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2026年度西宮市当初予算編成に対する申し入れ書:こども支援局
2025年09月02日


  1. 市は、「宮っ子つながり支える条例」を策定するとしているが、子どもに関する条例づくりは、国連の子どもの権利条約をふまえたものとするべきである。以下のことについて、強く要望する。
    (1)子どもの権利条約によれば、子どもの権利には4つの権利があり、それを保障するための4つの原則があるとされている。4つの権利とは、すなわち、@生きる権利、A育つ権利、B守られる権利、C参加する権利であり、また、4つの原則とは、すなわち、@子どもの命を守り、その成長を保障する、A最善の利益を考慮すること、B意見を表明し参加できること、C差別のないこと、とされている。市が取り組み始めている「条例」には、これらの権利と原則を織り込み、実効性のある条例を速やかに策定すること。
    (2)虐待や暴力被害、性被害などさまざまな権利侵害が起きている。本市もそれらの権利侵害から子どもを救済し、権利を回復する独自の取り組みが必要であるとしている。隣の尼崎市では子どもの権利擁護委員会が設立され、各専門職(精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・弁護士・元教員)らで代弁・意見表明・協力依頼・調査・勧告とチームで対応している。本市においても機関の設置を早急にすすめること。

  2. 日本が児童の権利に関する条約に批准してから30年、子ども家庭庁は日本ユニセフ協会と共催して子どもの権利条約普及啓発キャンペーンとして「こどものけんりプロジェクト」を開始している。本市においても、教育委員会とも協力して、市の職員への徹底はもちろん、当事者である子どもと市民に広く周知徹底すること。

  3. 市は、西宮市立の児童相談所を設置するとの方針を、2023年2月に公表した。しかし、設置に関して財政・人材的に当面見送りといった状況だ。児童相談所を設置するにあたっては、設置場所の選定、事業運営にかかわる職員の確保など、取り組むべき大きな課題があるが、隣の尼崎市では2026年4月開設といった計画で取組がすすめられているように、高まる期待に応え、開設時期を明確にして取り組むこと。

  4. 子ども家庭総合支援拠点の職員については、子ども家庭支援員・心理担当支援員・虐待対応専門員が配置されているが、同規模の他市と比べてもとりわけ正規職員の配置が少なすぎる。拡充を進めること。

  5. 子ども家庭センターの設置がされた。このセンターは、「子ども家庭総合支援拠点」と「子育て世代包括支援センター」の機能を維持したうえで、すべての妊産婦、子育て世帯、こどもへ一体的に相談支援を行う機能を有する機関として設置されることとされている。設置の趣旨が十分に生かせるよう、必要な体制を確保すること。

  6. 児童館・児童センターを「子育て支援の拠点」として位置づけるのなら、当然直営を守るべきである。あわせて、休日の開館や、地域偏在の解消・増館についても進めること。

  7. 2026年9月には公立中学校の部活動が地域移行されるが、経済的な問題などから、「プレみや」の地域クラブに所属できない生徒が増えることが予想される。中高生らの地域での居場所づくりが急がれる。他市の取組を研究し、検討をすすめること。

  8. 子どもの7人に1人が貧困状態にあるといわれている。日本の経済の立て直しが見通せず、格差と貧困がさらに増大している。母子家庭世帯の貧困問題やヤングケアラー、さらにネグレクト等、問題は多岐にわたり、2026年度から児童育成支援拠点などの対策が講じられているとはいえ、十分ではない。教育委員会、健康福祉局と連携して対応を強めること。

  9. 子供家庭支援課では、親族などからの支援が期待できず、乳幼児の適切な養育が困難な家庭に、子育て世帯訪問支援事業(育児支援ヘルパー)として、食事、洗濯、掃除、買い物等の援助を行っているが、回数や対象者が限られている。困った人は誰でも活用できるように改善すること。

