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2026年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:政策局
2025年09月02日


  1. 地方行政は言うまでもなく国政と密接に関わりがある。市は財政構造改善実施計画のなかで、国・県への要望・連携強化を取組項目に挙げ、国・県に対して必要な予算措置や制度改正等を求めていくとしているが、引き続きその活動を強め、市民に対してもそのことを広く知らせること。
    また市長は、国政上の政治的重要事案についても、民主主義や自由を守り、市民の福祉を増進する観点から積極的に発言すること。

  2. パブリックコメントで批判的な意見が多数寄せられた財政構造改善実施計画(以下、計画という)は、一部修正されたものの、ほぼ原案通り2025年 2月に策定され、現在遂行されている。
    計画は、「財政がきびしい」とことさら強調し、市民サービスの低下につながる事務事業の見直しを行う一方、「まちづくりへの投資に資する施策・事業は厳選して実施する」として、阪神西宮駅北側再整備など5つの不要不急の事業に取りくもうとしている。また、それ以外にも計画実施期間中に多額な経費がかかる鳴尾浜臨海公園南地区再整備事業に着手する。
    24年度決算見通しでは市税など歳入の上振れなどで収支改善が見込まれ、一部事業の拡充なども予定されていると聞く。また、計画に掲げて見直すとしている事務事業には、必ずしも財政収支改善を一義的目的としない、事務事業の在り方を再検討するような事業も多数含まれており、この際、現計画は撤回すること。

  3. 公共的なサービスを官だけでなく、市民やNPO、企業などが提供する主体となる「新しい公共」が言われて久しい。市においては、市民やNPOが主体となる公共サービス提供はほとんどなく、新たに取り組まれるPark-PFI制度や、民間提案制度等々、企業による公共サービス提供=民間活力の導入が中心となっている。企業には「儲け優先」という企業の論理があり、民間活力の導入は公共サービス低下を招く恐れがある。安易な民間活力の導入を許さず、導入の際には行政が適切に指導・監督すること。

  4. 指定管理者制度の導入以来、相当年が経過した。受託事業者が、収益を上げることを目的に労働者の雇用や労働条件を不安定化させ、ひいては住民の安全確保への配慮などが欠落している等の問題を起こしており、総務省も2010年には指定管理者制度の運用について通知を発出、また、2022年には調査結果を公表している。本市では指定管理者制度のモニタリングを実施しているが、より厳格に実施するとともに、制度そのものの検証を行い、公共の責任を適切に果たせるようにすること。

  5. 公共施設マネジメントについて市は、「一律に規模を縮減するのではなく、必要な機能・サービスを確保し、既存施設の有効活用を含めた適正配置を進める。既存施設を同規模で更新することは困難だが、市民サービスの質をできるだけ低下させずに施設総量の見直しを図りたい」としている。
    「財政構造改善実施計画」」では低廉に利用でき利用者の多かった器楽練習室を含む青少年ホームが廃止された。一方、機能を大学交流センターと統合し、施設の廃止が予定されていた市民交流センターは地域住民の強い反対で当面の間存続され、今後の方針が留保されている。計画では今後、公民館や市民館等の統廃合も取り組み項目にあがっているが、これは明らかに市民サービスや市民コミュニティの低下につながるものである。これらについては市民の意見を尊重すること。

  6. コロナ禍において据え置きとなっていた施設使用料が、25年度には3年ごとに再算定するとしている「西宮市施設使用料指針」により見直され、値上げとなった。「指針」に従えば今後も際限のない値上げが強行されることになる。この際、「指針」を見直すこと。

  7. 国の政策に則って民間に有利な補助制度活用や規制緩和が幾重にもおこなわれる阪神西宮駅北側再開発事業では、40階を超えるタワーマンションが建設される。このような民間主導のまちづくりに市は、区画整理事業への参画のみならず、図書館の移転新築を含む公民連携事業と銘打って大きく関与している。タワーマンション建設は西宮のまちづくりとしてふさわしいものとは思えない。今後の事業進展に伴って公民連携事業の市の費用負担増大も十分考えられる。このような図書館整備を含む公民連携事業など阪神西宮駅北側再整備に反対である。今後、周辺道路の渋滞や駐輪場不足などの課題が予測される。万全の対策をとること。

  8. 名神湾岸連絡線整備について、市は「推進」を県に要望しているが、同道路は地域住民の健康や環境に大きな影響を与えるうえ、構造上も危険を伴うものである。同計画の白紙撤回を求めるとともに、進捗状況については住民に丁寧に説明すること。

  9. JR甲子園口駅北側は長らく交通安全面の課題や老朽建物の存在など景観上も課題を有する地域であったが、地元自治会の強い要望から市の指導も強まる中で老朽建物が取り壊され、現在、民間土地所有者の跡地暫定利用が始まろうとしている。地元からは、阪急バス停留所の屋根やベンチの設置や周辺歩道の整備、土地暫定利用にあたって見通しの確保などについて要望が出ている。市担当者も地域自治会や土地所有者、阪急バスとの懇談を重ねるなどしているが、引き続き課題解決に向け努力し、公共としての責任を果たすこと。

  10. 市内には市が交通不便地域(鉄道駅から半径500m、かつ、1日の運行本数が片道15本以上あるバス停より半径300mから外れている)と位置付けている地域が40か所あり、バス路線の拡充は、この解消に不可欠であるが、運転手不足等により路線の廃止や便数減など、むしろ現状は悪化している。
    今後、高齢化が進行するなかでバス利用の潜在的需要はいっそう高まることは明らかであり、住民の要望に沿った路線拡大や便数増などにいっそう努力すること。あわせて、バス停留所への屋根及びベンチの設置、ならびに、ノンステップバス拡大にはスピード感をもって取り組むこと。

  11. 市内ではバス「乗り継ぎ」割引制度がないため、市民や高校生等の負担が大きくなっている。ハニカ定期券の発行により割引制度が一定拡充されたが、普通乗車券でも同一バス会社間および、阪神、阪急間の乗り継ぎの際運賃が割引となるよう、関係者と協議を行うこと。

  12. 交通不便地域の解消策の一つと位置付けているコミュニティバスは、地域が主体となって生瀬、名塩、山口、苦楽園、甲陽園各地域などで実施または計画がすすんでいるが、今後の他地域での展開は見通せない。これまでのような地域主体では限界があり、市が積極的に関与する新たなコミュニティ交通の在り方を検討すること。

  13. 市は自衛隊の要請に応じて、住民基本台帳から18歳と21歳の市民の氏名、住所、性別、年齢の4情報を抽出し、電子データで提供している。これは憲法13条に基づくプライバシー権、あるいは自己情報コントロール権の侵害にあたる。名簿の提供は行わないこと。少なくとも自衛隊に名簿を提供していることや2023年度からは希望しないとの申し出があった場合は除外していることを市民に公表すること。

  14. ふるさと納税制度は、郷里への応援、被災地支援など、それ自体としては積極的な意味を持ってスタートしたが、魅力のある「返礼品」を用意した自治体への寄付の集中がある一方で、本市のように税収が大幅に減じる自治体が生まれ、また寄付額の相当部分が「返礼品」の費用で消えてしまうなどの弊害も目立ってきている。本来の趣旨を生かせるような仕組みの見直し、あるいは制度廃止も含めて国に要望すること。

  15. 企業版ふるさと納税と称して、企業から派遣される人を受け入れ、行政の仕事を担わせている。場合によれば企業とのゆ着が危ぶまれる事態が生じないとも限らない。受け入れに際しては慎重に検討し、受け入れる場合は公表すること。