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2026年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:健康福祉局
2025年09月02日


  1. 百日咳など各種の感染症がおりにふれて流行する。新型コロナウイルス感染症は、2023年5月から感染症法上の分類が5類へ移行し、その対策と対応が大きく変わったとはいえ、新型コロナウイルス感染症も発生し続けている。適宜、市民への各種感染症の発生状況にふさわしい対策の徹底と注意喚起を行うとともに、パンデミックの重要な教訓をふまえ、必要な人員を確保しておくこと。

  2. 西宮北部の医療環境について、西宮市は、他市の医療機関との連携によって成り立っているとしている。そうしたなかで、北部住民の多くが利用する済生会兵庫県病院(神戸市北区)が、三田市民病院との統廃合計画によって廃止されれば、地域住民の医療環境がさらに悪化し、医療難民を多数生じさせることになりかねない。西宮北部住民の切実な意見・要望をしっかりと受け止め、医療環境の充実のための責任を果たすこと。

  3. 「重層的支援体制整備事業」が2025年から本格的に実施されている。重層的支援とは、ひきこもりやヤングケアラーなど複合的な課題を抱えている人にたいし、包括的な支援ができるよう、@相談支援、A参加支援、B地域づくりの三つの支援を一体的に実施するものとされている。そのための庁内連携体制が構築されるとともに、地域づくりに向けた支援体制については、西宮市社会福祉協議会に業務委託をおこない、事業を進めている。こうした重層的な支援体制が構築され、十分な成果を得られるよう、福祉関連部署はもちろん、生活関連部署の職員が市民の困りごとに「気づく」ことができるよう、必要で十分な人員を確保すること。

  4. 産後ケア事業は、通所型、宿泊型、訪問など、親の不安や心配事を取り除き、育児への自信を持つことができることなどの重要な役割を果たしている。この間、制度の改善にともなって、利用者が増えている。しかし、手続きの煩雑さなど解決すべき課題も見えてきている。希望する人がだれでも利用できるユニバーサルな事業と位置づけられていることをふまえ、利用者を広げるため、課題を整理し、より積極的な事業とすること。

  5. 本市では現在、母子保健法にもとづく乳幼児健康診査を、4か月児、1歳6か月児、3歳児を対象に実施している。くわえて、西宮市は、国が「1か月児」及び「5歳児」の健康診査をめざすとしているため、「5歳児」の健康診査については、早期実施をめざしている。「5歳児」の健康診査をただちに実施するとともに、「1か月児」の健康診査についても実施すること。

  6. 介護保険制度について
    創設されてから25年を迎えた介護保険制度は、いまや、「崖っぷち」の状態から「介護崩壊」がはじまったといわれるほどの危機を迎えている。とくに、訪問介護事業所が次々と廃業に追いやられ、「保険あって介護なし」という危機的な事態が広がっている。市としても、介護の基盤崩壊が起きているとの重大認識の上に立って、介護の危機を回避するために、全力をつくすよう、次のことを要望する。
    (1)「介護崩壊」状態をつくりだした責任は、国にある。誰一人取り残さない介護体制をつくるために、市は国に対し、国庫負担の増額はもちろん、訪問介護基本報酬の引き下げの撤回、介護事業所の継続のための支援を行うなど、制度の抜本的改善を求めること。
    (2)市における介護保険料は、第9期(2024年〜2026年)については、引き上げとなった。長引く物価高騰から国民の生活はひっ迫している。介護保険料は介護給付費準備基金を全額繰り入れ、年度途中でも引き下げること。
    (3)市が、高齢者と唯一直接関わっているのが介護認定業務である。認定調査の一部を民間委託しているが、これ以上民間委託をすすめれば、市が介護を必要とする高齢者の実態を直接把握する機会がなくなる。これ以上の民間委託はやめ直営を守ること。
    (4)介護申請の際の認定調査結果まで時間を要しており30日以上かかるケースが見受けられ、在宅介護に支障をきたしている。医師意見書作成に時間を要しているなど実態を調査し、スピード感を持って行われること。また、更新や介護度変更申請の際も同様の対策が望まれる。
    (5)事業所の休止や廃業が相次ぎ、安心して在宅療養が継続できない状況が生まれている。市域における訪問介護事業所の実態調査を実施し、それをふまえた改善策を提起すること。

