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2025年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:健康福祉局
2024年08月26日


  1. 新型コロナウイルス感染症対策について
    新型コロナウイルス感染症(以下、コロナという)は、2023年5月から感染症法上の分類が5類へ移行した。感染対策の緩和や感染者数の把握も週1回の定点把握となる中、夏にかけて全国的に感染者数が増加している。高齢者施設や病院などでのクラスターも発生し、医療・介護の現場では、感染対策の手を緩められない状況である。
    「国民の命を守る」対策をいかにとるのかを検討し、以下、国や県に要望することを含め、実施を求める。
    (1)5類に移行したことにより、患者数の把握、法律に基づく届け出がなくなった。本市域の感染状況が市民に分かりにくい状況である。感染拡大傾向では、感染対策を呼び掛けるなどHPや市政ニュース等で啓発するなど対策を講じること。
    (2)受診時のPCR検査やコロナ治療費の患者負担を軽減すること。
    (3)基礎疾患のある方や高齢者の重症化防止のため、抗ウイルス薬を公費負担とすること。
    (4)高齢者コロナ病床を確保した医療機関に支給する病床確保料のような特例・加算の継続・拡充によって医療体制の強化を図ること。
    (5)介護や障がい者施設の利用者・職員へ抗原検査キットの配布を再開すること。
    (6)2024年度のコロナワクチン接種の公費負担とし、接種後の健康被害について対応すること。
    (7)コロナワクチン接種計画について、市のホームページのみならず、各医療機関・介護施設や公民館等の公的施設窓口にも参照できるよう啓もうすること。
    (8)重症化リスクの高いコロナ感染者については、在宅や介護施設で留め置きされることのないように医療体制を強化すること。
    (9)長期のコロナ後遺症に苦しむ患者を支援するため、実態を調査し、後遺症の相談・治療について診療報酬を改善し、支援を強化すること。
    (10)市における感染症予防計画策定が改正感染症法により義務付けされ、まとめられた。一方、第5波以降のコロナ感染症対応検証については2023年度末を目途にまとめるとのことだが、いまだ報告されていない。新たな感染拡大時に活かすことができるよう、早急にまとめて市のホームページなどで発信すること。また、感染拡大時には、スピード感を持って対応できるよう万全を期すこと。

  2. 済生会兵庫県病院(神戸市北区)の廃止を含む三田市民病院との再編統合は、その計画が実行されれば、西宮市南部に比べて医療機関が少ない北部住民の環境がさらに悪化し、医療難民を多数生じさせることになる。西宮北部住民の切実な意見・要望を関係機関に伝え、市としても済生会兵庫県病院の存続を求めること。

  3. 「重層的支援体制整備事業」が2025年(R7)本格実施に向け進められている。
    ひきこもりの状態にある方の対応、ヤングケアラーの対策等は保健・福祉・教育・就労を担当する部署が連携・共有し支援に繋げる取り組みが必要とされている。困りごとを受け止める、相談支援体制の整備を行い、取り組みをすすめること。

  4. 産後ケア事業について
    「産後ケア事業」は母親の心身のケアや育児をサポートする取り組みとして、宿泊型や訪問型など進んできている。赤ちゃん訪問については、産後うつやハイリスク児の場合、病院から地域保健課に連絡が入り、助産師・保健師が訪問を行う「養育支援ネット」により年間500人を超える訪問が行われている。一方、それ以外の赤ちゃん訪問は子ども家庭支援課で管理され訪問しており、双方の連携がとれていない印象だ。今後、一体的な組織として相談支援を行うことにより、さらなる支援の充実強化をはかること。

