めました。憲法に抵触するという重大な疑念がぬぐい切れないままの強行でした。
 そして、2014年7月には集団的自衛権の行使容認を閣議決定し、この決定に基づいて翌2015年9月、関連の10本以上の方改定や新規制定を含む安保法制が強行可決、成立しました。有事関連3法のうち事態対処法を改正し、「存立危機事態」への対処を新設したことがその中心点の一つです。すなわち、従来からの我が国に対する武力攻撃が発生した事態に加えて、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」に対し、自衛隊の防衛出動と武力の行使を可能にしました。有事法制の時以上に、「戦争法反対」「違憲立法は許されない」との国民の声が日本列島中に広がりました。
 そして、またおよそ10年後、2023年には岸田首相がいわゆる「安保3文書」を決定し、公表しました。これらの文書には、@反撃能力という名の「敵基地攻撃能力」の保有、A世界第3位の軍事大国を目指す43兆円を超える大軍拡計画、Bそのための大増税計画、が明記されています。
 これは2015年に出来上がった集団的自衛権の行使を、現実の政治で具体化しようとするものです。海外での米軍の戦争に自衛隊も加担する安保法制化において「台湾有事」などで政府が日本にも影響が及ぶと判断し、安保法制が定める「存立危機事態」を宣言すれば、米国とともに先制攻撃=敵基地攻撃を含む武力行使の道へと進む可能性もはらんでいます。
 西宮市国民保護計画は、平和への努力を重ねてもなお武力攻撃が発生した場合に備えるため、という位置づけですが、以上みてきたように現政権は平和への努力どころか、戦争の危険を拡大するばかりだということを厳しく指摘し、そのようなことを決して許してはならない、平和と協調を求める世論と運動を進めようということを呼び掛けて、意見とします。