  7. 特別養護老人ホームについて
    (1)市の特養待機者は2023年4月時点で598人、2024年4月時点では594人と聞いている。現状は、待機者の解消へ向かっているとは言えない。要介護者が安心して利用できるように特養を増設すること。
    (2)特別養護老人ホームの入所対象は要介護3から要介護5だが、要介護1又は2の方も入所できる特定入所について知られていない。ケアマネや施設相談員にも入所相談時に説明を行うよう求めること。
    (3)西宮中央病院跡地における特別養護老人ホームの新設・養護老人ホームの移転については甲陽園市住跡地へと方針が転換された。整備法人を公募する際、近隣住民への説明・連携・調整を十分に行うことを条件とした。形式的にならないよう指導監督を厳格におこなうこと。

  8. 山口町上山口に整備を予定している特別養護老人ホーム建設は、近隣住民への配慮を欠いた建設計画となっており、事業者が近隣住民の意見を全く聞くことなく強行的にすすめている。このような強行は許されない。とことん近隣の住民に寄り添い、事業者にたいする指導を貫徹すること。

  9. 高齢者の住まいの問題は軽視できない。認知症状のない、自立した低所得の高齢者が利用できるケアハウスが足りていない。ケアハウスを計画的に増設すること。

  10. 高齢の単身者が増えている。施設入所や入院時の連帯保証人、緊急連絡先の問題が大きい。民間保証会社等もあり、利用も増えているようだが、利用金額は高額で信用性にも欠ける。利用者が被害に遭わないよう民間保証会社の実態を把握し、対策を講じること。また、民間保証会社に替わる市での対応を研究し、検討をすすめること。

  11. エッセンシャルワーカーについて
    (1)エッセンシャルワーカーの賃金の抜本的改善については、世論の高まりに押され、この間、多少の賃金の引き上げがおこなわれたが、いまもなお、全産業から平均月10万円ほども下回っており、深刻な人手不足が解消されないままである。看護・介護・保育業界では、人材紹介業者に頼らざるを得ない状況にあり、雇用契約時の成功報酬として年収の2割を紹介業者に求められる等が報告されている。市民が安心して医療・介護・福祉をうけることができるように対策をすすめること。
    (2)西宮市は医師会看護専門学校に対して運営費補助金を交付しているが、兵庫県が県立大学の学費無償化方針を打ち出したことにならい、西宮市民の看護学生に対して学費無償化とし、看護師確保に力を入れること。
    (3)市は看護学生の奨学金制度として、協愛奨学基金を設けており卒業後は市内医療機関への就業により返還免除となる。しかし、年間7名と限られており、希望者は少ないと聞く。看護師を目指す市民に広く制度を周知するとともに、対象人数を拡大すること。
    (4)訪問介護の担い手不足の中、市は「介護に関する入門的研修」など開催し、福祉人材確保の取り組みを行っている。既存の取り組みを進めるとともに、年間を通した取り組み、回数増など企画し、訪問介護事業所の就労に繋がるよう支援を行うこと。また、研修の受講料の助成を増額すること。

  12. 加齢による聴こえの支援について
    (1)高齢者の難聴は日常生活を不便にし、生活の質の低下、放置するとうつ病や認知症、引きこもりにつながるといわれている。しかし、補聴器は健康保険や法的補助が適用されないため、公入をあきらめている高齢者も多い。全国の自治体で独自の助成制度が広がっており、2024年12月1日現在で、390自治体にまで広がっている。兵庫県下においては、この一年の間でも実施自治体が増え、現在、15自治体が助成している。西宮市で実施した場合に必要な財源は、対象人数が600人規模として、一人当たり2万円の助成とした場合、額としては1200万円ほどである。補聴器購入費用助成制度をつくり、高齢者の健康増進を図ること。
    (2)聴こえの低下は40歳代から始まっていると言われている。聴力低下を早期に発見し対応することが求められている。しかし、聞こえの低下については、徐々に進行するために、なかなか自覚することができず、いつの間にか聞こえにくくなっているという事情から、早期発見には至らない。聞こえの低下を早期に発見できるようにするため、健診事業に聴力検査も位置づけ、検査への助成制度をつくること。

