2026年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:教育委員会/* --項目挿入-- */?>
2025年09月02日
- 国連の子どもの権利委員会による日本への勧告によれば、日本では、子どもの意見表明の権利が尊重されていない、と指摘されている。そして、子どもが自身にかかわるあらゆる問題にたいして自由に意見表明できる環境(場)を提供し、かつ、その場に子どもが参加できるよう促すことを求めている。児童生徒が生活のほとんどを過ごす学校の現場でこそ、子どもの権利条約にもとづく具体的な取り組みを推進、強化することが強く求められる。特に、生徒指導提要が改訂されたことの重要な意義をふまえ、以下のことに取り組むこと。
(1)子どもの権利条約第42条は、「締約国は、適当かつ積極的な方法でこの条約の原則及び規定を成人及び児童のいずれにも広く知らせることを約束する」としている。子どもの権利条約そのものを、教職員はもとより、児童生徒に周知徹底すること。たとえば、子どもの権利条約を分かりやすく知ることができる冊子(カードブック)を、児童生徒、保護者、教職員、幼稚園等に配布すること。
(2)教職員や学校関係者の研修において、子どもの権利条約を、必須の項目とすること。
(3)合理的な説明がつかない校則で児童生徒をしばりつけることは、子どもの権利条約にも、改訂された生徒指導提要にも適合しない。校則を子どもの尊厳と権利の視点から積極的に見直し、その際には、児童生徒自身がその場に参加し、十分な意見表明ができるよう環境を整えること。
(4)児童生徒へのハラスメントや不適切指導は、程度と場合によっては虐待となり得る。また、その行為は、その場面を見聞きした児童生徒への虐待ともなり得る。どのような行為が、ハラスメントや不適切指導にあたるのか、教職員の学びを高め、子どもの権利を侵害するような行為を学校現場から一掃すること。
(5)近年、あってはならない教師による性暴力・性犯罪がおきている。他山の石とせず、万全の対策をとること。
- ジェンダー平等の取り組みは、学校や幼稚園での取り組みが重要な位置を占めるとの認識から、その教育実践が広がりつつある。生まれつきの「性」だけではなく、さまざまな「性」があることを知り、それを尊重すること。
(1)特に幼児期では、人格形成の基礎となる重要な時期であり、「らしさ」を押し付けないよう遊びや活動の選択において指導にあたる保育者や教員に研修を行うこと。
(2)性的マイノリティの児童生徒が過ごしづらい学校の環境を一つひとつ解消する努力を強めること。生徒指導提要にもとづく取り組みを徹底、施設面での課題についても、その課題を絶えず洗い出し、解決し、すべての児童生徒が安心して過ごせるようにすること。
- 「いじめ」防止の取り組みを強化することは、喫緊の課題である。次のような原則を明確にして、万全を期すこと。
(1)学校等で起こる「いじめ」問題への対応は、なによりも、子どもの命が最優先という確固とした構えを確立することが大切である。「いじめ」は人権侵害と暴力であるという深い認識にたち、「いじめ」の放置・隠蔽は、「安全配慮義務」違反に当たることも明確にして対応すること。
(2)「いじめ」は大人にわからないように行われ、加害者はもとより、被害者も「いじめ」を認めない場合が少なくない。それだけに訴えやシグナルがあった時は、相当深刻な段階になっていると判断し、「いじめかな」と少しでも疑わしいことがあれば、ただちに全教職員で情報を共有し、子どもの命最優先のすみやかな対応が必要である。「事実確認してから報告」などの形で様子見をして事態を悪化させることのないよう、早い段階で、保護者と教員とのコミュニケーションを密にすること。
- インクルーシブ教育システム構築のための特別な配慮を要する児童・生徒の支援に係る教育について、次のことに取り組むこと。
(1)インクルーシブ教育を推進、校内支援を確立するため、教員・特別支援教育支援員の人員増を県に強く求めること。
(2)支援が必要な子どもには学校協力員を配置することができるが、配置時間が1日4時間までという制約がある。支援時間の制約をなくすなど、必要な配置ができるよう支援体制を直ちに見直し、強化すること。
(3)特別支援学級に通学する子どもは登校や下校に保護者が付き添っている。保護者の都合がつかない時は、事前に登録すれば学校協力員による通学支援が可能となった。しかし、年間4回の利用に加え突発的な理由が対象であり、保護者の就労によるという場合はこの制度が利用できない。検討を進め、解決を図ること。
