2.医療制度改悪に対する市民と市への負担増について
7月25日、自民、公明、保守の与党3党は参院構成労働委員会で年間1兆5000億円の国民負担増を押し付ける医療改悪法案の採決を強行しました。国民の声を聞く中央公聴会開催にも応じず、質疑を途中で一方的に打ち切っての暴挙です。その改悪の内容は(1)組合健康保険など被用者保険の保険料算定方式を月収からボーナスも含めた年収ベースの「総報酬制」に移行(2)政府管掌健康保険の保険料率を年収ベースで現行の7.5%から8.2%に引き上げ(いずれも来年4月実施)(3)70歳以上の高齢者の医療費負担は今年10月から定率1割(高所得者は2割)となっています。この暴挙について、日本経済新聞は「健保法改正案、与党が強行採決」の見出しで、「 自民、公明、保守の与党3党は25日の参院厚生労働委員会で、サラリーマン本人の医療費自己負担を来年4月から3割に引き上げることを柱とする健康保険法改正案など医療制度改革関連法案の採決を強行し、賛成多数で可決した。また、9月4日付けの神戸新聞は「一連の医療改革に反対してきた兵庫県保険医協会。朝井榮理事長は『負担増で患者が受診を控えれば、病気の重症化を招きかねない。結局は医療費の高騰、保険財政悪化につながる』と訴える」等批判的な報道がされています。また、7月26日
日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会 は声明を発表しその中で次のように述べています。「現行以上の患者負担増は、将来の社会保障に対する国民の不安を助長させるだけでなく、国家最大の財産たる国民の生命、健康に重大な影響を及ぼす可能性がある。本質的な議論が十分でないままの法案成立は、国が社会保障の充実に対する社会的使命を放棄する暴挙にほかならない」。と糾弾しています。
今回の医療改悪法案成立にいたる過程を少し見てみると、7月25日の参院厚生労働委員会では、公明党の議員の質問前に質疑打ち切り動議が提出され、採決を強行。同党は自らの質問時間を犠牲にしてまで「弱者切捨て」の医療改悪への協力ぶりに批判の声が出ています。また、参院本会議では、自民党は医療関係出身者を中心に9人も欠席したにもかかわらず、公明党は全員が出席して改悪の主力となりました。これでは公明党は「福祉の党」どころか、自民党以上の「福祉破壊の党」であることが明白ではありませんか。1998年の参議院選挙の同党の公約でも「際限ない患者負担増に反対」、また昨年の参院選アンケートでも「3割負担には反対」としていました。通常国会での公明党がとった態度に「これを公約違反といわずして何を公約違反というのか」とわが党の参議院議員が厳しく追及しました。
さて今回の大改悪は大不況のなかで強行され、国民の暮らしと健康をますます悪化させることは明らかです。ももっとも大きな犠牲を受けるのは年金生活者です。政府は来年度からの年金の給付額を引き下げると発表、一方介護保険料は引き上げられることはこれまた必至。そして医療改悪。二重苦三重苦です。70歳以上の場合10月1日から外来の場合誰でも1ヶ月3200円の負担で済んでいたものが一律1割となり、所得が124万円以上の場合は2割負担となります。病気や怪我をしたとき、今までは負担限度額がはっきりしていましたから、少ない年金のなかからでもやりくりできました。ところが今度は、1割負担ですから、いくら治療費がかかるかまったく予測がつきません。医者に行くのにいくら持っていけばよいのかわからないことほど不安なことはないのではないでしょうか。負担の跳ね上がりもひどいものです。たとえば、自宅で月4回の訪問診療を受けているすい臓がん患者の場合、現行は3400円ですんでいます。これが1割負担になると4万8410円となり14.2倍にもなります。ただし自己負担限度額があり、実際の負担は軽減されるといいたいのかもしれませんが、自己負担分はいったん全額払わなければなりません。自己負担限度額や高額医療費制度は外来、入院、個人、世帯また所得による4分類と複雑多岐にわたっています。また、償還を受けようと思えば、その都度、市役所に申請しなければならず、これも大変な負担となります。そのうえ必要のあるたびに申請しなければならず、手元に差額が帰ってくるのも数ヶ月も遅れます。移動の困難な高齢者にとってその都度市役所や支所に申請に行かなければならず、場合によっては返ってくる額よりも往復の交通費のほうが高くつくということも多いのではないでしょうか。これは、高齢者にとって医者に行くな、金のないものは命を削れといっているのと同じではないですか。早期発見早期治療の原則にも反します。高齢者を敬う精神などまったくありません。そこで質問。
- 今回の大改悪は金の切れ目が命の切れ目のごとく受診抑制につながり市民の命と健康がむしばまれて行くことは必至であり、中でも最も犠牲が大きいのが高齢者であるが、市民の命と健康を守る立場の市長として今回の医療制度改悪をどのように考えているか。
- 国保料が高くなってやむなく、分納などをしている世帯も多くなっています。国民健康保険では、高額療養費制度や、高額医療費制度で被保険者に医療費負担分の償還分を保険料に充当するよう干渉しています。すなわち、本来本人が窓口で支払わなくてもよい医療費を制度の改悪によって立て替えているものです。このするような建て替え分を保険料に当てることは、負担限度額等の制度の趣旨がゆがめられます。そこで償還分を保険料に充当するような干渉は行なうべきではないが、どうか。
- 高額医療費制度で自己負担限度額を超えた場合いちいち市役所の窓口申請して払い戻しを受けなければなりません。身軽に動けない高齢者にとって償還額よりタクシー代のほうが高くつくということになるのは明らかです。そこで、立替制度、や貸付制度など、少なくとも持ちがねの心配なしに受診できるような制度をつくるべきでないか。
- 小泉首相は三方一両損といって世間の顰蹙を買いました。被保険者の負担増は明らかです。老人保険の対象であった70歳以上が5歳引き上げられ、75歳未満まで国保対象者となりました。医療保険への国庫負担割合が引き下げられてきています。いま焦点の老人医療費でみても、有料化された1983年度と2002年度(予算)を比較すると、老人医療費に占める国庫負担割合は、44.9%から31.5%へと、13.4ポイントも減らされています。国民健康保険も、退職者医療を含む総収入に占める国庫支出金は、1980年度の57.5%から2000年度には36.3%へと激減しています。政管健保も16.4%から13%に減らされたままです。
そこで質問。医療保険財政が深刻になった最大の原因は国庫支出金の減額だと思うがどうか。また今回の措置で西宮市の高齢者医療制度での市の負担増はあるのか、国保会計にとって、特に保険料を払う市民にとってどのような影響が出るのか。以上答弁を求めます
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