  13. 近年の猛暑は命の危険にまで及ぶレベルとなり、連日熱中症警戒アラートが発令されている。屋内での熱中症による死亡者も増えており、猛暑対策として以下要望する。
    (1)他市で実施しているエアコン購入、電気料金補助を市民税非課税世帯などの低所得者を対象に実施すること。
    (2)高齢者世帯や要介護者世帯、障がい者世帯などのエアコンの有無を調査し、介護事業者などの協力を得て、正しく利用できているかの見守りを行き渡らせて安全に過ごせるように、支援方法を検討し実施すること。

  14. 高齢者交通助成制度は鉄道会社の協力が得られず事業が中止となった。それに替わる事業として市は、健康ポイント事業と高齢者バス運賃助成制度を2021年度から開始したが、健康ポイント事業は2024年度で事実上の中止となった。以下、要望する。
    (1)以前の高齢者交通助成事業の利用者の8割が鉄道利用だったとのこと。現在も鉄道利用再開の声が多い。鉄道の再度利用に向けて、電鉄会社の協力が得られるよう取り組みを再検討すること。
    (2)バス路線が不十分な本市の特徴から、高齢者の外出支援のためのタクシー利用が可能な制度に改善すること。
    (3)高齢者バス運賃助成事業に対するアンケート調査が行われたが、その回答には「事業の継続希望」や「電車への拡充希望」という意見が寄せられている。その声を事業に反映すること。
    (4)現在、福祉タクシー派遣事業が行われているが、介護度3以上が対象である。高齢者の社会参加を促すことの重要性に鑑み、健康づくり・いきがいづくり、さらには、在宅生活を維持するためにも、対象を要支援者まで拡大すること。

  15. 障がい者(児)施策について
    (1)国の基本指針では障がい者入所施設から地域生活への移行を進めるとしている。2022年に行われた西宮市障がい者等実態調査(以下、実態調査)では、希望する暮らしの項目において、グループホームやサービス付き高齢者住宅が増えることを望む声が上位にある。しかし、障がい者グループホームは圧倒的に少ない。市は、「障害者グループホーム開設準備補助事業」をおこなっているが、増設を支援する施策をさらに拡充すること。
    (2)事業者にたいしては、利用者の人権が侵害されることのないよう厳密に指導すること。
    (3)障がい者差別解消(共生社会の実現)に向けた取り組みでは、民間企業や教育の場においても、人権意識の向上とあわせ、障がいのことを知り、障がいのある方にちょっとした手助けを実践する「あいサポート運動」についての研修をすすめること。また、合理的配慮の提供支援では、助成事業の利用がまだまだ少ない。どんな配慮をすれば良いか、事例の周知を強め、取り組みを充実させること。
    (4)障がい児の小児医療は、移行期医療が大きな課題となっている。成人しても安心して医療が継続して受けられるように関係機関との連絡調整を行う体制づくりを検討すること。また、本市では、医療的ケア児等コーディネーターが一人配置されることとなったが、一人では足りない。計画的に増やすこと。
    (5)社会参加の促進のために視覚障がい者に対して支給している同行援護(ガイドヘルパー)は月60時間であるが、人によってはまったく足りず、余暇を楽しむことができない。実態を把握し、生活を楽しむことを保障する同行援護となるよう時間数を拡大すること。
    (6)日常生活用具給付は、地域生活支援事業の必須事業で、地域の実情に応じ地域が創意工夫し提供するとされているが、本市は中核市の中でも水準が低い。音声血圧計の追加や、点字ディスプレイを現在の「視覚聴覚障がい2級以上」から「視覚障がい単一」を対象とする、世帯要件を見直すなど、当事者の意見・要望をもとに拡充すること。
    (7)視覚障がい者は、聴覚によって得る情報が決定的に重要である。その聴覚が加齢性難聴によって障害が重なれば、情報へのアクセスが途絶え、コミュニケーションを阻害されることになり、日常生活そのものが成り立たなくなる。加齢性難聴の視覚障がい者対象にした、市独自の補聴器購入費用補助制度を、障がい者への当然の合理的配慮として、創設すること。
    (8)点字ブロックや音響式信号機、エスコートゾーンの整備など、計画的に既存の整備を点検し、当事者の要望に沿ってバリアフリー化を進めること。