  10. 本市の保育所の待機児童数は、2024年4月、全国でワースト2位だった121人から2025年4月時点で45人減の76人で全国ワースト3位。共働きの増加で、就学前児童に占める入所を希望する児童の割合(保育需要率)は10年前の25.3%から43.9%まで増えている。推計では、4年後の2029年に51.9%となりピークを迎える。待機児童問題は深刻な問題であり、緊急に解決すべき課題である。以下、要望する。
    (1)保護者が、安全面でも安心でき、しかも、通所の過剰な負担がない、近い場所の保育所に入所できることを目標にした、本当の意味での待機児童対策となる計画をもって取り組むこと。
    (2)保育士の配置基準が76年ぶりに見直された。さらに2025年度からは50数年ぶりに1歳児の配置基準も見直され、要件を満たせば加算されることとなった。しかし、加算の要件をすべて満たすことはハードルが高い。加算要件の見直しを国に求めること。市はこれまでも、国基準以上の保育士配置としてきているが、保育士確保のための施策をさらに強めること。
    (3)特区小規模保育事業所の卒園後、希望すれば、施設が連携する公立幼稚園に入園することができるとしている。今後、公立幼稚園と公立保育所が再編され認定こども園となる方針だが、その際、特区小規模保育事業所卒園児はこれまで通り、希望すれば連携する認定こども園に入園できるようにすること。
    (4)西宮市は、さまざまな問題を抱えながら、問題を解決できないまま「送迎保育ステーション方式」の保育所を設置した。市は、いまのところ、この手法を多用することは難しいとしているが、場合によっては、検討するとのことである。この方式の保育所をこれ以上増やさないこと。
    (5)市は、待機児童解消のために、小規模保育所の増設で対応しているが、経営不振に追い込まれないように、家賃補助などで助成すること。
    (6)市の要請により、保育所の分園を増設した法人があるが、法人によっては、分園でありながら本園並みの保育定員として相当の人員を配置し、運営を行って保育の質を確保している。待機児童対策に協力し、そのため経営が困難になっている状況に対して、早期の解決をはかること。

  11. 党議員団は、待機児童解消の対策の一つとして、市立幼稚園の認定こども園化を求めてきたが、幼児教育と保育の一元化のなかですすめようとする西宮の公立幼稚園と公立保育所の再編方針には反対である。「西宮市幼児教育・保育のあり方」は、体裁を変えた公立幼稚園の廃止方針であり、また、公立保育所を認定こども園にすることによって、保育所の定数を減らそうとするものである。
    幼稚園の廃止、保育所の削減を基底にした「西宮市幼児教育・保育のあり方」は撤回すること。

  12. 保育行政全般については、さらなる「職員配置基準」や「面積基準」の改善、公定価格の大幅増額により保育士の処遇改善をすすめ保育士確保を行うことなど、国に対し抜本的改善を求めること。

  13. 保育士不足が各地で深刻になっている。解決のためには、賃金が全職種の平均を月10万円余り下回っているなど、低待遇の改善が不可欠である。市は、独自の事業として、「保育士奨学金返済支援事業」、「保育士就職応援一時金事業」などを実施しているが、その効果について検証するとともに、働き続けられるように、阻害する要因、例えば残業代が出ない、持ち帰り仕事、自身の子育て支援としての看護休暇や介護休暇など女性のライフステージをイメージした新たな独自策を検討すること。