  5. 介護保険制度について
    介護保険制度改定の度にさらなる負担増や給付削減が行われている。今後も、要介護1、2の保険給付外しや原則2割負担、ケアプラン作成の有料化などが狙われている。「保険あって介護なし」と声があがり、市民の理解は到底得られていない。以下、要望する。
    (1)介護保険制度は大きくは国が制度設計をしているが、高齢者の実態を踏まえ、介護難民を作らないように、市として国に対し、国庫負担の増額やこれ以上の制度改悪をやめるよう求めること。
    (2)市における介護保険料は、第9期(2024年〜2026年)については、引き上げとなった。長引く物価高騰から国民の生活はひっ迫している。介護保険料は介護給付費準備基金を全額繰り入れ、年度途中でも引き下げること。
    (3)市が、高齢者と唯一直接関わっているのが介護認定業務である。認定調査の一部を民間委託しているが、これ以上民間委託をすすめれば、市が介護を必要とする高齢者の実態を直接把握する機会がなくなる。これ以上の民間委託はやめ直営を守ること。
    (4)介護申請の際の認定調査結果まで時間を要しており30日以上かかるケースが見受けられ、在宅介護に支障をきたしている。医師意見書作成に時間を要しているなど実態を調査し、スピード感を持って行われること。また、更新や介護度変更申請の際も同様の対策が望まれる。
    (5)訪問介護の介護報酬引き下げが行われ、さらに在宅部門からの介護職離れがすすみ、事業所経営が危ぶまれている。事業所の休止や廃業が相次ぎ、安心して在宅療養が継続できない状況も生まれている。市域における訪問介護事業所の実態を把握するとともに、介護報酬の引き上げや賃金改善を国に求めるとともに、市としての対策も検討すること。

  6. 特別養護老人ホームについて
    (1)市の特養待機者は2023年4月時点で598人と聞いている。要介護者が安心して利用できるように特養を増設すること。
    (2)特別養護老人ホームの入所対象は要介護3から要介護5だが、要介護1又は2の方も入所できる特定入所について知られていない。ケアマネや施設相談員にも入所相談時に説明を行うよう求めること。
    (3)西宮中央病院跡地における特別養護老人ホームの新設・養護ホームの移転については甲陽園市住跡地へと方針が転換された。住民の理解が得られるよう、丁寧にすすめること。

  7. 高齢者の住まいの問題は軽視できない。市は今後の総合計画で「グループホーム及び有料老人ホーム等の特定施設の整備については、介護保険事業計画に基づき計画的に進める」としている。認知症状のない、自立した低所得の高齢者にとっては利用が困難である。一方、ケアハウスは低所得者が利用できる高齢者の住まいとして位置付けられている。ケアハウスを計画的に増設すること。

  8. 高齢の単身者が増えている。施設入所や入院時の連帯保証人、緊急連絡先の問題が大きい。民間保証会社等もあり、利用も増えているようだが、利用金額は高額で信用性にも欠ける。利用者が被害に遭わないよう民間保証会社の実態を把握し、対策を講じること。また、民間保証会社に替わる市での対応を研究し、検討をすすめること。

  9. エッセンシャルワーカーについて
    (1)エッセンシャルワーカーの賃金は全産業から平均月10万円も下回っており、深刻な人手不足におちいっている。看護・介護・保育業界では、人材紹介業者に頼らざるを得ない状況であり、雇用契約時の成功報酬として年収の2割を紹介業者に求められる等が報告されている。市民が安心して医療・介護・福祉をうけることができるように対策をすすめること。
    (2)コロナ禍を経て、看護師不足がさらにすすんでいる。2026年度には、県立西宮病院と市立西宮中央病院が統合開設を予定されており、看護師確保がますます重要となる。西宮市は医師会看護専門学校に対して運営費補助金を交付しているが、兵庫県が県立大学の学費無償化方針を打ち出したことにならい、西宮市民の看護学生に対して学費無償化とし、看護師確保に力を入れること。
    (3)市は看護学生の奨学金制度として、協愛奨学基金を設けており卒業後は市内医療機関への就業により返還免除となる。しかし、年間7名と限られており、希望者は少ないと聞く。看護師を目指す市民に広く制度を周知するとともに、対象人数を拡大すること。
    (4)訪問介護の担い手不足の中、市は「介護に関する入門的研修」など開催し、福祉人材確保の取り組みを行っている。既存の取り組みを進めるとともに、年間を通した取り組み、回数増など企画し、訪問介護事業所の就労に繋がるよう支援を行うこと。

