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2025年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:政策局
2024年08月26日


  1. 地方行政は言うまでもなく国政と密接に関わりがあり、今の国の悪政の下では市民の福祉を増進する立場に立つなら、国政に無批判であってはならない。2024年、通常国会で成立した地方分権に逆行する地方自治法「改正」などはその典型である。
    現在、市では兵庫県市長会や全国市長会、中核市市長会などを通じて、国等への要望活動を行っているとのことだが、引き続き要望や意見表明などの活動を強め、市民に対してもそのことを広く知らせること。

  2. 市は、2022年度一般会計決算において実質単年度収支が42億円を超える赤字となったことを受け、収支不足を補填するため多額の基金取り崩しを続けると数年後には予算編成に大きな支障を生じることが考えられるとし、全庁あげての抜本的な財政構造改善に取り組むとする「財政構造改善基本方針」を策定した。
    今後、2024年11月に基本方針に基づいて、財政構造改善実施計画(素案)を作成し、 12月にはパブリックコメント実施、2025年2月に財政構造改善実施計画を策定するとしているが、パブリックコメントを待つことなく、2024年2月には「財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠について」を公表、すでに具体化が進められている。
    各項目についての要望意見はそれぞれの所管局に要望することとするが、総論として、「財政がきびしい」とことさら強調することは、市民のくらしの願い実現を遠ざけるものとなることを指摘する。一方で市は、「まちづくりへの投資に資する施策・事業は厳選して実施する」とし、阪神西宮駅北側再整備など不要不急の事業に取りくもうとしている。
    自治体の大きな役割はいうまでもなく「住民の福祉の増進」である。不要不急事業は見直し、学校給食費無償化や補聴器購入費用助成制度創設など住民のくらし向上に資する施策を優先する予算配分を行うこと。

  3. 公共サービス民営化の一形態である指定管理者制度の導入以来、相当年が経過した。収益を上げることを目的とする受託事業者が、経費節減のため労働者の雇用や労働条件を不安定化させ、ひいては住民の安全確保への配慮などが欠落している等の問題を起こしており、総務省も2010年には指定管理者制度の運用について通知を発出、また、2022年には調査結果を公表している。
    2023年に杉並区が「指定管理者制度の検証」を行うなど自治体での検証も始まっている。本市でも指定管理者制度のモニタリングを実施しているが、より厳格に実施するとともに、制度そのものの検証を行い、公共の責任を適切に果たせるようにすること。

  4. 公共施設マネジメントについて市は、「一律に規模を縮減するのではなく、必要な機能・サービスを確保し、既存施設の有効活用を含めた適正配置を進める。既存施設を同規模で更新することは困難だが、市民サービスの質をできるだけ低下させずに施設総量の見直しを図りたい」としている。しかしながら「財政構造改善基本方針に基づく取組の大枠について」で具体化されつつある青少年ホームや市民交流センターの廃止などは明らかに市民サービスの低下である。これらについては市民の意見を尊重し、再検討すること。

  5. コロナ禍においてとどめられていた「施設使用料の見直し」や「共同利用施設の受益者負担の適正化」=有料化が財政構造改善の名で進められようとしている。物価高騰の折、市民にこれ以上の負担を求めることは市民活動の停滞を招きかねない。きっぱりやめること。

  6. 阪神西宮駅北側の民間主導の開発事業に、市も深く関わって同駅前に図書館を移転整備する計画がすすんでいる。国の政策に則った民間に有利な補助制度活用や規制緩和が幾重にもおこなわれる開発事業だが、まちづくりを民間に委ねてしまうことに大きな懸念を抱いている。また、事業進展に伴って市の負担増大も十分考えられる。図書館整備や公民連携事業などを中止すること。

  7. 名神湾岸連絡線整備は全く不要で無駄な事業である。にもかかわらず市は、推進の立場で県にも予算要望をしている。地域住民の住環境を著しく損ない、構造上も危険を伴う同計画の白紙撤回を求めること。

  8. JR甲子園口駅北側は交通安全面の課題を有する地区との市の認識は示されているものの、なんら対策はとられていない。公共交通の中核である鉄道駅は、賑わいや市が進めようとしているウォーカブルなまちづくりにおいても重視されるべき存在であるが、JR甲子園口駅北側はそうした点でも大変大きな課題を抱えている。駅周辺の環境整備について、現在市は全く関与していないが、公共としての責任を果たすこと。

  9. 市内には市が交通不便地域(鉄道駅から半径500m、かつ、1日の運行本数が片道15本以上あるバス停より半径300mから外れている)と位置付けている地域が40か所あり、バス路線の拡充は、この解消に不可欠であるが、運転手不足等により路線の廃止や便数減など、むしろ現状は悪化している。
    今後、高齢化が進行するなかでバス利用の潜在的需要はいっそう高まる。公共交通機関として重要な役割を持つバス交通について、住民の要望に沿った路線拡大や便数増などにいっそう努力すること。あわせて、バス停留所への屋根及びベンチの設置、ならびに、ノンステップバス拡大にはスピード感をもって取り組むこと。

  10. 市内ではバス「乗り継ぎ」割引制度がないため、市民や高校生等の負担が大きくなっている。ハニカ定期券の発行により割引制度が一定拡充されたが、普通乗車券でも同一バス会社間および、阪神、阪急間の乗り継ぎの際運賃が割引となるよう、関係者と協議を行うこと。

  11. コミュニティバスについては、市も交通不便地域の解消策の一つと位置付けている。地域が主体となって市の支援も得ながら生瀬、名塩、山口、苦楽園、甲陽園各地域などで実施または計画がすすんでいる。
    今後も市が積極的に関与し、必要な地域での実現に向け取り組むこと。

  12. 市は自衛隊の要請に応じて、住民基本台帳から18歳と21歳の市民の氏名、住所、性別、年齢の4情報を抽出し、電子データで提供している。これは憲法13条に基づくプライバシー権、あるいは自己情報コントロール権の侵害にあたり、提訴されるなど反対の声が広がっている。名簿の提供は行わないこと。少なくとも自衛隊に名簿を提供していることや2023年度からは希望しないとの申し出があった場合は除外していることを市民に公表すること。

  13. ふるさと納税制度は、郷里への応援、被災地支援など、それ自体としては積極的な意味を持ってスタートしたが、高価な「返礼品」を用意した自治体に寄付が集中する、寄付額の相当部分が「返礼品」の費用で消えてしまうなどの弊害も目立ってきている。本来の趣旨を生かせるような仕組みの見直し、あるいは制度廃止も含めて国に要望すること。