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庄本けんじの反対討論
2024年10月02日

2023年度決算認定反対討論


 日本共産党西宮市会議員団は、認定第10号「令和5年度西宮市一般会計及び特別会計歳入歳出決算認定の件」に反対いたします。以下、討論をおこないます。

 2023年度も情勢は、激動に次ぐ激動でした。新型コロナウイルス感染症の「5類」への移行、1月1日に起きた能登半島地震、豪雨災害、政治の舞台では「裏金問題」の発覚、万博をめぐる相次ぐ問題、兵庫県では2023年3月から問題となった告発文書をめぐる知事の対応など、さまざまな問題や事象が起きました。
 暮らしの面では、物価高騰が止まらず、2023年度の平均の消費者物価指数は、生鮮食品を除いた指数が前の年度より2.8%上昇し、家計を苦しめています。とくに、「生鮮食品を除く食料」は前の年度より7.5%上昇し、生活苦を広げています。たとえば、「鶏卵」は24.5%、「アイスクリーム」は11.6%、外食の「ハンバーガー」は9.2%、「あんパン」と「からあげ」は7.2%など、毎日口にする食料品がのきなみ上昇しました。そして、その物価の上昇は、いまも続いています。
 こうしたすべてのことに対して、政治や行政は、どのように対応したのか、厳しく問われました。西宮市も、住民に寄り添った対応ができているのか、厳しく問われることとなりました。

 そうしたなかで、市長は、昨年の10月、2022年度一般会計決算の実質単年度収支が42億円ほど赤字になったことをとらえ、人件費の抑制のために職員を約200人減らし、2024年度から5年をかけて、単年度で40億円以上の収支を改善するとの考えを発表しました。
 市は、さっそく「財政構造改善基本方針」を策定し、今年の2月には「財政構造改善基本方針に基づく取り組みの大枠」をしめし、現在、その「大枠」にそって事業の見直しが検討され、いくつかの事業は、すでに削減されています。今後、さらに検討作業を進め、11月には「財政構造改善実施計画」の素案を公表して、パブリックコメントを実施し、そののち、来年の2月には「財政構造改善実施計画」を策定する、とのことです。
 市長が、「職員約200人を減らす」、40億円規模の収支改善に取り組む、との考えを示してから、この一年、議会でも、財政のあり方について、活発に議論がされました。その議論の特徴は、各会派の立場の違いや濃淡の違いはあるものの、市民サービスを第一優先で削減するようなことには、疑問や反対の声が上がっていることです。ところが、議会でどんな議論が起ころうと、当局は、いったん決めたことは、なにがなんでも押し通そうとする態度が垣間見られます。当然、議会の側から、批判の声があがりました。市長や当局は、どのように受け止め、対応するのか、厳しく問われます。

 そのことを踏まえ、以下、財政構造改善のあり方について、日本共産党西宮市会議員団の考えを申し述べておきます。

 まず、指摘しなければならないことは、市民に密着する事業はどんどん削減しながら、一方で、「財政収支の改善を優先しつつ、まちづくりへの投資に資する施策、事業は厳選して実施する」との方針を掲げ、事実上、投資的事業が聖域とされていることです。
 「まちづくりへの投資に資する施策、事業」とは何か、というわが党の質問に対して、「学校施設改善」が挙げられましたが、それは当然実施すべきものと理解していますが、阪神西宮駅北地区の再整備事業や「阪急武庫川新駅」事業を挙げられました。少なくない市民サービスが真っ先に削られることと対比すると、まさに、メスを入れる場所が間違っている、と厳しく批判せざるを得ません。
 しかも、事業にかかわる費用の規模や概算をしめすことなく、事業の是非について議会の判断を求めるなど、極めて粗雑で乱暴な仕方で進めるようなことは、決して看過できません。
 現に、決算特別委員会総務分科会では、「阪神西宮駅北地区の再整備事業」について、事業費は概算で数十億円か、数百億円か、とただされても、当局は、「この段階では誤解を生むので示せない」などと答弁しています。
 このやり取りに対して、わが会派の野口議員が、関連質問で重要な指摘をしました。2022年11月におこなわれた「庁舎周辺整備」についての所管事務報告で、「県立病院の3号棟跡地購入を含めて概算37億円との報告がされている、なのに、いま答えられないとするのはおかしい」との指摘です。このような対応は、不誠実極まりない不適切な対応であり、即刻改めることを求めておきます。

 市民生活に密着する事業が次々と削減されようとしていますが、それらを「財政構造改善基本方針に基づく取り組みの大枠」などから抽出しますと、こんなものまで削るのかと驚くような事業まで列挙されています。公立幼稚園と公立保育所の統合再編、健康ポイント事業の見直し、市民交流センターの廃止、米寿のお祝い事業の廃止、後期高齢者医療の人間ドック受診費用助成の見直し、夏の平和啓発事業の見直し、障がい者、母子家庭等の医療費助成制度の見直し、休日診療体制の縮小、駅前などの公衆便所、公園トイレの削減、などなど、市民生活に密着する事業の見直しが、ずらっと並んでいます。
 一方で、投資的事業は、事業費用の規模もしめさず、魅力あるまちづくりにどれほどの効果があるのかの検討もなく、聖域扱いにして進めようとする。ここに、どれほどの大義があるのか、限りなく疑問が膨らんでしまいます。

 西宮市の魅力が損なわれつつあります。「西宮では保育所に入れない」そう言って他市へ転居された人が何人もいることを、見聞きしています。また、他市に比べて西宮の福祉がこれほど遅れているとは思わなかった。転居しようかと思う。そのような声が、先日も、寄せられました。
 超高層ビルを建てることが、魅力ある西宮なのでしょうか。福祉や教育が何よりも大切にされる西宮、子どもも大人も、だれもが大切にされる西宮にしてこそ、魅力あるまちといえます。