  10. 加齢による聴こえの支援について
    (1)高齢者の難聴は日常生活を不便にし、生活の質の低下、放置するとうつ病や認知症、ひきこもりにつながるといわれている。しかし、補聴器は健康保険や法的補助が適用されないため、購入をあきらめている高齢者も多い。全国の自治体で独自の助成制度が広がっており、兵庫県下においては14自治体が助成している。6月議会で市は必要な財源は600人で1200万円と答弁された。補聴器購入費用助成制度をつくり、高齢者の健康増進を図ること。
    (2)聴こえの低下は40歳代から始まっていると言われている。難聴を早期に発見し対応することが求められている。特定健診に聴力検査を位置付けるか、がん検診項目のようにオプションとし、聴力検査の機会を設けること。

  11. 近年の猛暑は命の危険にまで及ぶレベルとなり、連日熱中症警戒アラートが発令されている。屋内での熱中症による死亡者も増えており、猛暑対策として以下要望する。
    (1)他市で実施しているエアコン購入、電気料金補助を市民税非課税世帯などの低所得者を対象に実施すること。
    (2)高齢者世帯や要介護者世帯、障がい者世帯などのエアコンの有無を調査し、介護事業者などの協力を得て、正しく利用できているかの見守りを行き渡らせて安全に過ごせるように、支援方法を検討し実施すること。

  12. 高齢者交通助成制度は鉄道会社の協力が得られず事業が中止となった。それに替わる事業として市は、健康ポイント事業と高齢者バス助成制度を2021年度から開始したが、2024年度で健康ポイント事業の見直し、事実上の中止となった。以下、要望する。
    (1)以前の高齢者交通助成事業の利用者の8割が鉄道利用だったとのこと。現在も鉄道利用再開の声が多い。鉄道の再度利用に向けて、電鉄会社の協力が得られるよう取り組みを再検討すること。
    (2)バス路線が不十分な本市の特徴から、高齢者の外出支援のためのタクシー利用が可能な制度に改善すること。
    (3)高齢者バス運賃助成事業に対して、2024年度にアンケート予定と聞いている。集計結果から有識者による考察を行い、その結果を事業に反映すること。
    (4)現在、福祉タクシー派遣事業が行われているが、介護度3以上が対象である。高齢者の社会参加を促し、健康づくり・いきがいづくりや、在宅生活を継続するためにも要支援者まで対象を拡大すること。

  13. 障がい者(児)施策について
    (1)国の基本指針では障がい者入所施設から地域生活への移行を進めるとしている。2022年に行われた西宮市障がい者等実態調査(以下、実態調査)では、希望する暮らしの項目において、グループホームやサービス付き高齢者住宅が増えることを望んでいる声が上位であった。しかし、地域における居住の場である障がい者グループホームは圧倒的に少ない。事業所の指定においては、利用者の人権が侵害されることのないよう慎重に行うこと。また、市が必要性をアピールし、手上げ事業所を募集するなど、増設を後押しし、支援すること。
    (2)障がい者差別解消(共生社会の実現)に向けた取り組みではどんな配慮をすれば良いか、合理的配慮の提供支援では事例の見える化をはかり、取り組みを進めること。あいサポート運動を民間企業や教育の場において研修としてすすめ共生社会の実現を目指すこと。
    (3)小児医療の進歩により、小児期発症の病気について生存率が改善されてきたが、移行期医療が課題となっている。成人しても安心して医療の継続が行われるように関係機関との連絡調整を行う体制づくりを検討すること。また、医療的ケア児等コーディネーターも計画的に増やすこと。
    (4)社会参加の促進のために視覚障がい者に対して支給している同行援護(ガイドヘルパー)は月60時間であるが、活動的な障がい者は足りない現状がある。実態把握を行い、時間数を拡大すること。
    (5)日常生活用具給付は、地域生活支援事業の必須事業で、地域の実情に応じ地域が創意工夫し提供するとされているが、本市は中核市の中でも水準が低い。音声血圧計の追加や、点字ディスプレイを現在の「視覚聴覚障がい2級以上」から「視覚障がい単一」を対象とする、世帯要件を見直すなど、当事者の意見・要望をもとに拡充すること。
    (6)視覚障がい者は聴覚によって得る情報が多いが、加齢性難聴によって情報へのアクセスや、コミュニケーションを阻害されることになる。県市の独自事業で障がい者手帳を持たない軽・中度難聴児への補聴器購入補助制度があるが、これにならい、市独自で加齢性難聴の視覚障がい者に補聴器購入費用補助制度を創設すること。
    (7)点字ブロックや音響式信号機、エスコートゾーンの整備など、計画的に既存の整備を点検し、当事者の要望に沿ってバリアフリー化を進めること。