  14. 市立保育所、保育事業について、以下のことを要望する。
    (1)芦原むつみ保育所は、2023年度から180人定員となり、2026年4月には付属あおぞら幼稚園との統合で定員210人の認定こども園として開園予定と聞いている。大規模保育所は、安全上のさまざまな問題を生じさせるため、定員について再検討すること。
    (2)保育の質の担保、障害児の受入れ、災害時の対応など公立保育所には特別に果たさなければならない役割と責任があるため、公立保育所をさらに減らす民間移管計画はきっぱりと撤回すること。
    (3)自園調理の実施やアレルギー除去食への対応等で、給食調理員の過重負担がある。調理員の増員をはかること。
    (4)誰もが利用できる一時預かり(一時保育)を公立保育所でも実施すること。対象児童を限定して実施されている現行の「スマイル保育(一時保育)」事業が2園で行われているが、他の保育所にも拡大すること。
    (5)保育所での重大事故があとを絶たない。子ども家庭庁の発表によると、昨年の全国の保育所や幼稚園、認定こども園で、子どもがけがなどをする事故は、2429件(+311)件発生している。このうち死亡したケースが3件(−3)、意識不明が12件(−11)、骨折が1901件(+263)、火傷が8件(+5)となっている。子ども達の安全を守り、安心して預けられる保育環境の維持のための対策をさらに強化すること。
    (6)政府は「こども未来戦略」に基づき、新たに「こども誰でも通園制度」を創設し、2026年度から子ども・子育て支援法に基づく新たな給付として実施されることとなった。
    ふだん、保育所・認定こども園などに通っていない家庭の6か月〜2歳までのこどもを、保育所・認定こども園・幼稚園などの施設で、月10時間までの預かりを行うことで、集団生活の機会を通じたこどもの成長を促し、利用児童の保護者を対象に子育てに関する相談支援などを行うとしている。しかし、「こども誰でも通園制度」には、保育士不足や保育の質の低下、財源の確保、事故リスクの増加など課題が多い。制度の導入にあたっては、課題について慎重に検討すること。

  15. 3歳〜5歳児の保育料は無償となったものの、給食費は年収360万円以下、全世帯の第3子以外は実費徴収となっている。給食費は主食代+副食代の計5000円くらいになり、おむつ代など合わせると子育て世代に大きな負担である。副食代のみ無償化の取組もすすんでいる。本市でも給食費は無償化について検討すること。

  16. 学童保育(留守家庭児童育成センター)について、以下、要望する。
    (1)学童保育を指定管理者制度で実施することについて、子どもの成長発達を保障できているのか、市として検証し、抜本的な見直しをすること。あわせて、指定管理者が規定通りに運営しているかどうか、市の指導・監督を厳しくすること。
    (2)現在、学童保育には株式会社も指定管理者として参入している。人手不足で基準通りの職員配置ができていないなどの重大事態が生じていると聞いている。営利を目的とする株式会社を公募の対象としないこと。
    (3)学童保育の待機児童対策として市が補助金を出している民設民営学童については運営状況を注意深く観察し、子どもたちに不利益が及ばないよう指導していくこと。そして、今後の民設民営学童の増設はしないこと。
    (4)4年生を受け入れる学童保育が増えているが、子どもへの指導については低学年とは違う難しさがあると考える。市が主体となって指導員への学習をすすめること。
    (5)子ども家庭庁は、学校の夏休み時、学童保育における昼食の提供について調査を行い、その結果を踏まえてこのほど学童保育での昼食提供を推奨することとした。本市において、指定管理者9事業者のうち、8事業者で昼食提供を行っていると聞く。経済的な状況や安全上において問題が生じていないか、市が関与すること。

  17. 子育て広場の設置について現在21カ所であるが、未就学児を連れて行くには距離が短い方がのぞましい。利用しやすい小学校区に1か所設置へと拡充すること。

  18. 子ども食堂について、市長は、「すべての学校区で」設置することを、選挙で公約したことがある。市として、すべての小学校区に子ども食堂を設置するという目標と計画をもち、子ども食堂の設置を広げること。子ども食堂運営継続については、ボランティアスタッフの確保・育成、運営資金などの課題が多くあり、子ども食堂相談窓口の周知、相談対応を強化すること。

  19. 子ども未来センターの発達診断については、相談や診断にたどり着くまでに長くかかっている。医師等を含め、早期に相談・診断できる体制を拡充すること。また、診断後の支援の在り方についても寄り添い、丁寧に対応をすすめること。