- 本市の不登校児童・生徒は2024度1236人で、そのうち、あすなろ学級利用者は150〜200人、校内サポートルーム利用者180人、あすなろオンライン利用者25人、フリースクール利用者90人であるときく。半数を大幅に超える児童・生徒は、制度を利用せず過ごしていることがわかる。以下の取り組みを強めること。
(1)教育支援センター「あすなろ学級」が7か所(サテライト型3か所を含む)設置され、「あすなろかわらぎ」において「フリーセレクション制」の導入が行われている。他のあすなろでも導入し、他の施策とともに児童生徒の声にしっかりと寄り添うこと。
(2)「校内サポートルーム」は、全中学校と小学校41校中21校に設置されたが、実態は1週間に1日などと、毎日開催されていない状況である。また、専任担当者の配置もすすんでいないと聞く。子どもたちが、安心して利用できる状況ではない。当事者の意見やをよく聞き、各地の経験を集めて、専任者の配置などをすすめること。
(3)民間のフリースクールを利用する際の費用負担が大きい。たとえば、兵庫県内では、平均、入会金で約5万円、月額で3〜4万円くらいとなり、トータルすると年間で50万円くらいかかる、とされている。経済的負担が大きいため、フリースクールの利用を希望しながら、利用そのものをあきらめざるを得ない事態も少なくない。児童生徒の「誰一人取り残されない学びの保障」を確実なものにするためには、公による経済的支援がどうしても必要となる。フリースクール利用に係る費用への助成制度が、全国に広がっている。本市でも検討すること。
- 2023年4月から全国の学校で始まった「生命(いのち)の安全教育」について、政府は性暴力・性犯罪から子どもたちを守る教育を進めるとしている。しかし、性交や妊娠の経過を取り扱わないとする学習指導要領の「はどめ規定」が、性教育の真の目的を果たすうえで障がいとなっている。2024年10月には、国連女性差別撤廃委員会から、日本政府に対して包括的性教育の実施が再び勧告されている。「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」を参考に包括的性教育の導入をすすめること。
- 平和教育について、以下、要望する。
(1)平和教育を重視し、平和の尊さとともに、日本の侵略戦争と植民地支配の歴史的な事実や反省を、児童・生徒に伝えることは、二度と同じ過ちを繰り返さない観点から重要である。公教育のなかで侵略戦争を美化・肯定するようなことは決して許さず、平和教育をすすめること。
(2)戦後80年を迎え、ますます、西宮市の「平和非核都市宣言」にもとづく平和啓発活動や、原水爆禁止西宮協議会の活動も、その重要性が増している。本市各地の空襲による被害、被爆の実相を語り継ぎ、核兵器のない世界、戦争のない世界をどのようにつくるのかを考え、語り合う授業を、すべての小中学校で実施すること。
- ギガスクール構想は、先端技術の活用で一人ひとりの子どもに「個別最適化された学び」を推進することを目的に掲げた構想である。しかし、デバイスの破損や紛失、故障時の対応など、学校側が抱える負担が増大している。また、教員のICTスキル不足、家庭や地域間の格差、セキュリティや健康面の課題が浮上している。問題を未然に解消する条件整備を確実にすすめること。
- 市は、全国学力テストにくわえ、市の独自テストを実施しているが、結果の傾向は変わらず、その実施目的が必ずしも達成されているとはいえない。不要な市の独自テストは廃止すること。
- 教員が不足し新学期早々から学級担任がいないという異常な事態が生じている。今年度は未配置がないとしているが、法令上必要な時間数を満たしている状態ではない。産休代替の確保もすすんでいないと聞く。年度途中での病休が予想されることもあり、教職員の採用を増やすよう県教育委員会に強く要望すること。
- 教職員の多忙化がいよいよ深刻である。多忙化の解消のために、以下の項目に取り組むこと。
(1)教職員の長時間労働の主たる原因は、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」によって、労働基準法で定める労働時間制限を教職員には適用しないとしていることにある。いわゆる「給特法」の撤廃を国に求めること。
(2)教職員の勤務時間と業務量を適正に管理することが教育委員会に求められている。業務量削減に向けた取組と人員の確保に努めること。
(3)教員の授業コマ担当数を減らすためには、教員の基礎定数を改善することが必要不可欠である。国に改善をもとめること。
(4)市は、教職員の「変形労働時間制」を導入しないとのことである。この立場をつらぬくこと。