  14. 生活保護制度は憲法25条が定める生存権保障の土台となっている制度であり、また、最低賃金、就学援助、国民健康保険料の減免基準、公営住宅の減免基準等、生活保護を利用していない多くの国民に関わるさまざまな制度の基準と連動している、まさに生活保護基準は“命の砦”である。
    (1)命の砦にふさわしい制度となるよう、老齢加算の復活、物価高騰と連動した生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)引き上げを国に求めること。
    (2)市の生活保護制度については、「生活保護のしおり」を用いて制度について説明、ホームページにも掲載されている。しかし、扶助の種類とともに支給内容、「移送費」などの一時扶助について詳細が知らされていないことがある。利用者に寄り添い、わかりやすく制度の利用もれがないように周知すること。
    (3)ケースワーカーは、国基準では、被保護世帯80世帯に1人とされている。2023年4月時点で1ケースワーカーが担当する被保護世帯は124世帯とのこと。複雑化するケースワーク業務に対応するため、人的配置や環境づくりも行い、引き続き増員を進めること。また、質を高める研修をおこなうこと。
    (4)漏給が生じる大きな要因となる、申請を躊躇させるような、扶養義務照会を行わないこと。
    (5)熱中症警戒アラートが発令されるほどの猛暑が続き、エアコンの使用は不可欠である。全生活保護世帯のエアコンの有無を調査し、連絡がとれない世帯については、電話や訪問を行い設置を促すこと。また、買い替えや、エアコン修理については、「住宅維持費」として支給できるよう検討すること。
    (6)長引く物価高騰と電気料金の値上げからエアコン使用を躊躇している利用者も多い。近年、熱中症での死亡者数は増加傾向である。電気料金への補助として、夏季加算を検討すること。市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および上下水道料金の基本料金免除を緊急に復活することと併せて、国にも要望すること。
    (7)利用者が入院すると、生活扶助費は入院基準(23,110円)となる。この中から自宅の共益費や水光熱費の基本使用料を支払わなければならない。また、入院セットというような病衣や日用品のリース代も必要である。安心して入院治療をうけることができるように、入院基準額の増額を国へ要望すること。
    (8)入院する際、おむつ代は一時扶助の被服費として対応できることを周知すること。
    (9)施設へ入所する場合の施設衣のリース代も一時扶助の被服費として対応できるよう国へ求めること。

  15. 離職や廃業に伴い、住居を喪失またはその恐れのある人には一定期間家賃相当額の支給を行う住居確保給付金については、収入が減少した人も受給できるように制度が改正された。しかし、預貯金保有の要件や、求職活動要件が厳しすぎる。見直すよう国に要望すること。

  16. 民間空襲被害者への補償問題が、いまだに解決されないまま放置されている。政府は、元軍人・軍属には恩給・年金などで保障を続けているにもかかわらず、民間の空襲被害者には、「戦争被害は等しく受忍すべきだ」などと言って、救済を現在に至っても拒み続けている。本市における民間戦災障がい者の実態はどのようなものか。いくつかの自治体が「民間戦災障がい者援護見舞金」制度を創設して、民間の戦災被害者を支援している。西宮でも実態に見合った見舞金制度を実施できるよう検討すること。