 次に、賛成できない問題点を、5点に絞って述べます。

 まず、一点目は、業務委託や指定管理者制度についての問題です。
 教育委員会は、小学校の常駐警備をある事業者に委託しましたが、トラブルの多発で契約方式を見直すこととなりました。どのようなトラブルがあったか、学校管理課からの報告によると、以前、河崎はじめ議員が一般質問で告発していた内容とほぼ同じで、第一に、業務開始日の直前まで警備員が揃わず、引継ぎが円滑に進まなかったことがあった。第二に、業者側の運営体制が整わず、学校や警備員への連絡調整や、制服等の貸与が適切に行われていなかったため混乱が生じ、年度当初は学校から苦情が多数寄せられた。第三に、受託事業者の運営体制が脆弱で、業務規模に見合った人数の担当者を配置できていないため早急な対応を求める案件に対して迅速な処理ができない。という内容でした。
 この業者は、教育委員会が委託する前年の2022年度と2023年度に、本庁舎の警備業務を受託していて、やはりトラブルがあったために、2024年度は指名を見合わせた業者です。にもかかわらず、小学校の常駐警備を指名競争入札方式で契約し、トラブル続きの業者に委託し、そこでもトラブルが多発した、ということです。
 なぜ、このようなことになるのか。市当局は、「市内業者育成の観点からも、そう安易に登録や指名を外すことはできない」との答弁をされています。そうなると、現状の指名競争入札方式では、改善を期待することができない、ということになります。現状の入札方式の見直しを求めます。
 また、指定管理者制度についても、契約通りの業務が遂行されない現状があり、抜本的な見直しが必要です。指摘しておきます。

 二点目は、認知症の無償診断についてです。認知症の診断を促進することは、文字通り、福祉事業そのものです。 ところが、西宮市の認知症の無償診断は、その財源を介護給付費準備基金で賄うこととしています。そうなると、介護保険料が大きく膨らむことになり、私たちは、賛成できません。他の市町では、一般財源を充てているところがあります。認知症無償診断の財源に、一般財源の活用を強く求めます。

 三点目は、高齢者バス運賃助成事業についてです。高齢者に発送していた案内通知を、今後、登録者だけに限るとしています。その費用効果は、320万円減です。こういう行政の姿勢が問題なのです。撤回を求めます。

 四点目は、生活保護の活用についての問題です。物価高騰で、家計が圧迫されています。食料品などが、買い物するたびに値上がりする状況にあります。一年前よりも、さらに二年前よりも、高騰が激しく、貧困による苦しみが増え、尊厳を深く傷つけています。生活保護を利用している人は、政府の対応がまったくなく、悪政の犠牲になっています。抜本的な対策を政府に求めます。
 そして、西宮市の生活保護利用者への対応にも、改善が求められる問題があります。例を挙げると、入院中のおむつ代は、一時扶助被服費として賄われることになっています。ところが、この制度を職員が知らなかったために、一時扶助被服費を活用できなかったということがありました。一時扶助にはたくさんの項目があります。その活用についての周知徹底を強く求めます。

 五点目は、保育所の待機児童問題です。西宮市の待機児童問題は深刻です。ところが、そこから脱出する見通しが立たないのに、西宮市は、「幼児教育・保育のあり方」の方針のもと、公立幼稚園と公立保育園の再編統合によって、保育定員を大幅に減らす計画を実行に移しています。当局は、公立園の再編統合の計画と待機児童対策とは真逆の方向を向いて走ることになる、矛盾するとの答弁を繰り返しています。しかも、保育定員を減らす公立園の再編統合を計画通りに進めようとするのであれば、当然、その影響をふまえた待機児童対策を、計画をもって推進しなければならないはずです。ところが、その方針がはっきりしないのです。待機児童対策は、行政に課せられた義務です。市のいまの状態は、事実上、義務を放棄している状態にあると言わざるを得ません。根本から改めることを強く求めます。

 以上が、問題点の指摘です。
 次に、二つ、党議員団の所見を簡潔に述べておきます。

 一つは、いま関心をあつめている公益通報制度についてです。西宮市の公益通報制度は、2021年議会質問も契機となって、一定の改善がされました。とはいえ、あらためて深堀すると、まだ、改善の余地があると思います。国も、公益通報者保護法の見直しを検討しはじめているようです。より進んだ知見を取り入、仕組みはもちろん、運用面での改善をさらに進めてほしいと思います。

 もう一つは、食肉センターの問題です。日本共産党は長年にわたって、公設として存続させ、多額の税金を投入することに反対してきました。このたびの「財政構造改善基本方針に基づく取り組みの大枠」において、食肉センターのあり方を検討するとの項目が加えられました。この9月議会の民生常任委員会での所管事務報告では、「現在の指定管理期間が満了する令和11年度(2029年度)以降は、公設として維持でいない」、「民営化により施設の継続をめざす」としました。遅きに失したとはいえ、大いに評価し、この方針を貫徹されることを、求めておきます。

 最後に、いま、国民生活は、貧困と格差が急速に広がるなかにあって、大変な状態にあります。さまざまな苦難を抱えた子どもたち、大人たちが、立ち往生しています。そうだからこそ、行政が、その人たちに寄り添い、ここに西宮ありという存在を示していただき、西宮市が希望を発信する存在になってほしいと思います。来年、西宮市は市制施行100周年を迎えます。福祉と教育が大切にされてこそ、魅力ある西宮と言えます。そのことを申し添えて、日本共産党西宮市会議員団の反対討論といたします。

 ご清聴ありがとうございました。