(5)学びの指導員およびスクールサポートスタッフの配置について、学校の要望に応じた人員を適切に確保できているのかどうか、教育委員会が把握し、十分な配置ができるよう、進めること。財政負担については国・県に求めること。
(6)子どもの貧困や児童虐待やヤングケアラーの問題など、学校には対応すべき重大課題が山積している。課題解決のために、まずはスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカー増員を県・国に求めること。
(7)学校には児童生徒や保護者との対応だけでなく、地域との連携、さらには、多方面にわたる関係機関との連携など、管理職が対応している独自の業務が増大している。その業務を担うための人員を増やすこと。
(8)学校での歯科検診をはじめその他の検診において、検診の記録を教職員がおこなっている。誤記のリスクを減らし、教職員の負担軽減のために、学校での検診記録作業は、医療機関に要請し、実施してもらうこと。
- 「自然学校」は、教職員の多大な負担となっている。「自然学校」のあり方については、現場教職員の意見を集約するなど、改めて十分に検証し、実施時期、実施日数等、柔軟な対応を行うこと。
- 少人数学級を促進することは、緊急で切実な課題である。小学校6年生までが35人学級となっているが、兵庫県の独自施策として、中学3年生までの35人学級を直ちに実施することを、強く要望すること。また、市独自でも少人数学級の実施を検討すること。
- 教職員の多忙化解消の取り組みとして、登校時間の開始を15分遅らせることにより、教職員の出勤時間を調整している学校がある。しかし、決められた登校時間よりも早い時間に保護者が出勤する家庭では、児童が1人で戸締りし、登校することになる。他市では、体育館や図書室を開放して児童の安全確保のための取組がすすめられている。市でも検討し、実施すること。
- 近隣他市と比較し、本市の学校司書の配置は圧倒的に少ない。すべての学校に司書を配置すること。また、全校に専任の司書教諭を配置すること。
- 部活動の地域移行について、政府が2022年(令和4年)6月に部活動地域移行にむけた方針を示し、市では「プレみや」という名称で、2026年9月に地域移行することが確認された。移行するにあたり、子どもたちの文化スポーツ要求を権利として保障することを明確にして取り組まなければならない。当事者である子どもたちの意見も丁寧に聴き、保護者・住民にも広く十分な説明や周知を行うこと。また、経済的な負担が大きいことも予想される。そのことにより体験格差が生じないよう、国・県へ財政支援を求めること。
- 県の一斉事業であるトライやる・ウィークは、全中学校一律・一斉で実施するのではなく、柔軟に対応できるよう改善すること。
- 西宮市は「西宮市学校施設長寿命化計画」を策定し、各学校を80年〜100年長寿命化させるとしている。あわせて、2024年(令和6年)3月に行われた所管事務報告において、「西宮市学校施設長寿命化計画改定の方向性について」が示された。
そもそも「西宮市学校施設長寿命化計画」は、学習環境の劣悪な状況の改善、著しい学校間格差の解消などの課題を解決することにはならない計画であり、抜本的な見直しが求められているにもかかわらず、新たに示された市の「改定の方向性」は、「児童・生徒数が大幅に減少している学校があるため、学校の適正規模と適正配置を検討するとともに、……必要に応じて統廃合についても慎重に検討する」としていることは重大である。長寿命化計画の中で学校の統廃合を議論することはおかしい。長寿命化計画を抜本的に見直し、少人数学級促進に資する計画とすること。
- 学校トイレの改善について、以下の項目を急ぎ取り組むこと。
(1)性別に関係なく誰でも利用できる「みんなのトイレ」を設置すること。
(2)トイレの洋式化率60%台を100%へと急ぐこと。
(3)未だ、「臭い」の問題が深刻である。湿式から乾式へと環境改善を急ぐこと。
- 教室への冷暖房の導入はすすんだが、冷房の効きが悪いといった苦情を聞く。施設の断熱状況を調査し、必要な個所への断熱材のリフォームについて費用対効果を検証し、普及を急ぐこと。
- 「西宮市立学校施設包括管理業務委託」の実施に向けた検討と準備が進んでいる。西宮市内の学校等の施設のほぼすべての管理を民間に業務委託しようとするもので、業務内容には、破損など不具合通報への対応も含まれており、「西宮市小規模修繕契約希望者登録制度」活用への影響が懸念される。この制度がこれまでと同様に活用されるよう、市の指導監督を貫徹すること。
- 「直営自校方式」で実施されている西宮市の小・中学校での学校給食は、食育の観点からも子どもたちの健康と成長を守る上でも大きな役割を果たし、保護者からも喜ばれている。以下のことに取り組むこと。