  16. 生活保護制度は憲法25条が定める生存権保障の土台となっている制度である。その基準は、最低賃金、就学援助、国民健康保険料の減免、公営住宅の減免等、国民の生活に関わるさまざまな制度の基準と連動している。まさに、生活保護基準は“命の砦”となっている。にもかかわらず国は、生活扶助費の基準を引き下げた。これを違法として提訴された裁判において、最高裁が生活保護基準の引き下げは違法とした。そのことをふまえ、次のことを要望する。
    (1)命の砦にふさわしい制度となるよう、老齢加算の復活、物価高騰と連動した生活扶助費、住宅扶助費など保護基準(最低生活費)引き上げを国に求めること。
    (2)生活保護制度による扶助には、入院時のおむつ代など、臨時に支給できる制度があるにもかかわらず、周知されていないために、制度が十分活用できていない実態がある。制度がもれなく利用できるよう、関係職員が制度について熟知するとともに、わかりやすい制度活用の資料を整理しておくなど、万全を期すこと。
    (3)ケースワーカーは、国基準では、被保護世帯80世帯に1人とされている。2024年4月時点で1ケースワーカーが担当する被保護世帯は110世帯とのこと。複雑化するケースワーク業務に対応するため、人的配置や環境づくりも行い、引き続き増員すること。また、質を高める研修をおこなうこと。
    (4)生活保護申請を躊躇させるような、扶養義務者照会については、政府が2021年2月に発出した「扶養義務履行が期待できない者の判断基準の留意点等について」という連絡文書、また、国会での厚労相答弁で、扶養照会は法律事項ではなく「義務ではない」と述べたことをふまえ、扶養照会を行わないこと。
    (5)熱中症警戒アラートが連日発令されるほどの猛暑が続き、エアコンの使用は不可欠である。全生活保護世帯のエアコンの有無を調査し、設置を促すこと。また、買い替えや、エアコン修理については、「住宅維持費」として支給できるよう国に求めること。
    (6)長引く物価高騰と電気料金の値上げからエアコン使用を躊躇している利用者も多い。近年熱中症での死亡者数は増加傾向にある。電気料金への補助として、夏季加算を検討すること。市の一般財源による、夏季・冬季見舞金および上下水道料金の基本料金免除を緊急に復活することと併せて、国にも要望すること。
    (7)利用者が入院すると、生活扶助費は入院基準(23,110円)となる。この中から自宅の共益費や水光熱費の基本使用料を支払うこととなり、最低限度の生活が保障されなくなる。また、入院セットというような病衣や日用品のリース代も必要となる。安心して入院治療をうけることができるように、入院基準額の増額を国に強く要望すること。
    (8)施設へ入所する場合の施設衣のリース代も一時扶助の被服費として対応できるよう国に求めること。

  17. 離職や廃業に伴い、住居を喪失またはその恐れのある人には一定期間家賃相当額の支給を行う住居確保給付金については、収入が減少した人も受給できるように制度が改正された。しかし、預貯金保有の要件や、求職活動要件が厳しすぎる。見直すよう国に要望すること。

  18. 民間空襲被害者への補償問題が、いまだに解決されないまま放置されている。政府は、元軍人・軍属には恩給・年金などで保障を続けているにもかかわらず、民間の空襲被害者には、「戦争被害は等しく受忍すべきだ」などと言って、救済を現在に至っても拒み続けている。いくつかの自治体が「民間戦災障がい者援護見舞金」制度を創設して、民間の戦災被害者を支援している。西宮でも実態に見合った見舞金制度を実施できるよう検討すること。