(1)政府は2026年度から全国の小学校での給食費無償化の実施と中学校での早期実施を決めた。国が2026年度予算を策定するに当たり、丁寧な制度設計を行って、十分で豊かな財政措置を行うよう国・県に求めること。
(2)給食費の無料化に踏み切る自治体が広がっている。給食は食育であり、教育の一環である。よって教育費の無償化という教育基本法や憲法の精神に立ち、小学校での給食費無償化に続き、中学校においても無償化を直ちに実現すること。
(3)物価高騰が止まらず、多彩な食材を調達することが困難になり、学校給食の質や内容を維持できなくなっていると聞く。給食の豊富な内容を維持するための予算措置を講ずること。
(4)「直営自校方式」は、将来にわたって堅持すること。
(5)夏場の調理室では40℃を超えるほどの危険な環境となっている。今年度、空調管理されていない小中学校調理員が熱中症で複数人が救急搬送された。空調設置計画が前倒しされると聞くが、設置されるまでの期間、移動式クーラーの設置などの検討、導入を急ぐこと。
(6)適宜、水分補給などの休憩を行うことができるよう、必要な人員を確保すること。
(7)不登校児童生徒は、給食費の負担を必要としないにもかかわらず、そのことが担任教諭から知らされず、給食費を払い続けていたという事案が見られた。このようなことがないよう、マニュアルをつくり、その手続きについて徹底すること。
(8)給食の安全性や食育増進、食物アレルギーへの対応等から栄養教諭を全ての学校に配置が必要である。栄養教諭の配置基準を見直すよう国に求めること。
- 夏休みなど、学校の長期休業後に児童・生徒の「痩せ」が心配されている。学校家庭科室など利用した昼食提供を、子ども支援局とも連携して取組を研究・検討すること。
- 近年、学校内および通学路で、重大事件や事案がたびたび発生している。社会情勢に応じた児童生徒の安全を確保するための態勢を構築することが強く求められている。学校内と通学路の安全確保のため、次の対策を強め、万全を期すこと。
(1)学校内への不審者の侵入を防止し、事件を未然に防ぐために、校門警備員の配置、防犯装置の設置など、一定の対策がなされているが、その態勢は不十分であり、心配の声が絶えない。市の独自の対策を強化するとともに、警察の協力を得る態勢の強化を図ること。
(2)通学路の安全対策を強化する必要がある。西宮市は、「西宮市通学路交通安全プログラム」を策定して、通学路の安全対策を推進している。しかし、通学路の安全対策は、交通安全対策だけに限るものではない。通学路において、防犯上危険な場所がある。たとえば、名塩小学校の通学路で、学校から名塩さくら台地域とのあいだの通学路は、途中、道路の下を突き抜けるトンネルが二か所あるが、このトンネルが防犯上の危険個所となっている。警報器が設置されているが、ほとんど意味をなしていない。至急この箇所の安全対策を取るとともに、西宮市内の通学路について、防犯対策の観点から点検し、安全対策を強化すること。
- 2028年度には教室不足が解消できる見通しとなったことから、「教育環境保全のための住宅開発抑制に関する指導要綱」を2026年10月に廃止するとしているが、今後の35人学級の拡大、さらなる少人数学級の推進を考慮に入れれば、廃止するのではなく規制強化の方向で要綱の内容を見直し、条例化をめざすこと。
- 「第3次西宮市健康増進・食育推進計画」は、ライフステージにあわせた健康づくり・食育が重要としている。2022年3月に「西宮市幼児教育・保育ビジョン」が策定され、活用されているが、食育についてのビジョンが示されていない。幼児期における食育の重要性に鑑みて、ビジョンに食育について明記し、取り組むこと。
- 県教育委員会がすすめる県立高校の再編統合計画において、西宮北高と西宮甲山高が2025年春に統合され西宮苦楽園高校となった。このことにより現甲山高校については、2、3年生のみとなり、来年度は3年生の1学年だけとなる。市教委として、縮小される甲山高校生の心情等に対する格段の処置を講じること。
- 市教育委員会が2019年4月に策定した「第2次西宮市人権教育・啓発に関する基本計画」には、「同和問題(部落差別)」という項目が残されている。部落問題の解決は、民主主義の前進を図る国民の不断の努力を背景に大きく前進し、いまではすでに、社会問題としての部落問題は、基本的に解決された到達点にある。にもかかわらず、あえて「同和問題」の項目を残し、「対象地域住民」という制度的概念を残すことは、部落問題解決の歴史に逆行し、差別を固定化することにしかならない。したがって、人権教育から同和問題を外し、あわせて“西宮市人権・同和教育協議会”を廃止すること。